第28話  師弟コンビ



『先ーーー生!!待ってぐださーーい。』

 足早に先に行くパメラを追う。

『貴様など!!付いて込んでいい!!』

 追いつこうと、必死のノビ。言われ慣れてるので、お家芸。


 パメラの足が止まる。パメラの目の前にある大店おおだな

 そこに入って行く。ノビも急いでそこに入る...が...。

 豪華絢爛ごうかけんらんな品々と、格調高い店の中......パメラの仕草にも、目をみはる。


『ようこそ‥いらっしゃってくださいました‥‥姫様。』

 白髪混じりのロマンスグレーの髪・眉・口髭。

颯爽さっそうと着こなしている、黒の燕尾服えんび

 目は、白く薄い茶色の瞳。老齢の紳士が手を取り、頭を下げ迎える。


手を差し出し......女性貴族の挨拶をしながら、

『ごきげんよう。新しい装備が欲しいの‥‥見せていただける?』


このやり取りに唖然あぜんとして、口を開けて立つ......ノビ。


『お連れ様のも、ご用意いたしますか?』老齢の紳士が、ノビを見る。


『あの者の‥‥装備も、見繕っていただける?』ノビを見もしない。


『かしこまりました。姫様は、2階にておくつろぎください。

おおーい誰か!!』  ”パンパン”と手を叩く。


黒の上下のスーツを”キリッ”と、着こなしたイケメン従業員が来て、

『お呼びでしょうか?旦那様。』


『私は、姫様をお連れするから、後ろのお連れ様を、

        ご案内差し上げなさい。ささ‥‥姫様こちらに‥‥。』

 パメラを連れて螺旋らせん階段を登っていく。


『あなた様は、こちらへ‥‥。』ポカーンのノビは、俎上そじょうの肉になる。


 2階に上がったパメラは、美しい彫刻が施してある応接間の、

 白色のダイニングに、案内されて腰を下ろす。

 メイド服の亜人が、お茶と菓子を運んでくる。


『どうぞお召し上がりください。ジャスミンティーです。』

 丁寧ていねいにお茶をれて、下がる。


『良い香り‥‥そうだわ‥少しの間‥ここを離れるから、

 お父様に「ハト」を飛ばしていただける?』


『かしこまりました。サカエラさんを呼んでくれ。』

 

下がっている亜人のメイドは、『かしこまりました。』奥の方に向かう。


『お呼びでしょうか?サンドル様。』

すぐに、黒いローブの女魔道士が来る。


『サカエラさん、カルディアまで伝言を頼みたいんだが‥‥、

お願いできますか?姫様が、

ここを少し離れる旨を、伝えていただきたい。

サンドルの使いだと言えば、城に入れて、いただけますので。』


『かしこまりました。』頭を下げ、詠唱を始める。

 短い白い杖を振り『アストラル・ゲート!!』

 浮かび上がった白い門に入って行く。


『ありがとうございます。サンドル様は‥‥お仕事がお早いから、

                 お父様も、頼りにされてるわ。』

パメラは、嬉しそうに、”ニコッ”とする。


『お褒めに預かり光栄です。姫様。

前回、お求めいただいた紅い服と、似たような物をご用意いたします。

 こちらで、暫しの間‥‥お寛ぎください。』


 下がっている亜人のメイドに、目で合図すると......。

自分も用意された、お茶を飲む。亜人のメイドは、階段を降りていく。



 下の階では、ノビが色々な装備を充てがわれ、合わず難儀なんぎしていた。


『ちょっとごれ、あわねんさ‥‥寸垂すんたらず。』


『こちらの「グリーン・トータル」の胸当てでは、いかがですか?』


『それあでで、みるんさ‥‥これならばいいがも。』

 やっと合う装備が見つかって、”ホッ”とするイケメン従業員。


『「グリーン・トータル」のヘッドギアも、御座いますが‥‥。』


『それもお願いするんさ。』イケメン従業員は取りに行く。


『しかし‥‥すんげーどころだなっ‥‥。』つぶやくノビ。


 見繕った物一式を揃えた亜人のメイドは、

「マジックバスケット」を抱えながら階段を昇り、応接間に入る。


『お持ち致しました。旦那様。』


『姫様・‥‥寸法は、前回測らせて頂きましたが‥その‥‥。』

 ”オホン”と咳払いしてから、『お変わり無いようですね。』


『サンドル様、私なら変わりない自信がありますので、

 前回同様に、サイズにあった物をいただくわ。あ‥少しいいかしら?』


 亜人のメイドを、手招きして呼び、耳元で、

『男性が好きそうな‥‥色柄物の下着も、用意していただけるかしら?』

 

亜人のメイドは、『かしこまりました。』 頭を下げ、また階段を降りる。


『他にも何か入用が御座いましたでしょうか?』

不思議そうに見るサンドルに、

『彼女を待ちますわ。』恥ずかしそうにするパメラ。


サンドルは、幼少期からパメラを知っている。王室御用達で、

この店もやはりチェーン店のように、各国に出店している。

今回、アドリアのダンジョン発見と共に、この村でも出店した。

私が自ら手掛けると、この村まで来たらしい...。大店の名前も、

『サンドル・デ・パート高級店」自分の名前を使っていた。


下の階のノビとイケメン従業員は、まだ悪戦苦闘してる。


『この「グリーン・トータル」のブーツは、水掻きがついでないさ。』


『仕方ありません。それを諦めて「ビッグ・ジャンプ・フロッグ」の

 柄物のブーツになさいますか?』


『それ‥‥んじゃお願いします。』イケメン授業員は、取りに向かう。


『しがし‥‥なんでも‥‥あるどころだなっ‥‥。』呟くノビ。



 見繕みつくろった下着一式を揃えた亜人のメイドは、

「マジックバスケット」を抱えながら階段を昇り、応接間に入る。

 

パメラに『お持ち致しました。姫様。お好みがわからなかったので、

 控えめの物と、派手目の物をご用意致しました。』耳元でささやく。

『ありがとう。試着致しますわ。』立ち上がる。


『かしこまりました。私めは、ここでお待ちしております。』

礼をして、サンドルが亜人メイドをうながす。


亜人メイドとパメラは、奥の試着室に‥‥。

試着室に向かうのを見て、

サンドルは、お茶を飲んで『”ふぅー”』と吐いた。


下の階では‥‥。やっと全てが揃い、満足してるノビがいた。

イケメン従業員は、汗だくで『ご満足いただけてよかったです。』


『いぐらでしょうか?』ノビが「アイテム・ボックス」をのぞくと、

『姫様から頂きますので結構です。こちらでお待ちください。』


 装備品を受け取り、自分の「アイテム・ボックス」に入れる。

 店の左側にある、商談用ソファーに案内され、座る。

 

 イケメン従業員は、階段を昇り、2階に行ってしまう。

 

 座っていると、テーブルにお茶が運ばれる。

 黒のスーツの別のイケメン従業員が、『ごゆっくりどうぞ。』

 すぐに立ち去る。『どうも‥‥。』ノビは、香りをいで、

『ごんな、がおりのお茶‥‥初めで飲むな‥‥。』呟く。


 2階の試着室では‥‥。パメラが悩んでいた。

『この赤の柄も‥‥この黒のレースもいいわね‥‥。』

 鏡を見て、独り言を言いながら、着替えていた。

『ゴクちゃんの好みは‥‥レースよね‥‥。』また独り言。


 カーテンの外で待つ亜人のメイドが、不思議そうな顔をする。

『姫様ご試着は‥‥お済みですか?』


 ”ジャー”とカーテンを開けるパメラ。『どうかしら‥?』


『とても良くお似合いです。赤の薔薇バラの柄も素敵です。』


『これと同じ物で、色違いを全て、持ってきてくださる?』


『かしこまりました。姫様。』

亜人のメイドは、またまた、階段を駆け降り、取りに行く。


”ジャー”とカーテンを閉めて、装備用の衣服を試着する。

 また降りていく亜人メイドを見て、サンドルは、困惑する。


『これでいいわ。』と、納得の声を出して、

また‥レッド・バードのショートワンピに着替えて、

”ジャー”と、カーテンを開けて、試着室を出た。

 

応接間に向かいサンドルに、

『良いものを選んでいただけましたわ。』軽く頭を下げた。


『お気に召して頂き、至福しふくで御座います。

 お連れ様も、お買い求めいただいたようで、下でお待ちです。

 お選び頂いた物は、うちの者が下で、同じものを、

 用意してお持ちいたします。』サンドルもうやうやしく頭を下げる。

パメラが選んだ物を持って、さっきのイケメン従業員が降りてくる。


下の階で、亜人のメイドにイケメン従業員が渡す。

亜人のメイドは、同じものを、急いで取りに行き、布油紙袋に入れる。


『精算は、お父様に‥‥。』


『かしこまりました。』サンドルと階段を降りてくる。


汗だくの亜人のメイドと、従業員達も見送りに集まる。


ノビを知らんフリして、店を出て行こうとするパメラに、


『先ーーー生!!俺も装備揃いました。おがね‥‥先生が、

払っでくれるっで聞いたんさ‥‥。

俺も金貨なら、たくざん持っでますがら‥‥払いますよ。』

座っていたノビが駆け寄り、パメラに声を掛ける。


『貴様!!ここの品々がいくらするのか‥‥知っておるのか!!』

 一喝いっかつする。サンドルや、見送りの従業員は、開いた口がふさがらない。


 ノビは、お家芸。  パメラが......。少し間を置いて、


『あら‥‥私ったら酷い言葉使いですわ。”おほほほほ”。』大店を出た。


 従業員から布油紙袋を受け取り、それに付いて行くノビ。

歩きながら、布油紙袋の中身を見て、


 ノビが振り返り、『ありがとうございましだ。』顔を真っ赤にして、

 頭を下げ、大店を出た。



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