05_抱擁と囁き ~小雨の中で~
「すぅ……すぅ……」
※彼女の穏やかな息遣いがしばらく続く。
「……あ、あれ? 本当に軽く寝ちゃってたかも」
「あ、あはははは、君も少し眠ってたみたいだね」
「っていうか私たち濡れたまま寝るってすごくない?」
「うぅ、本当に君が風邪引いちゃったらどうしよう。家に帰って早くお風呂に入らないといけないよね」
//SE 弱い雨の音
「おっ、大分雨は弱まったみたいだね」
「もう少ししたら止むかな?」
「うん、もうちょっと弱くなったら行こうか」
//SE 体勢を変える音
(膝枕の体勢から元に戻る)
「あっ、せっかく膝枕してたのにぃ」//いじけるように
「足しびれないのかって?」
「うっ、それは」
//SE 彼女の足をつつく音
「あはっ、あはははは!」
「ちょ、ちょっと! しびれてるからやめてよ! 足つつかないでってば!」
「くすぐったい! くすぐったいってば!」
「あはははは!」
//SE 彼女の足をつつく音
「意地悪、意地悪、意地悪!」
「せっかく君のために我慢してたのに!」
「無理しなくていいって?」
「それくらいは無理したいの!」
「だって、私、君の彼女さんなんだよ!」
「あっ……」
//SE 衣擦れの音
(彼女を抱きしめる)
※以降、彼女の声が耳元にくる
「んぅ……」
「どさくさに紛れてハグしたな~」
「さっきからずっとびしょ濡れだって言ってるのに」
「んーん、嫌じゃないよ。離れたくない」//甘えるように
//SE 衣擦れの音
(彼女の手が自分の背中に回ってくる)
「ずっと……ずっと……こうしたかったんだよ」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「私たち、こんな田舎のバス停でなにやってるんだろうね……」
「やーだ、離れたくない」
//SE 衣擦れの音
(お互いがお互いのことを強く抱きしめ合う)
「……え? 雨宿りしていると時間が長く感じる?」
「んー、そうかなぁ? 私は君と一緒にいると爆速で時間過ぎていくんだけど」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「まぁ、それくらいゆっくりできてるってことにしてあげましょう」
「うん、たまにはこんな風に立ち止まってのんびりするのも大切だよね」
//SE 衣擦れの音
(お互いがお互いのことを強く抱きしめる)
「不思議だなぁ」
「君と会うまではあんなに不安だったのに」
「えっ? なにが不安だって?」
「……だって遠距離恋愛だもん。久しぶりに会うとなると緊張するよ」
「お仕事で疲れてないかなぁとか」
「せっかくの休みなのに無理矢理会いたいって言っちゃったんじゃないかなぁとか」
「……向こうで可愛い彼女を作ったりしてるんじゃないかなぁとか」
「……」
「……」
「……あっ、笑ったな」
「えっ、君も不安だったの?」
「私がどんどん大人びていくから?」
「そうかなぁ、さっきもそう言われたけど自分では全然分からないや」
「き、綺麗になったって……」
「そんな風に言われると照れちゃうなぁ」
「……でも、嬉しい。君にもっと可愛いって言ってもらえるように頑張る」
//SE 穏やかな雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「今日は雨に感謝だなぁ」
「じゃないとこんな風に二人でのんびりできなかったから」
「え? 向こうに戻っても頑張れって言ってほしい?」
「私がいるから毎日頑張れるって――」
「それはちょっと違うよ。君がいるから私が頑張れるんだよ」
「……でも分かった」
//SE 頭を撫でる音
「……これからも無理しないで頑張ってね」
「頑張り過ぎなくていいんだからね」
「つらいことがあったら逃げてもいいんだよ」//優しく
「嫌なことがあったら逃げてもいいんだよ」//とても優しく
//SE 頭を撫でる音
「えっ? ちょっと違う?」
「でも、これが本当に私が思っていることだもん」
「今やってること、嫌になったら休んでいいんだよ」
「心配しないで休んでいいんだよ」
「私、そんなことで君のこと嫌いにならないからね」
「私ね、君にはずっと穏やかな気持ちでいてほしいなって思ってるんだ」
「私がこのバス停のトタン屋根みたいに、君のことを守れる屋根になれたらいいなって――」
「って、それはちょっとおかしいか」//笑いながら
「ね、もうちょっと雨の音に耳を澄ましてみよ?」
//SE 穏やかな雨の音(トタン屋根に雨が当たっている)
※しばらく雨の音と彼女の息遣いだけが続く
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