03_濡れたまま密着 ~雨の旋律~

//SE 雨の音(トタン屋根に激しく雨が当たっている)



「あーあー、また雨が強くなってきちゃったね」


「こういうのって鉄砲雨っていうんだよね?」



//SE 雨の音(トタン屋根に激しく雨が当たっている)



「きゃっ」


「雨が強すぎて、地面が浸水してきてるよぉ……」


「ベンチの上で体育座りしちゃおう」


「靴脱げば大丈夫だよね?」


「うわー、靴も水でがぽがぽに……」


「さっきのタオルちょっと貸して?」


「い、いいよ! 体は自分で拭くから!」


「や、やだよ! さすがに体を拭かれるのは恥ずかしいよ!」



//SE 車の走行音(濡れたアスファルトを走る音)



「ふふふふ」


「ねぇねぇ、こんなにびしょ濡れになると逆に楽しくならない?」


「だってさ、大人になってからはこんなにならないじゃん!」


「子供の時は、こんなになっても外で遊んでたりしてたよね」


「そんな風に遊んでたからかな? 雨が降ってくる前はなんとなく匂いで分かるようになってさ」


「雨の匂いって良いよね」


「う、うーん、説明するとなると難しいなぁ」


「地面の匂いが広がるというか……アスファルトの濡れた匂いが広がっていくというか……」


「空気も澄んでいく感じがするよね」


「その匂いを嗅ぐとノスタルジックな気持ちになっちゃうんだ」


「君はどう?」


「えへへ、じゃあ一緒だね」



//SE 雨の音(トタン屋根に激しく雨が当たっている)



「向こうの空は明るいからそのうち晴れると思うけどなぁ……」


「まぁ、気長に待とうよ」


「え? 都会だとこういう機会がない? どういうこと?」


「そっか、向こうにはコンビニが沢山があるんだね」


「駅前だけに何件もあるの? すごっ!」


「だったら雨が降ってきてもすぐ傘買えちゃうよね。便利~」



//SE 雨の音(トタン屋根に激しく雨が当たっている)



「……でもそれだともったいない気がするかな」


「そんなに便利だと、きっとこんな風に空を見上げる機会も少なくなっちゃうよね」


「私、空を眺めている時間が好きなんだ」


「動く雲を追うのも好きだし、雨の音聞きながらのんびりするのも好き」


「白い息を吐きながら雪が降っている様子も眺めているのも好きだし」


「あー、私のこと田舎っぺだと思ったでしょう」


「いいもん、このトタン屋根の音だって耳をすませば色んな音に聞こえてくるんだから」



//SE 雨の音(トタン屋根に激しく雨が当たっている)


※しばらく雨の音が続く


//SE 雷 (遠くで雷が鳴る)



「あっ、向こうで光った」


「ん? どうしたの?」


「雷、怖がらないのかって?」


「残念でした~、私、全然平気だし」//笑いながら


「ほら、早くへそ隠さないと! 雷様にへそ取られちゃうぞー!」


「私が君のへそ隠してあげるから!」



//SE 衣擦れの音

(彼女があなたのへそを隠す)



「あっ」//声が近づく


「ご、ごめん、調子のった!」


「いきなりお腹に触っちゃってごめん」


「きょ、今日の私、ちょっと浮かれているみたい」


「久しぶりに会うからイマイチ距離感が分からなくて――」



//SE 衣擦れの音

(彼女に近づく)


※ここから彼女の声が全体的に声が近づく



「い、いきなりそんなにくっつかないでよぉ……」


「ほ、ほら! 私、びしょ濡れだし!」


「そんなに肩を寄せられたら、せっかく拭いたのにまた濡れちゃうよ!」



//SE 衣擦れの音



「も、もぉ……」


「そんなにぴったりくっつかれたら濡れちゃうって言ったのに……」


「君って時々強引だよね……」//恥ずかしそうに


「どっちも濡れているから気にならないって……! それはそうだけどさ!」


「……」


「……」


「……ねぇ、少し私のお話してもいい?」


「うん、ありがとう」


「私ね、君と色んなところにデートに行きたいなぁって思ってたんだ」


「遊園地にも行きたいし水族館にも行きたいなって」


「色んな妄想をしてさ――」


「でもね、今こうしているのもそこに行くのと同じくらい楽しいみたい」


「よし、これは雨宿りデートって名付けよう」//声を弾ませて


「……」


「……」


「ねぇ、君の肩に頭のせてもいい?」


「濡れちゃう?」


「いいよ、どうせお互いにびしょ濡れなんだから」//少し恥ずかしそうに

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