第2話 最高のバディ

 岸辺のコンテナ郡。そこに馬新零夜の集会場はある。

 夜の曇天に隠れた月がそっと私たちを見下ろしてくる。

 私はバイクの群衆を見かけてそこへ一歩一歩向かう。

 そしたら白い特効服を着たレディース達が中腰から私を見た瞬間に起立し、敬礼を捧げる。


「総長。お疲れさまです!!」

 煙草に火を付けて、そいつらの目の前に立った。

「てめえら。巨人走者との抗争、あれは結局有耶無耶になった。私たちは関東を制覇したチームだ。よって新進勢力に目を付けられることもある」


 空気が静まり返った。全員が、これからの未来を思い、強い覚悟を露わにしようとしている。


「そして、餓鬼の喧嘩に大人が首を突っ込んでくることもあるだろう。暴力団は私たちを犬のように首輪を付け飼い慣らそうとしてくるかもしれない」


 そして周囲を見回した。


「私たちは、どんな野郎とも闘い、引けねえ根性で叩き潰してやろうぜ!!」

「はい!! 総長」

「今から言うことを心して聞け、私たちの夢はなんだ!!」

「全国制覇です」


 チッ。私は憤ってしまった。


「おい、こっち来い」


 副総長――坂本 若菜が傍に寄るために走ってくる。

 若菜の腹をぶん殴る。


「全員声が小さいんだよ。舐めてんのか‼」


 若菜は口角が歪み、片膝付いた。


「す、すみません」

「私たちの想いは小さくなんかねえだろ。例え全国の不良と刺し違えても、天辺取ってやるぞ」

「はい‼」

「これで集会は終わりだ。若菜以外は帰れ」


 ばらばらとレディース達がバイクに跨がり、エンジンを付けて走り去っていった。

 それを見届けてから若菜の肩を叩き、


「ごめん。若菜。痛かったよね?」


 私は、彼女の腹部を擦った。すると微笑みを見せて、

「いいよ。覇気通すためには仕方なかったんだし。私はいつでも葵のサンドバックになるよ」


 彼女と私は幼馴染みだ。幼稚園の頃から喧嘩勝りな私をずっと支えてくれていた。


「大炊君は元気?」


 吸い終わった煙草を捨てて、それから頷いた。


「ああ。元気だよ。でも余命が半分にまで削られたらしい」


 若菜は目を見開いた。


「それってあとどのくらい?」

「半年」


 二本目の煙草に火を付ける。煙を吐き出した。


「ねえ、私がこんなこと言うのは間違っているかもしれない。でも言わせてもらう。全国制覇なんて後回しにして、大炊君の傍にいてあげれば」


 私は若菜を睨み付けて、でもそれから嘆息をついた。


「そうだよね・・・・・・」


 でもそれだと仲間に示しがつかない。私は総長だ。仲間の分まで思いや期待を背負っている。


「若菜・・・・・・今日はありがとう。もう帰ってもいいよ」

「葵もすぐに帰りなよ。夜風は身体に堪えるからね」

「誰だと思ってんだよ」

 私は苦笑してやった。


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