第4話  お決まり


会議室では、まだ紹介が続く‥‥。

俺の右横には、頭からすっぽりの‥‥黒い「ヒジャーブ」を身にまとい、

顔は、はっきりわからないが‥‥女性の民族衣装なのだろう。

焦茶こげちゃ色した長い耳が出ている。ピアスのような耳飾り。

小柄で細い手首や指も、焦茶色をしてる。

魔道具のアクセサリーなのだろう。

ジャラジャラと、いくつものアクセサリーをつけてる。

左手には、宝石のめ込まれた、美しい装飾の長杖を持っている。


ハンニバルが、その冒険者に、左手を差し出し紹介した。

『こちらが「ファルダット自由国」から派遣してもらった、

                     S級のイブラヒム...。』

『‥‥‥‥‥‥‥‥。』無言のイブラヒム。

顔が見えないので、若干不安そうなハンニバルだが‥‥。

イブラヒムの冒険者証を、確認しているだろうから、大丈夫だろう。


「ファルダット自由国」は、ダークエルフが治める国で、

国土のほとんどが...南西にある、ドルバー海に面しており、

港町が点在している。

主に(貿易・鉱物)で、栄えている国だ。砂漠地帯もある。

特に鉱石は「ヒイロカネ」や「アダマンタイト」等の、

高価で稀少な鉱物が取れる。それを他国に輸出してる。

ダークエルフ族は、魔力が高く「錬金術師」になる者も多い。

「闇属性魔法」の使い手が多いとも、噂で聞く。

得体の知れない冒険者、であることは、間違いない。

(...謎の女冒険者... ...ワクワクするね...。)

ちょっと顔に出てるだろうなぁ‥‥と、思う俺。


その右には、”ビシッ”とオールバックにした、緑青色の髪。

目の色は、白で黒い瞳。メデルザード人の特徴がよく出てる。

がっしりとしている身体に、ミスリルの胸当て。

両腕にも、ミスリルの籠手を装備。  

かなりのイケメンで‥‥チャラそう.な‥‥嫌いなタイプ。

20代になったばかりに見える。椅子の背もたれに、

背負う大剣を、”コツコツ”当てながら、座る位置を、何度も変えてる。

(...貴族なのか?...。)と思いながら、いぶかしい目で見る。


『メデルザード王国からは、A級冒険者のカリオス・グレンじゃ。』

カリオスは、いきなり二本指を眉にあて、突き出し、

『よろーーーーー!!』返した後‥‥。

しーーーーん。............ハンニバルに”キッ”とにらまれる。

(...おいおい...お前...実は...お笑いなのか...

...S級の冒険者には連絡が...取れないのか...心配だな...。)

 考えても無駄。A級チャラ男は、相手にしない。


”ガッターーン”と扉を開けて、会議室に飛び込んできた”モフモフ”が

『遅れたニャーン。』と息を切らし、”ハァハァ”と呼吸をしている。 

(...もふもふぅ....ニャーン....お決まりだな..。)

また考え、顔を下に向け”ニヤ”けた俺。


”モフモフ”は、黄色の体毛に”ピンと立ったケモ耳。

目は白く垂れ目。瞳は獣人特有の金色。

顔に髭もない。可愛らしい美形。ちょっと、オットリして見る。

大きな胸と細い腰周り。かなり露出度が高い迷彩の服。

腰には茶色い鞭をぶら下げている。膝まである戦闘ブーツ。

迷彩ズボンは獣人専用。獣人専用のズボンから出してる尻尾。

尾先だけは白の、黄色い尻尾が左右に”フリフリ”してる。

『ごめんなさいニャ。』顔を真っ赤にして、

両手で「ごめんなさい」を、しながら左右に頭を下げる。

つい揺れる胸元に...目がってしまう。

(...プルンプルンだ..お決まりですな...。)

またまた、心の中で、独り言の俺は、下を向く。

皆から受ける胸元の視線も、本人は、至って気にしてなさそうだ。

ハンニバルは『はぁ...。』と溜息をついたがすぐに、

『亜人の国「フィルテリア」から派遣してもらった、

             S級のティグルだ。‥‥早うここに座れ。』

隣の空席に、座るよう促した。


「フィルテリア」は、大陸の東にある亜人国家。オドリュー海側。

5大老が治める。最長老は、猿人の「サバス」。

龍人の長老「ミデル」、虎人の長老「オブ二ビア」。

鳥人の長老 「バックス」、魚人の長老「ネルミア」。


主に(冒険者・傭兵・召使い「メイド」)が、彼らの主な仕事。

身体強化の固有スキルを持っており、戦闘力も高く、

魔力も高い。しかし、脳筋タイプが多い。人族の貴族に仕える者もいる。

昔、かなり迫害を受けていたらしい。

国と言っても王政では無く、長老達の合議制。

今は戦争が無いので、ほとんどの亜人は、冒険者か用心棒になっている。

「S級」冒険者が一番多い国と言える。

今回派遣されたティグルは、虎人の長老の孫娘らしい。

天然娘らしいが‥‥、実力は折り紙付きとの事。

ハンニバルは、幼い時からティグルを知ってるらしい。

これは、後で聞いた話だが、俺は、その時知らなかった。


ツルツルに禿げた頭をき、しかめながら、重い声を出した。

『集まって貰ったところで、早速なのじゃが‥‥

トランザニヤからの依頼じゃ‥‥「ヒドラ」が国に被害を出していて、

困っていると。ワシも初めてのことで、戸惑っている。』

(...こちらもかなり...戸惑ってますけど...。)口には、出さない俺。

ハンニバルが目を細めて、全員の顔を見廻す。

『それも1体ではなく、2体とのことじゃ。』 深く吐く。

『自分には、荷が重いっすね。』

カリオス・グレンが、軽めのトーン。うすら笑い。

ハンニバルは、しかづらで、

『カリオス‥‥お前は、若手有望株では、あるが‥‥「A級」だ。

今回は、サポートに回ってくれ。足手纏あしでまといにならんように!!』

ハンニバルが釘を刺す。カリオスは‥‥崩れた顔で黙る。

皆、あきれた表情だ。

(...出る杭...おっと改め....出る釘は..打たれる...)    

心の中でナイスと、親指を立てる、チャラ男が嫌いな俺。


『このメンツで「ヒドラ」

1体ならば討伐は、出来無いこともないだろうが、

2体同時に襲って来られたら死ぬかもな‥‥。

全滅するんじゃないだろうか。』 ‥‥ため息混じりに吐く。

全員がまた‥‥驚いた顔で俺の方を見る。

(...普通の声なんだが?....なんだよ..。)恥ずかしく思って、血が昇る。

 

『おでの親父が、昔1度‥‥見だって言ってだことがあるな。

頭が5つある龍(ドラゴン)を見たのは、初めてだでって言ってた。』

窓の外から、大きめの音量で話す、ルベイドの声は、会議室く。


(...急に...声...でかっ!って...。)

またまた”ビクッと”する。口に出さず、ムッとする。

皆も耳をふさいでいる。

ハンニバルは、気にせずに語る。

『うむ‥。そうじゃな‥‥。ドラゴン種には、

イエロー・グリーン・ピクシーの通常種は、S級に討伐されておる。

ブルー・レッド・ホワイト・ブラック‥‥。上級種はS級でも、

3人掛りかのぅ‥‥。過去にも記録はある。

「ヒドラ」や「エンシェントドラゴン(古代龍)」は、

ドラゴン種の最上位種じゃ。討伐の記録は、1つもないんじゃ。』

 (...だから... ...倒せないんですよ「ヒドラ」は...。)

考えながら、ため息ばかりついてしまう。

下を向く者。同じくため息をつく者。 ”ニィ”とニヤける者。

皆、それぞれの反応だ。

『ワシらはそんな怪物を2体も‥討伐せにゃあいかんのかい‥。』 

コザックが吐く。 ”やれやれ”と両てのひらを肘まで上にあげながら、

参ったと、言わんばかりに両肩を左右に”カクカク”揺らす。

そんな仕草を見てティグルも真似をする。 

(...うん可愛いぞ...。)目で追ってしまう。

『まぁ、このメンツなら...なんとかなるでしょう‥‥。』

シンディー・ロアは、”はっはっはっはっ”。』と、

自分に言い聴かせるように、大声で笑う。

(...なんかを観てるみたいだな...。)俺は苦笑する。


会議室には大陸中から集められた「強者つわもの?」が確かに揃ってる。


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