第4話§明星遥斗①§
§
目覚めると泣いていた。
涙を拭うと、僕の日常はいつも通りの繰り返しだった。
起き上がって、窓辺の
この日々、傷つき、
行き場のないこの心の言の
洗面所で鏡と向き合いながら歯を
そのままの流れでいつも通りに自室で制服に着替えて、ネクタイを結び、ブレザー姿になり、リビングへと向かう。
「おはよう、遥斗くん」
叔母さんは暦に対して「暦、あんた遅刻しないでよ。せっかく仕事を見つけられたんだから」と
暦は「はーい。わかっていますよ。なんたって私は
僕は暦の教師らしくない性格を眺めながら目玉焼きの隣にあるウィンナーに
そんな叔母さんの発言に暦は言い返す。
「遥斗くんは確かに真面目だし、可愛い。けど、年が足りないもんねー。遥斗くん?」
僕は頷く。いや、頷くしかないのだ。
この親子の会話は毎回、朝から小さなコントを始める。しかし、今まで暦は赴任する学校が見つからず、オンラインゲームをしていた日々。
改めて教師になる暦と叔母さんは変わらず小さなコントを朝から
つまり、何が言いたいかと言うとリアクションに困るのだ。
暦が叔母さんと小さなコントをしている間に僕は食事を終えて、「ごちそうさま」と手を合わせる。
叔母さんは僕の顔を覗き見て、これも毎回だが、「美味しかった?」と聞いてくる。
もちろん、僕は「うん、美味しかったよ」とまた無理に微笑みを繕う。すると叔母さんは
暦は黒と灰色の小さな
その去り際に「あ、ついでにお母さんも!」と暦が言うと、叔母さんは「私は雑誌の
もはや、朝から僕は何を見せられているのだろう。
と───
立ち上がると「僕も行ってくるね、叔母さん」と言ったところで、テレビのアナウンサーが
コメンテーターの話が
完全に僕の時間は止まり、なぜだかそれが重要なことに思えた。
ポン。
僕の止まった時間を動かしたのは叔母さんの両手だった。僕の両肩に手を置いて、「学校、頑張ってね。遥斗くん」と言われ、叔母さんは僕の頭を
僕は我に帰り、玄関でスニーカーを
微笑ましい叔母さんの姿が玄関扉を閉めて、見えなくなると僕は
これまで作ってきた表情がまるで色を無くしたように、そこに影が色を落とし、くすんだ気持ちにさせる。
もう、ひょっとしたら心は
玄関前で立ち止まる僕は
でも、それを考えたら怖くて一歩を踏み出せない。
僕は重い足取りで下を向きながら歩いた。
学校へ行くと何が僕を待っているのか───
それを考えたら
だから、いつも、
その時の僕の記憶の中には不安や
僕はその事を誰にも打ち明けられない。
いや、打ち明けたところで、どうせ現実や事実は変わらない。
学校が近づくにつれて、息が荒くなり、視界が
学校での記憶の出来事が今日も
とにかく今、僕は息苦しい。
毎回そうだ。学校へ行こうとすると僕はこの
足が手が
僕は
心臓の鼓動が激しく高鳴り、それと
多分、瞬間的に瞼を閉じたのだと思う。
僕は臆病だ。
わかっている。
その臆病さが僕を学校でのイジメの対象にさせたのだろう。
立ち向かう勇気があれば変わるかもしれない。いや、変わらないかもしれない。でも、立ち向かう勇気もないし、強さもない。
それにこの悩みを打ち明けられる人もいないし、打ち明ける勇気もない。
毎日、叔母さんや暦は
それでも僕は学校に行く勇気がなくて、毎日を玄関扉を閉めた
僕は臆病だ。
僕は弱い。
僕は毎日が辛い。
毎日が苦しくてたまらない。
この発作もきっと臆病で現実に立ち向かえない僕に与えられた【罰】なんだ。
苦痛で石段にもたれている僕の肩を不意にトントンと軽く誰かが叩いた。僕は苦痛の中で瞼をゆっくりと開けた。
目の前には
少女は苦しむ僕を真っ直ぐに
「ゆっくり息を吸って、ゆっくり息を吐いて、またゆっくり息を吸って、また息をゆっくりと吐くの。
落ち着いたら、この水を飲んで」
僕は少女に言われた通りにする。
荒い息遣いから少女の言う通りにゆっくりと吸って、吐いてを繰り返す。
すると僕の身体の
僕は柄杓の満たされた手水舎の清められた水を口に
「あり…がとう」
僕は起き上がろうと身を上げようとした。
少女はそんな僕の行動に
僕はそこで
ツインテールの黒髪で
つまり、可愛かったのだ。
それに少女のまるで
少女は石段に座る僕の隣に座ると、「私もよくその発作になるんだ。だからわかるよ。そんな時には無理に身体を動かしちゃだめ」と僕の横顔を見る。
僕は
それは今だかつて
少女は僕のブレザーの紺色を見て、「私と同じ学校なんだね」とうんうんと
僕は「同じ学校?」と
なぜなら少女が
少女は僕の
「キミ、何年生?」少女は聞く。
僕は「1年」と、ぼそりと
僕は
「私もさ、色々あってさ、学校をサボらないとキミと同じ発作に
あれはパニック発作なんだってね」
少女はそう言いながら地面に足をパタパタとつけたり、伸ばしたりと足を
僕は少女に見とれてしまい、
少女は
「私は
僕は差し出された手に
「僕は
詞葉は手を合わせて嬉しそうに言う。
「私達ってお互い
「そ…ですね」
そう僕が言うと詞葉は「
僕は詞葉の仕草があまりにも可愛くて
僕は立ち上がり、制服のズボンについた
詞葉は「無理しないでね」と言うと微笑みを浮かべて、僕は「ありがとう」と礼を言って、詞葉から背を向けて歩を進めた。
すると空が泣き出すみたいに白い雪が無数の
12月13日の空はまるで誰かが泣いてる姿みたいに思えた。
僕はポケットからスマホを取り出した。時刻は9時55分を示していた。
完全な遅刻だ───
§
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