怪物となった博士

妄想垂れ流し機

第1話 怪物が起き上がる

オスカール・パウル・ディルレヴァンガーは、歴史上類を見ないサイコパスで、非道徳的なアル中の、残虐性極まりない性格を持つ人間だった。

彼はナチスドイツの懲役部隊の指揮官として任命されると、東欧で虐殺と略奪、婦女暴行といった、ありとあらゆる倫理に反する行為を行った。劣等人種の絶滅を目論んだ親衛隊でさえも、彼らを危険視し、時に彼らを解散させ、ディルレヴァンガーを逮捕しようとする動きもあった。

だが、彼はとにかく悪運が強い人物だった。

ある人は彼についてこう述べた「健全な時代であればドイツ軍から軍法会議にかけられたであろう堕落者の一人である」と。

しかし、時の情勢は彼に味方してしまった。末期のナチスドイツは、あらゆる面で不足していた。東と西から来る巨大な連合軍に対して、ディルレヴァンガーのような者も許さなければ、敗北してしまう状況だったのだ。

そして彼らはその残虐性から嫌悪され、武装親衛隊の面汚しと罵倒された。だが、彼にとってはそのような言葉は何の価値もなかった。

あらゆる暴力と略奪が許される環境は、彼にとってはまさに天国そのものだった。

だが、ナチスドイツが崩壊し、戦後に大きな報いを受けるように、彼もまた、自身が行ってきた愚かな行為によって、報いを受けることになった。

彼は犯罪行為が露呈するのを恐れ、逃亡を図ったが、結局はフランス軍につかまり、アルツハウゼンの捕虜収容所へと送り込まれた。そして、彼はそこで死亡した。

死亡する直接の原因は定かではないが、彼が行ってきた所業を見れば、どのような結末になったかは明らかであろう。彼が被害者にしたように、彼もまた、同じ末路を歩むことになった。




そしてディルレヴァンガーはいま、緑が生い茂る森林の中で目を覚ました。小鳥の鳴き声が心地よく聞こえ、風が木々を揺らしている。彼は少し頭の思考が停止した後、すぐに起き上がり周りを見渡した。

ここはどこだろうかと、ディルレヴァンガーは思考した。少なくとも、木々を見る限り、ここはドイツではないということがわかった。そして、少し下を見ると、そこには自身の愛銃であるkar98kが落ちていた。彼はそれを手に取って銃を眺めた。

第一次世界大戦からの戦友であるその銃は、ディルレヴァンガーにとって忘れられない記憶を呼び覚ます良い物だった。弾倉を見ると、ちょうど5発入っていた。

銃を握って構え、サイトを覗く。収容中に忘れかけていた感覚を取り戻した。

そして彼は自分の体に手を触れると、何かを着ているのが分かった。囚人服かと思ったが、それは何と現役時代に来ていた武装親衛隊の制服だった。もちろんバッジも第第36SS武装擲弾兵の物が付けられていて、まさしく彼が繁栄を極めた時期の物だった。そして少し目を細めれば帽子もあったので、彼はそれを被ったあとに、森の中を歩くことにした。

気温は暖かく、もしかすると今は春なのかもしれないのかと彼は思考しながら歩いていた。そうして歩き続けて数十分、森が少し開けてきたのと同時に、目の前に一つの民家が現れた。その建物は、中世にあった民家のようだった。

ディルレヴァンガーは民家の扉をノックするも、そこから返事が帰ることはなかった。開けようとしても、鍵が掛かっているようで開けることができない。

彼は深い呼吸をした後に、豪快に扉を蹴り破り、銃を構えて民家の中を見た。そこには大きな大釜が何かをぐつぐつと煮ており、中身を見るとそれは緑色で、確実に食事用ではないことが分かった。壺を後にして物色を始めると、リンゴのような物が出てきたので、彼はすぐにそれを食べ始めた。彼の胃袋は空いていて、とにかく食べれるものは片っ端から食べていった。そして、なんと酒瓶も見つけたので、彼は瓶の蓋を開けて飲み始めた。飲んだ時にかなり度数の高いアルコールであると分かったが、飢えているディルレヴァンガーにとっては都合の良い物だった。

彼はその民家で一人で食事と酒を楽しんでいると、誰かが民家の中へと入ってきた。それは若い女性で、彼女は勝手に物色しているディルレヴァンガーを見て驚きながら激怒した。


「人の家で勝手に何してるんです!早く出て行ってください!」


ディルレヴァンガーは何も言わず、ただその彼女を観察した。彼女は魔女のような服装をしており、右手には杖も持っている。彼が警戒して銃を持った瞬間、彼女は杖を振りかざして呪文を唱えた。


「クラウド!」


そして、彼が飲んでいた酒瓶が突如爆発し、ガラスの破片が飛び散った。普通、瓶が突如爆発するようなことは起きない。ディルレヴァンガーはこれに直面し、彼女が何か超常的な力を持っているのと同時に、自分に対して殺意を向けていると感じた。


「それ以上動いたら、あなたをバラバラにしてやります!」


なぜか不思議と言葉が分かるが、この状況でそれを気にする余裕はなかった。だが、ディルレヴァンガーは、自身が死ぬかもしれないという事実よりも、久しぶりに女を貪ることが出来るかもしれないと高揚していた。彼女の声色は高く、かなり若いと分かったからだ。自分が望む女性の理想像にピッタリな獲物を逃すわけにはいかなかった。ディルレヴァンガーは賭けに出たのか、彼女に挑発的な口調を述べた。


「お前は人を殺したことがないだろう。私にはわかるよ、人を殺すというのは...」


「...貴方がその気なら私もやってやります。クラウド!」


彼女は怒りにあふれ、ディルレヴァンガーを殺そうと呪文を唱え、杖を振り下ろした。だが、感情に左右され過ぎて魔法が制御しきれていないのか、力は別の方向へと飛んでいき、ディルレヴァンガーに当たることはなかった。

彼はすぐに銃を構えると、彼女の右腕に弾丸を放った。弾丸は見事に命中し、彼女はあまりの痛みに杖を下ろし、そして後ろへと倒れてしまった。


「いだいっ!!!ママッパパッ、いだいよっ!!!やだっやだっ!」


彼女が泣き叫ぶのを見たディルレヴァンガーは、銃を下ろして彼女へと近づく、彼女の顔には苦痛と恐怖が現れており、涙を流していた。彼はその顔に興奮し、彼女の服を脱がして下半身を露わにさせると、彼もズボンを脱ぎ始めた。彼女はこれからされることに怯え、更に声を上げて抵抗した。


「いやだぁぁぁっ!!!誰がっ助けてっ!!!ママぁぁっ!!!パパぁぁっ!!!」


右腕以外の四肢を動かしてディルレヴァンガーを退けようとするも、小さな子供が大人に抵抗できるはずがなかった。あまりにも抵抗してくるので、彼は彼女の腹を一発殴り、おとなしくさせた。

腹パンによって酸素が一気に口から出され、彼女は苦しみながら呼吸をしていた。その傍らで、ディルレヴァンガーは彼女に挿入し、そして腰を動かし始めた。

その様子は、あまりにも残虐的で、彼にかつての栄光の時代を思い出させた。

ユダヤ人の若い女性をレイプし、そして薬を注入し、死にゆく姿を眺めた思い出。

納屋に村人を押し込み、火をつけて燃えていく様を眺める思い出。

部下と死人の体で銃剣キャッチをして楽しんだ思い出。

ポーランドの民間人を全員殺し周り、地獄を作り上げた最高の思い出。

感覚が研ぎ澄まされ、思い出がそれをさらに補強する。ディルレヴァンガーは新しい思い出を作った。少女に銃弾を放ち、レイプしたという思い出を。


「あっ...あぁっ.........ぁ......」


少女は諦めたのか、それとも大量出血で意識を失いかけているのか、なんだか眠そうだった。ディルレヴァンガーは彼女の中に射精した後、ズボンを履き直し、そして銃を持って彼女に矛先を向けた。

銃剣を見た彼女は、必死に声を出して懇願した。


「おね...がい...やめ、て......」




しかし、彼女の懇願が、彼の心に響くことはなかった。

銃剣が彼女の腹に刺さり、そしてそこから多くの血が流れた。彼女は一瞬呻いたあとに動かなくなった。彼女の首を触ると、冷たくなっている。


「心が心地よい...」


久しぶりに人を殺めたということに、ディルレヴァンガーは優越感を覚えた。どこかは分からないが、少なくとも自分のやり方が通用するということが分かったのは、彼にとって重要なことだった。



そして夜が過ぎ、朝を迎えると、ディルレヴァンガーは家の中の物をもう一度漁り、旅に必要な物資をそろえ、彼女の杖を奪い、遺体を家の中に放り投げて家ごと燃やした。

大きく燃える家を後にして、ディルレヴァンガーは当てのない旅を始めた。彼はこの世界について何も知らないし、何か成すべき目的があるわけでもない。彼は第二の人生を始めようとしているのだ。すべての権力に縛られることなく、殺し、貪り、奪い、破壊し、欲望が満たされるまで.........


今日、この世界に怪物が降り立った。黒の制服に身を包み、鍵十字のマークが付いた帽子を被った怪物が、あらゆる物を飲み込み、破壊しようと動きを始めたのだ。

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