第20話  解放



目が覚め、‥‥頭に柔らかい感触が伝わり‥‥目を開けると‥‥。

 

鼻血を拭き取ってくれてるジュリの顔が、なぜか、しかめってる。

(...ネーの連続攻撃ね....拭いてあげる..。)

 目が覚めるのが分かると‥『大丈夫ですか?』とアカリが、顔をのぞく、

(..先制攻撃.. ..やりすぎたかしら..。)      


(..「デス」姉さん.. ..これはあなたのせいでしょ?...また動悸が..。)


『いつまで、膝枕されてるのよん‥‥。』

(..ちょっとーあたいも....膝枕したいのに..。)


パメラに言われ”ハッ”と気づく。

すぐ起き上がり‥‥。  『すまない‥‥。』顔に血が昇る。


『いいなーーー俺も先生さに‥‥。』と、言いかけて....。


『もう貴様は、この階層で離脱させるぞ!!』恒例のやり取りをする。


 ジュリの横に、”ピタッ”と、くっ付いてるアリーが『出発ですにゃ。』

 可愛いい声。改めて食事を済ませて‥‥攻略を進めた。


 俺達は、21階層に進んだ‥‥。


 21階層 オーガソルジャー ボス オーガキング。

 ここから「Bランク指定の魔物」が出現。

          ・

          ・

30階層 ミノタウロス ボス デーモンスパイダー。

「Aランク指定の魔物」が出現。  


苦戦し始め、カエルをかばっての攻略は、厳しいと判断した為、この階層の「セーフティーゾーン」にある、転移ポータルで、

カエル‥‥ノビは、『先生ーー!!』と言い残し、泣く泣く離脱した。


30階層から、「Aランク指定の魔物が現れると同時に、

今までの階層ボスも、出現した。

      ・

      ・

「AAランク指定の魔物」が出現。


40階層  キングデーモンスパイダー ボス ブラックサンドワーム

攻撃魔法の効かない魔物達で、

アカリと2人で、ほぼ戦う。(..かっこいいわ...素敵..。)


かなり苦戦したが‥何とかクリア。

「セーフティーゾーン」に向かう‥。

皆‥‥体力、魔力の消耗が激しい‥‥。時間も、かなり経っている。


『ここで、野営にしましょ‥‥。』先導のアカリ。

(..またチャンスがあれば..。)


皆も疲れた体で野営の準備をする‥‥。「アイテムボックス」から、

師匠が使ってた「ヤマト式テント」を取り出し、張る。

向こうの、かしましいカルテットも、「ヤマト式テント」を張っている。

(..多分.. ..桃色姉妹の....持ち物だろう..。)


姉妹は、「万能巾着」を持っている。


俺の持っている特大「アイテムボックス」や、

テントまで入れられる「万能巾着」は、

冒険者でも持っている者は、少ない。


(..俺が持っているのは....全て師匠のおかげだが..。)


桃色姉妹も、多分裕福な家か、大概の冒険者は、相当苦労して、

金を貯めて、買うものだ。   


テントを張り終え‥‥。

持ち合わせた食材で準備する。食事の支度をしてる最中‥‥。


パメラが、こちらに来る‥‥。どうしたのか?

俺のテントで、寝たいと言う。”ドキッ”とした。


4人では、かなり狭いらしい。テントを譲る。

(...勘違いが恥ずかしい...。)

俺は、1人用の寝袋も、あるし...。


食事しながら、皆で明日の攻略や、残ってるアイテムの、確認をする。

俺のテントでは、アカリとパメラが寝る。


食事を終え‥‥皆‥‥各自テントで就寝する。

テントの外、寝袋に入って目をつむった。


アカリの「デス」を、思い出す‥‥。

寝袋に入っているのに、「テント」を張ってしまう。

何となく”ドキドキ”しながら変な期待を、してしまう。


しかし、疲れていたせいか‥‥。

いつの間にやら、”ぐっすり”眠ってしまった。





『ちょっ‥何して‥のよ!!この‥‥あん‥ら‥‥S‥冒険‥が‥‥

‥パー‥ーの‥‥こん‥事し‥‥険者として恥ず‥し‥‥

                      う‥‥ぅぅう。』

       

声で目覚める。    ‥‥ジュリは、気を失う。


 (‥ん‥?) 身動きが取れない‥‥。

 口を塞がれてる?ぐるぐる巻きにされ、何かの魔法を掛けられていた。


 (..皆.. ..眠らされている..。)

すぐ理解した。相手を”キッ”とにらむ。


5人組の男達だ‥。


『お‥‥やっと目を覚ましたようだな‥‥このバカ‥。』

全身ミスリルの鎧で、身を固めた、

小柄の茶髪の髭面ドワーフが、斧を向ける‥‥。


『お目覚めですか?今からお仲間達は俺たちが‥‥”ひひひひ”。』

 盗賊ジョブなのだろう‥‥頭巾‥‥黒装束で片目に眼帯。

そんな感じの身なりの男。人族だ。


『こいつから、まず殺るか‥‥‥‥。』

装備を見る限り‥‥魔術使い‥‥魔道士であろう‥‥。

グレー色のフードから、長い耳が出てる‥‥。エルフか‥‥細身だ。


何も言わないで‥‥だが、舌舐めずりしてる‥‥。青緑の髪色。

やたらとデカい‥‥上半身は、剥き出しでムキムキ‥‥若草色の短パン。

巨人族だな‥‥。長い朱色の槍を持ってる。


装備が他の4人と段違い‥‥リーダーらしき男。


かなりの魔力だろう‥‥。「覇気」も違和感を漂わせる。

普通のそれと、何かが違う‥‥。背中に大きな大剣を背負っている。

濃紺の髪色で、目は黄色で瞳は、銀色。

肩幅があり、腕周りの筋肉は凄い。襟が少しある黒革の上下スーツ。

胸当ては、ヒイロカネ‥‥。黒革靴を履いている。


冒険者には、‥‥荒くれ者も多い‥‥。悪事を重ねる者は、

「悪魔付き」と呼ばれ、たまに魔族に乗っ取られる者もいる‥‥。

ましてダンジョンの中は、誰がいつ死んでも‥‥おかしくない状況。



ジュリが目を覚ます‥‥。

『俺様のお眼鏡に叶う上玉達だ‥‥たっぷり可愛がってやろう‥‥。

俺様は魔剣サランドガリアを使う‥‥S級のリンクスだ‥‥。

「ドラゴンスレイヤー」とも、呼ばれるぜ。』


ジュリのあごを掴む。

リンクスが、ジュリの拘束を解除‥‥ジュリの上着を破り‥

緑のブラトップが、あらわになり‥‥。

『んーーーんーー。』口を手でふさがれ‥‥必死に抵抗していた‥。

ジュリの目が‥‥悔し涙であふれる。 (..助けて..。)

         

何も出来ない‥‥‥。

手も足も出ない。

猛烈に怒りが、込み上げてくる‥‥。

情けない自分に腹が立ち、悔しい。

止められていたが‥‥‥。

          

奥の手を使う、と決めた。


目をつむり‥‥‥呼吸を整え念じる。

「天啓与えし神代かみしろの大神よ‥‥我は力無き大地を歩む者

なり‥その比類無き根源を、我が魂に宿り給え。」


巨大な炎が真上に広がり...赤い魔法陣が出来る。

      

全身に炎のあざが、浮かび上がる。


「我に宿り、全ての創造の源たる力を、ここに具現し給う。」


激流が如き、水の渦巻き。

これが青い魔法陣になり、赤い魔法陣を丸く囲む。


 身体に無数の...渦の痣が、浮かび上がる。


「神代の大神よ、力無き我に‥我が命をにえとし、

    我が身を依代よりしろとし‥‥ 降臨し、応え給え。」


緑葉の竜巻が、凄まじい稲光と...共に上がり、緑の魔法陣が出来る。


両頬に十字の緑の葉の痣が、浮き出る。3つの魔法陣がゆっくり重なる。


 魔法陣は、白色になり、そこから「一差しの白色の光」。

 その光に包まれ、「斑と呼ばれる者」と、化す‥‥。


白茶色の髪色が、銀色・黒色のメッシュに変わり‥。

目は赤く‥銀の瞳になる。

神代魔法は、大神より貸し与えられし‥‥仮初の神力。


「初伝・ひとえ」「中伝・そう」「奥伝・まだら」「秘伝・

四巻の書物‥‥古から伝わる魔法。

 

扱う者の、個々によって反動が様々。個人の魔力にも依存する。   

使用者は、代償として「生命力」を削る。


師匠直伝「神代魔法・奥伝」斑の封印を解く!!

「斑と呼ばれる者」の仮初の神力、その威力は、桁違い。

         

それは、身体中の血管が、破裂しそうな勢いで..身体が‥‥膨れ上がる。

掛けられてる魔法を、寝袋ごと破り、立ち上がる。


白い光をまとい、走り出し‥‥腰の桜刀を抜き、

逆手で、2刀を前方に、高速で交差させ、振り上げ、

     

『十文字鎌鼬かまいたち斬り!!』緑葉の嵐が、斬撃刃になって飛ぶ。

フードのエルフを、クロスに切り裂き、四分割。

4つの肉片へ変わり、大量に吹き出し始めた鮮血と共に、床に転がる。


巨人の足元に滑り込み、右膝、左膝に『金剛こんごう一文字斬り!!』

凄まじい雷光‥‥‥同時に‥‥桜刀が雷を纏わせ、横一閃。 

膝から下が、”スパッ”と、切れる‥‥。大量の血が吹き出す。


巨人は、後ろに倒れ込み、『いでー‥‥。おでのあじが‥‥。‥だ。』


わめくな‥‥』首を、『”ふん”』と落とす。

『この野郎!!』、『この化物!』襲い掛かってくるドワーフと盗賊に、

    

順手に桜刀を持ち替え、『金剛雁流がんりゅう二刀斬り!!』

上段から斜めに、交互に桜刀を振り下げ、

激流りんの斬撃刃を、2つ飛ばす。


ドワーフと盗賊の身体は、半分に別れ‥‥そのまま憤死。


一瞬の出来事に‥‥ジュリは、声が出なかった。

 

 変貌した姿に‥‥目を見張る。(...なんて姿.......人族なの?..。)

      

 血管が張り裂け、痛みと、熱さを感じる。


 『はぁはぁはぁ‥‥。』(....身体中の痣に血が..にじ...む

『ジュリ‥‥今すぐ助けてやるから‥‥な。』

 ギリギリの声を絞り出す。


ジュリは、変わり果てた俺を見て、涙を流し、”コクン”と頷く‥‥。

(....血が.....身体中...滲んで...死んじゃう...。)  .


『お‥お前の‥‥その姿‥‥技は、何なんだ‥‥くそっ!!

                  くそっ!!くそっ!!』

  

恐怖を感じるのは、初めてなのだろう。

自分の命が、危うい事を感じ‥‥狼狽うろたえる、リンクス。


ジュリを人質に身構え、リンクスの身体が、禍々しいものに変わる。

         

「悪魔付き」。こいつも...その類。


顔は、ドス黒くなる。目は、爛々とさせ‥‥下顎からは、2本の牙。

身体は大きくなり、背には、蝙蝠コウモリのような羽が生える。   

  

異様になった姿に、桜刀を逆手に持ち替え、身構える。


『愚かで哀れな者よ!!ワレの力を思い知るがいい!!

              これでも喰らえ!!暗黒波動弾!!』

鋭い眼光で、リンクスが放つ。


闇のエネルギー波が、無数の弾丸に変わる。避けきれずに...何発も命中。


体中に無数の穴が、穿うがたれ鮮血が、ほとばしる。

意識が飛びそうになる。

限界を超え、身体が‥‥悲鳴を上げる。


(...神力を纏わせてる...もう.....魔力が残って無い...。)


『深淵の冥府より‥‥‥。』詠唱し始めるリンクス。

膨大な闇のエネルギーが、丸い球になり‥‥どんどん膨らむ。


(..ジュリに...俺の意図を..。)    一瞬視線で合図する。


ジュリは、視線に気づく。


『死ねーい!!冥降魔導波!!』

闇の魔法が放たれる。  ジュリが、身を屈めた刹那。


聖属性魔法を、桜刀に纏わせ‥最後の力を振り絞り‥‥放つ。

『ホーリー・スラッシュ!!』.. ..『ほむら‥金剛‥‥斬り!!』

 逆手左右による、横一閃‥‥2つの斬撃刃。

 

リンクスの体が、真横に3つに切り裂け.

爆炎‥‥光に包まれ.‥‥姿が消える。


放たれた魔導波が、命中し....左頬が十字に張り裂け...。

痣と穿たれた穴から、..大量の血が噴き出す....。


”シューー”.....と、縮む様に元の姿に、戻っていく。

 

薄れる意識。『いやーーー!!』ジュリが駆け寄り...


(...泣いてる姿が....。).....うっすら見えた。



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