第33話  ベルマとシグマ

 



大部屋で宴会をしてた俺達は、お開きにする。


ミーアは、アリーと意気投合して、まだ部屋で飲むらしい。

ジュリは、服が酒浸しになったので、3点式バスに入る。

アカリは、ミーアに絡まれ‥‥まだ酒を飲んでいる。

パメラは、胡座あぐら片膝立てのまま、後ろに倒れ込み『”スーピー”』寝てる。

 

「黒編み様の奥に控える黒三角姫」を見てくださいしてる。

俺は、目がかないように、寝ているノビをかつぐ。


ノビの部屋に‥‥。 

         

運び入れようとしたら鍵が開いてない。

仕方ないので、一度俺の部屋に運んで寝かす。

部屋から出て女将さんを探す。

女将さんは、食堂にいた。

初めてみる、「お偉いさん」らしい人と話していた。


『では‥、女将‥気をしっかり持ってな‥。』       

『わ‥わかりました‥。』 

「お偉いさん」は、話が終わり宿屋を出て行った。

 

話しを終えた女将さんに、

『連れのノビの部屋の鍵を‥酔っ払って寝ちゃいまして‥‥。』

『ここで待ってて、ください‥‥。』受付に取りに行ってくれた。

女将さんは、すぐに、『こちらです。』と、ノビの部屋の部屋の、

予備の鍵をもらう。俺の部屋に戻って、ノビを運ぶ。

部屋に寝かして鍵を閉め、俺は、鍵を渡しに、

食堂の女将さんのところへ。


『ありがとうございました。助かりました。』

鍵を返すと、暗い顔の女将さん‥‥。


『どうかしましたか?』気になった俺は、尋ねてみる。


『ここでは‥‥こちらへ‥‥。』女将さんについていく。


初めて入る、応接間に通される。

ソファーに座るように促され、座る。

真剣な表情で、対面に座る女将さん。


女将さんは‥‥少し涙ぐんで、話す。


『実は、先程の...話していた方は、領主様のハルツーム子爵様の、

右腕と呼ばれる配下の方です。騎士団を、統括している方で、

シモンヌ男爵様というお方です。私の主人は、あの方に長年仕えて‥‥

平民でしたが、今は認められて‥‥騎士団長として、

北方の「キヌギス砦」に駐屯して、任されていました。

数日前に「サブカラー傭兵団」という、悪名高い賊が攻めてきて交戦、

善戦むなしく敗退したと。

「キヌギス砦」は、占領され‥‥主人の生死が不明だと‥‥。』


最後は、泣きながら、話す女将さん‥‥。

俺は、女将さんの旦那さんが、騎士団長をしてる事に、驚いた。


『そうですか‥それは心配ですね‥シモンヌ男爵は、どうすると?』


『他の騎士団を援軍に回して「キヌギス砦」を奪還すると‥‥。

各騎士団は東西南北に配置されてる、「砦」に駐屯しています。

ここまで来るのに数日‥ましては、ここより北の「キヌギス砦」、

それまでに‥主人は、生きていられるのか‥。「サブカラー傭兵団」は、

ズードリア大陸でも、悪名高い、盗賊まがいの傭兵団です。

「悪魔付き」と、呼ばれる悪党も、いるとの噂なのです‥‥。』


『冒険者に依頼は?‥あ、そうですね‥‥出すわけがないですね‥。』

冒険者は各国を”冒険”する。国の砦を奪われたと噂になれば、

戦争が起こり兼ねない‥‥。冒険者に頼ることは無い。


(...しまった...大失敗...そう思っても..後の祭り...。)


ただ泣いてる女将さんを見て、居ても立っても居られず。

『とりあえず‥情報を集めて見ます。‥‥俺なりに‥‥。』


女将さんは、『ありがとうございます‥‥。』

泣きながら、俺の顔を見る。


『失礼します‥‥。』と、応接室を出た。


なんとか助けてあげたいと‥‥思って、俺は、自分の部屋に戻る。

自分のベッドに、横になって、すぐには寝れず、あれこれ考えていた。

”コンコンコン”と、ノックされる。『ああ‥今開ける。』

ベッドから、立ち上がり、ドアを開ける。‥‥そこには、ミーアがいた。


『帰る。』普通の声だ。 (..あれ?...。) 『そうか‥気をつけてな。』

 

ミーアが帰ろうとした時に‥‥。


(..あ... ..ちょっと. ..砦のこと聞いてみるか?...。)


思った俺は、ミーアに尋ねてみる。


『ミーア‥‥ちょと聞いていいか?「キヌギス砦」を知ってるか?』


『‥‥知ってるウチの庭みたいなもん‥何回も薬を届けに行った。』


(... 慣れたら... ..普通の.....声... ..出せるんだ... ..良かった..。)


 

 『ここからだと‥‥どれぐらいかかる?ハゴネより北だろ?』


『ハゴネから更に、北に80kmぐらいかな‥‥歩いていくなら‥‥

   3〜4日かかる‥‥でもね‥‥ウチは、1時間で行けるの‥‥。』


 ミーアは、酔っているせいか、変な事を言い出す。


 『えーーーーー?1時間で、いけるって転移魔法か?』無知な俺。


『違う‥ウチが大事に育てた‥「ベルマ」に乗って行く‥‥。』

ミーアは、普通の声で”サラサラ”と話す。


『その「ベルマ」って馬か、何かか?』無知な俺は、尋ねる。


『見た方が早いね‥‥リーダー!今からウチと行こう‥‥。』


ミーアに腕を、掴まれ”ぐいっ”と、超ボインにキャッチされる。


『ちょ‥ちょっと、ミーア待って‥‥待って。』俺は、必死に抵抗。


『見にいくだけだよ‥‥「キヌギス砦」を‥‥。』


『わかったから、ちょっと待ってくれ‥‥。腕を離してくれるか?』


 『ちょっと待つよ‥‥。』腕を離したミーアは、ご機嫌が斜め。


俺は、用心の為、桜刀を腰に挿し、お気にのテンガロンを被る。

部屋の鍵を閉めて、『よし‥‥行こう。』


ミーアは、また腕を掴み”ぐいっ”と、超ボインを押し当てる。


2人で出口に向かう。

そこで”バッタリ””‥‥風呂上がり”ムンムン”のジュリと会う。

  

ジュリは、白のタンクトップにグレーの短パン。素足。

胸元の緑のセクシーが、透けているのが、はっきりわかる。


『何してんの変だー!鼻の下伸ばしてー!そんな格好でどこ行く気?』             

 (...なんで...ミーア...と...一緒.....なのよ...。) 睨むジュリ。


『ジュ‥ジュリこそ‥‥なんで‥‥ここに?』驚いた俺。


『食堂に‥‥お皿とカトラリーを返しによ...。』なぜか紅顔なジュリ。

(...初めて......ジュリって...呼ばれた...嬉しー...。)


『あ‥ありがとう‥助かった‥‥忘れてた‥。

    これからちょっと、ミーアと「ベルマ」を見に行くんだ。』


『何よ‥その「ベルマ」って?‥ミーア‥‥?』不思議そうなジュリ。


『見てみる?ジュリちゃんも‥‥?』ミーアは、普通に話す。


『ちょっと待って‥‥この格好じゃ、出れないから‥待ってて。』

 (...これは...ほっておけないわ...呼ばれた...嬉しー..。) 

ジュリは、なぜか笑顔で、急いで大部屋に戻る。


俺とミーアは、玄関を出て表で待つ。なぜかその間も”ぐいぐい”。


『お待たせしましたわ。』『お待たせにゃ!』『ごめーーん。』

  

アカリ・アリー・ジュリの3人で来た。

アカリは、グレーのチャイナで、前が丸く空いてる。

桃色と黒のセクシーストライプが「こんばんわ」してる。

髪を纏めて、簪で止めてる。美脚がスリットから見える。

グレーのヒールに、片手には、大きな白檀の扇子を持っている。

       

アリーは、チャコールブルーのオーバーオールに、赤いハイカット。

前ポケットに、ショート魔導銃と照準器を、挿してる。


ジュリは、髪を横にクリップで纏め、

黒のショート丈前開きトップスに、黒の超ミニのスカート。

膝までのフェイクファーの生地薄のブーツに、黒の網タイツ。

短い青い杖を持ってる。


驚く俺。『な‥んで皆んな?それも、ちゃんとした‥‥格好で‥‥。』


『ごめーーん。着替えてたら、どこ行くの?って聞かれて‥‥。』

困った顔のジュリ。


ミーアは、『アリーちゃん!!』抱きついてる。


『大丈夫‥‥皆んなで行こう!!』ミーアは、普通の声で言う。


(...もう...平気そうだな...ミーア......良かった...。)


ミーアが俺の右腕を、歩きながら”ぐいぐい”押し付けて歩く。


アカリも‥左腕を「ボインホールド」‥また挟まれて歩く。

ジュリは、アリーと並んで歩いてくる。


「ロカベルの魔法薬材と薬店」の前に着く。

ミーアが歩いていく方に、付いて行く。


皆で、店の裏側に来る。何も無い。


 『ここにいるんだよ‥‥。普通は、ここには、入れないんだ。

 誰にも見えないし。 ”ふふふ”  エルフの森で使われる、

 「幻惑の魔道具」と魔法を使ってるんだよ。』ミーアは、そう言って、


『 ソベデ・ンャチアカ・°ノエマオ!! 』呪文を唱える。


辺りの景色が、”ゆらゆら” ボヤーとしてくる‥‥。

うっすら形を成していき‥‥。目の前に大きなうまやが現れる。


そこに‥‥「グリフォン」と呼ばれる魔物が、2頭姿を現した。

1頭が『グルッグギェーー!』と鳴いた。俺達は、たじろぐ。


アカリが少し驚いて、ボインに腕を引きつける。顔に血が昇る。

 

『よしよし‥‥ベルマ‥‥いい子にしてた?』

ミーアが普通に言いながら、頭やあごを撫でる。


『ミーア‥‥この魔物って、グリフォンだよな‥‥?』俺が聞く。


 『同じように言われてるけど、違うの‥‥ヒッポグリフよ。

 グリフォンも、ヒッポグリフも、魔物だけど、ウチら、エルフは、

  昔から、移動手段として、ヒッポグリフを養殖してるの。』


『知らなかったわ。私も‥。』アカリがボインを、押し付けながら言う。


『この子は、ベルマ。メスでウチが育てたの‥‥

  ‥‥隣のシグマは、弟のオスよ。シグマは、ミンシア姉様のなの。』


ミーアは、シグマの方も、撫でている。2頭とも、大人おとなしい。


『ミーアなの‥帰ったの?』綺麗なおねいさんの、ミンシアが出てきた。


『ただいま。姉様‥‥ウチのリーダーが「キヌギス砦」を、

見たいって言うから、これから見にいくの。

皆んなも連れて行く。だから‥‥姉様の、シグマを貸して‥‥。』


アカリとジュリが、何故だか2人して、俺を睨む。


『え?誰が乗るの?‥‥。』ミンシアは、貸すのに不安そうだ。


『ウチのリーダーと乗る。

       ベルマは、ウチが言えば、誰でも乗せてくれる。』


『貸すのは、良いけど‥‥夜明け前には、帰ってきなさいね。

 ベルマもシグマも、見つかったら大事おおごとだからね‥‥。』


『わかったわ姉様。馬銜はみくらを‥‥。みんなちょっと待ってて。』


 ミーアは、姉と一緒に「ロカベルの魔法薬材と薬店」に入っていく。


 暫く待つ俺達は、ベルマとシグマを観察する。2頭、共に大人しい。

 

『お待たせ。』出てきた、ミーアの格好に、俺は、顔に血が昇る。


 ミーアは、お揃いの、黒のレザーセクシーブラとパンツ。

 首には、同じくお揃いのレザーのチョーカー。緑蒼色の長い髪を、

 ポニーテールに纏め、黒のレザーの膝上ガーターブーツ。

 小さな弓と矢筒を背負っている。腰には「アイテムボックス」。

 大峡谷と、はみ出した「桃さん」が「こんばんわ」してる。

 手には2つの馬銜と鞍を持っている。


 『今、用意するからね‥‥。ベルマ、シグマ‥‥。』

 言いながら、2頭の顎を撫でながら、鞍をしっかり2頭に固定し、

 馬銜をませる。


 俺は、その姿と仕草に、暫し見惚みほれる。

 

 俺の顔を見ていたジュリは、凄い顔してる。

    

(..おいおい......これは...見入ってしまう...しょ...。)


『準備出来たわ。アカリさんとジュリさんは、ベルマに乗って‥‥。

アリーは、どっちに乗る?』ミーアは、アリーに聞く。


『ミーアと乗るにゃ!!』アリーが跳ねる。


『先にアカリさん、ジュリさんを乗せるわね‥‥。』

ミーアは、2人をベルマに、なんとか乗せて‥‥。


『アカリさんが、馬銜を持ってください。落ちないように、

   ジュリさんは、アカリさんに、しっかりつかまってね。』

ミーアが言うと、緊張してるのか、2人共、黙って”コク”っと頷く。


『リーダーは、ウチに掴まって、アリーは、リーダーに掴まってね。』

 

『わかったにゃ!!』アリーは、ミーアと俺が乗り込むのを待つ。

 

ミーアが乗り込んで、俺は、なんとか乗れた。

 

アリーは、『にゃ!!』と、言って、ジャンプして乗り込んだ。


『リーダーは、ウチのここに、しっかり掴まって。』

 俺の腕を、腰の上に誘導する。大峡谷をしっかり、掴まされる。


 顔からまた火が出る。アカリとジュリも、それを見て睨む。


(...俺が...自分で...してるわけじゃ...ないんだよ...とほほ。)


『あの‥‥ミーア、この手は、腰じゃダメなのか‥‥。』


『ウチ‥‥腰は、くすぐったいからダメなの‥‥。

 リーダー、大丈夫、ウチは、揉まれ慣れてるから‥‥。』笑って言う。


大噴火の俺の顔。このやり取りを、聞いていたアリーが、


『ゴクトーにぃ、僕が掴まっても、擽ったくないかにゃ?』


『ああ。大丈夫だ。』アリーが少し、火を消してくれた。


『みんな行こう。ベルマ!付いて来てね。シグマ行くよ!』


ミーアが言うと、2頭が『グルッグギェー!』と、鳴いて翼を広げる。


 ”バサッバサッ”と、ゆっくり、翼を羽ばたかせて、ゆっくり、上空へ。


『行こう!!キヌギス砦に!!』ミーアが、勇ましく馬銜を掴む。

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