3

「どうして生きているんだろう」

 私の心が、乾いてしまった。彼には申し訳ないけど、私の出番は、ここまでだ。

「答えは簡単だ。俺はお前が居るから、居てくれているから生きている。お前は俺が居るから、生きている。二人はお互いのために。それだけで十分だ。そうだろう?」

 ああ、高貴なる誓いの言葉だ。純粋こそが世界を穿つのだ。私をその言葉が穿いたから。

 それから、苦しい時も楽しい時も、どんな時でもお互いを支え合った。逆らいようのない恋に落ち、深いところで繋がった。これでいい、と私は思っていた。

「これだけでいいのか?」

「え?」

「お前が言ったろ、二人の未来って。もう俺たちは離れられない。俺はお前を離さない。例えお前が逃げても、地の果てまで追いかける。もう諦めろ」

「……悪魔。ま、いいけど。温度差はあるけど、私も好きだから」

「ははっ、俺が悪魔ならば、お前は天使だな。俺を癒す、温かい羽で包み込む天使」

 そう言って、彼は懐から取り出した。

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