04_バス停で膝枕 ~恋人の時間~
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「あっ、ちょっと弱まってきたかな」
「とはいってもまだ普通に降ってるけど……」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「風邪、ひいちゃったらどうしようね……」
「君は風邪ひいたらお仕事もあるし大変だよね」
「ううん、私は平気だよ。気にしないで、体は丈夫なほうだし!」
「田舎の女の子を馬鹿にしないで欲しいな!」
「……田舎って言えばね、私、特訓したことがあるんだよ」
「ふふっ、じゃあここで問題です」//楽しそうに
「私は一体何を特訓したのしょうか?」
//SE 車の走行音(濡れたアスファルトを走る音)
「もう、めんどくさがらないでちゃんと考えてよ。かなり必死だったんだから」
「料理? 料理は元から得意だもん」
「家事? 家事は毎日やってるから特訓とは言わないし」
「えー、もうお手上げ?」
「それ以上は分からない?」
「仕方ないなぁ」
「あっ、けど言ったら笑われるかも」
「笑わないって約束してくれる?」
(少し間を置く)
「うんっ! じゃあ教えてあげる」
「……私、訛り直すの特訓してたんだ」
「あー! やっぱり笑った!」
「だって、彼女が田舎っぺだって知られたら君が恥ずかしい思いしちゃうかなって……」
「……」
「……」
「……君はいつの間にか訛り直っちゃったよね」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「やだよ、もう訛り出さないもん」
「関西弁なら可愛い感じになるんだけどなぁ」
「そんなことない?」
「だって、こっちの方言って語尾が“だべ”とか“だっぺ”とかになったりするじゃん。変に語尾が上がったりするしさ」
「それってすっごい田舎って感じしない?」
「私、田舎は好きだけどそれはちょっと恥ずかしいもん」
「やーだよ。私だってそのうちそっちに行くんだからね。私だって都会で恥ずかしい思いしたくないもん」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「……まだまだ雨降ってるね」
「私がそっちに行ってもこういうのんびりした時間は作りたいなぁ」
「雨の音をゆっくり聞くくらいの余裕は持ちたいよね」
「あれ? 聞いてる?」
「あっ、眠たそうになってる」
「分かる、分かる。雨の音って眠くなっちゃうよね」//とても優しく
「よいしょっと」
//SE 体勢を変える音
(彼女が密着している状態から体を離す)
//SE 膝を叩く音
(彼女が自分の膝を叩いて膝枕を促している)
「粗末なふとももですがどうぞ」
「少し湿っぽい枕ではありますが」
「なにしてるかって?」
「ひ ざ ま く ら」
「膝枕してあげる」
「誰かに見られたらどうするって?」
「大丈夫、大丈夫。さっきから車がちらほら通ってるだけだから誰にも見られないよ」
「今日くらいは彼女らしいことさせてよ。せっかく久しぶりに会えたんだから」
「ね? いいでしょう? お願い!」
//SE 彼女に膝に頭をのせる音
※ここから彼女の声は耳元で囁くように
「あははは、可愛い」
「疲れたなら目を瞑ってていいよ」
「あいたままだと私も恥ずかしいしね」
「だ、だって上を見られると服が透けてるから……」
「ま、まぁ、ちょっとくらいは見てもいいけどね」
「そ、それは彼氏さんだしね」
「それに、あんまりそういうのに興味を持たれないのも彼女の身としては悲しいというか……」
「あ、あれ? 私、なに言ってるんだろ」
「と、とりあえず! あんまりじろじろ見ちゃ嫌だからね」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「眠くなったなら寝ちゃってもいいからね」//とても優しく
「お互いに濡れちゃってるけど、これはこれで悪くないよね」
「濡れていると、よりお互いの体温を感じることができるし」
「そ、それによりぴったり密着できるというか――」
「……」
「……」
「……好き」//耳元で囁く
「大好き」//耳元で囁く
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
「ふわぁーあ」//あくび
「……君に釣られて私も眠たくなってきちゃった」
「いいよ、君はそのままでいて」
「ダメ、そのままでいて」
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
カエルの鳴き声
「幸せ……」//つぶやくように
「好きな人とこんなに穏やかな時間を過ごせるなんて……」
「すごく贅沢な時間だよね」
「ふわぁ……」//あくび
「んぅ、またあくびが出ちゃった」
「私も少し目を瞑っちゃおうかなぁ」
「ねぇ、君の頭を撫でてもいい?」
「ん。ありがと」
「目を瞑っているとさ、より雨の音に集中できるよね」
「うん、二人とも目を瞑ってみようか」
//SE 髪を撫でる音
//SE 雨の音(トタン屋根に雨が当たっている音)
※しばらく雨の音と髪を撫でる音、彼女の穏やかな息遣いが続く
「……本当に眠りそう?」
「いいよ、このまま寝ちゃっても」
「でも、寝たらいっぱい悪戯しちゃうからね」
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