第3話   召集


ズードリア大陸のほぼ真ん中に位置する国で‥‥

様々な種族の国々に囲まれた国『メデルザード王国』。

 

この国の中央に『メデルザード城』があり

城下街の『コンラッド』がある。

かなり大きな城下街で『タザ』の街の数倍の賑わいを見せていた。

街のメインストリートには‥‥商店や屋台がのきを狭しと並んでいる。


この街の外れの一角に 冒険者ギルド本部が置かれていた。

本部の建物は他の国の支部とは比べ物にならないほど立派な建物。

本部の横にある『解体処分場』の作業所は本部の2倍ぐらい大きいのだ。

なぜなら‥‥

各国の支部では解体出来ない‥‥

大型の魔物を処分するのに使われているからだ。

何人かの解体職人が汗水垂あせみずたらしてそこで働いている。


この本部の1階は受付と食堂や酒場があり‥‥各国支部と違ってかなり広い。

2階には資料室や会議室と応接室。

本部長の執務室があるのも2階だった。


山積みにされた資料が所狭しと乱雑に置かれる執務室で‥‥

机の上に置かれた通信水晶に向かって‥‥

険しい顔をしながら 会話をしている老人がいた。

話が終わると 『魔導具』の通信水晶が切れる‥‥


「よりによってあの国か...」


雷でも落ちたのか?そんな顔で‥‥

頭を抱えてその老人がつぶやいた。


呟いたこの老人こそ ズードリア大陸の

冒険者ギルド本部長‥‥『ハンニバル・スミス』。


見かけは中肉中背で

眉と口髭・顎髭あごひげは白く頭髪はなくツルツル。

頑固ジジイにありがちなしかめっ面。

白いローブをまとったいかにもという感じの老人。


ハンニバルは目をつむる。

覚悟を決め‥‥


「【ビレン・ドレッコ !!】」


通信水晶にむかって呪文を唱えると通信水晶が起動し始める‥‥


「各ギルド支部に通達.....

トランザニヤでヒドラの討伐依頼が来ておる。

そこで討伐隊をギルド本部で編成したい。

各支部長はA級冒険者以上を本部に派遣されたし....」


声を荒くして顔を真っ赤にしながら

大陸中の国の冒険者ギルド支部に通達する。

通信水晶をきったハンニバルが‥‥


「やるしかないんじゃし....」


そうつぶやきながら

椅子の背もたれに”ふぅ”と‥‥もたれ掛かかった。


ズードリア大陸の他にもある『隔離された国々』‥‥

その国々の存在がある事は大陸中に知れ渡っていたのだが‥‥


始祖の国『トランザニヤ』

神代の国『ヤマト』

天空の国『ハーピット』

魔族の国『ガーランド』


大陸とは海で阻まれていた国々な為‥‥

そのほとんどが足を踏み入れた事がない国々だった。


「面倒な事になったのう....」 


ハンニバルが”ボソッ”と呟き‥‥

顔をしかめながらツルツルの頭をかかえた‥‥



◇ ◇



通達があってから数日後‥‥


呼び出された俺がに居る。

本部には各支部から派遣された冒険者達が召集されていた‥‥

2階の会議室には様々な種族の者が顔をそろえていた。

広い会議室の大きいテーブルに‥‥

ハンニバルが一番奥の席に座っている。

ハンニバルの左の席は‥‥ なぜか空席。

ハンニバルが支部から派遣された者達の紹介を始めた。


(..あの...ツルツル...テカテカ... 

...ちょっとまぶしいんだが...)


思いながら俺は目を細めてハンニバルを見る。


「おーい ... S級のルベイド」

「おでだ───!」


ハンニバルに呼ばれ‥‥大きな声で応える。


(...声...でかっ!...)


俺は口には出せず”ビクッ”とする。

     

返事をした奥の窓から見えている巨人は‥‥

巨人族が治める国『カイド』から派遣された『S級』の冒険者だ‥‥


『カイド』は大陸の南にある国で

ドルバー海とマレー海がぶつかり

激しい渦潮が巻いてる『ドルマレー海域』に面していた。

カイドは『革製品・造船・漁』が盛んで

海に面している地方の巨人は造船業と漁を営む。

その地方の巨人達の多くが気は荒く海賊の末裔らしいと訊いた。

内陸に住む大人おとなしい巨人は

上質な毛皮が取れる『オックス』と言う牛の魔獣を畜産業にしている‥‥ 

草原が多い内陸だからこその当然の理由だ。


ルベイドと呼ばれた巨人の身体は4mメージ位。

茶髪短髪。目は緑色で瞳の色もほぼ同じだ。

肌の色は黄褐色。両耳に巨人族特有の耳飾りをしていた。

顔はそばかすだらけでやたら鼻がデカイ。

上半身は裸で ”ムキムキ”の身体を自慢してるように見える‥‥

装備は薄い茶色の革の胸当てと革の半ズボンと革のブーツ。

片手には身長と同じくらいの『青い槍』を持っていた。

会議室で参加するには巨人族はデカすぎるのだ。

ルベイドは仕方なく窓からの参加だった。


ハンニバルの右に座るのは‥‥

ほぼよろいの塊にしか見えないかなり小柄な男で‥‥

白目で”ギョロッ”とした薄茶色の瞳。

口周りと顎に立派な茶色の髭を蓄えて‥‥

大きな『アックス』を肩にかけていた。


(だいぶ重そうだけど... 破壊力はありそうだな....)


俺は見た目のままにそう思う。


「エルダードワーフ‥‥S級のコザックだ ”ふん”」


鼻息荒く紹介されずとも不貞腐ふてくされ気味に‥‥

自分の名前を言うコザックだった。


ドワーフの上位種でエルダードワーフが治める国‥‥『ゴマ』。

オドリュー海に面していて『ミスリル鉱山』が多数ある。

『ゴマ』という国は国営事業にしているミスリルの採掘で発展していた。

『メデルザード』『マヌエル』『フィルテリア』に挟まれているため‥‥

 国境付近で新たな鉱山が見つかると‥‥

たまに小競り合いが起きるそうだ。


ドワーフは冒険者になる者が少ない。

なぜなら‥‥ 受け継がれた『建築・鍛治・酒造り』があるからだ。


(多分... 奴は次男か.... 三男だ...)


俺はそう思った。

家を継げない者は冒険者になる者が多い。

コザックは見た目が〝塊〟でも『S級』なのだ。

かなりの強者つわものだろう。

〝「舐めてかかると痛い目を見るぞ」〟と言わんばかりに‥‥

目をこちらに向け〝ギョロッ”とさせていた。


(この鎧の塊は‥‥かなり面倒臭そうだな)


そんな事考えていた俺は会議に集中出来ないでいた‥‥


その右隣には‥‥グレーのセクシーのブラとハイレグパンツ‥‥

長い淡い緑色の髪を美しく編み込み束ねている。

長い耳は種族の特徴。美しい切長の目と整った眉は髪の色と同じ。

瞳の色と唇は淡い灰緑色で‥‥ 彫刻のような顔立ちの美形。

耳飾りも蒼いピアスのようなものをつけていた。

スレンダーながらも胸は大きめだが‥‥そこまで大きさは目立たない。

均整の取れたスタイルだからなのだろう。

黒の編みタイツにガーターブーツ‥‥

白い肌が更にその魅力をかもしていた。

立派な弓を椅子の背もたれに掛けて‥‥足元には矢筒が置いてある。


(ハイエルフが独特なのか?...変わった衣装なんだが....

 ハイエルフはみんな『裸族』なのか?....)


俺は顔に血が昇る。


「ハイエルフが治める森『マヌエル』から

派遣してもらった S級のシンディー・ロア!!」


顔の表情を緩め‥‥ 

少しおだてるように言うハンニバルだった。


「よろしく」


見た目と違って紹介されたロアが‥‥

優雅に男性貴族の会釈をして応えてみせた。


( ◯塚歌劇団の◯組のトップスターみたいだ...)


俺はそう思いなんだか可笑おかしくて

下を向いて『△テント△』を張ってないか確認しながら‥‥

笑いをこらえる。


『マヌエル』の森‥‥ 国として大陸中が認めていた。

『メデルザード王国』『ゴマ』『フィルテリア』『カイド』と‥‥

4つの国に囲まれているハイエルフとエルフ族が治める森林山岳地帯。

森の中には族長制度のエルフの里や村がいくつか点在している。

主に『狩猟・薬』でエルフの民達は生活の基盤を築く。

特に【世界樹の葉】は貴重で薬の材料として珍重されかなり高価で‥‥

有名な薬の【エルフの涙】は族長しか生成方法を知らないらしい。

彼らは保有魔力も大きく魔法を得意とする種族なのだが‥‥

冒険者になるエルフの者に『魔導士』系や『狩人』が多いのは

上級の【多重魔法】や【独特の魔法】も使えるのがその理由。

『医薬師』になる者もまれにいるらしい。

長寿な上に他の種族を少しだけ下に見ているエルフの民達。    

なかなか一筋縄ではいかない種族なのだ。

そんな彼らだが 族長の言うことは絶対らしい。

エルフの里の族長が『ギルド支部長』という肩書きなのだ。


そんなハイエルフの正面には俺が座っていた。

『アドリア公国』から俺は派遣されている‥‥

ツルツル頭が”ホレ”っと俺に目で合図してきた。


(えー?‥‥自己紹介?‥‥嫌なんだけど‥‥

喋るのは苦手だし‥‥頬に傷もあるし‥‥

見た目は強面だし‥‥人は 見かけに寄らないのよ‥‥)


「ア・アデュリアの〜ゴクテューだ。よろひゅく頼みゅ」


”ハッ”やってしまった‥‥


考え事してたら声が裏返って‥‥

それも咬み咬みの早口で言ってしまった。


人族には『S級』が少ないのだ。  

俺は知られている冒険者‥‥集められた『S級』の冒険者達から‥‥

〝「こんな男が??」〟と思われたようで視線を集めてしまった。


恥ずかしくなって顔に血が昇る‥‥俺は顔を下へ向けた。

 

(ツルツルが言わせるからだ...やらかした...

 穴があったら入りたい...  ズッポリ .... 妻よ... )


妻を想って ”ムフッ” 。 

更に会議室で『△△』も張る俺だった。


(今はそんなことを考えてる場合では‥‥ ないんだぞ‥‥)


俺はこうも考えた‥‥


(ヒドラ討伐隊の参加‥‥ 俺は外してもらってもいいですか?‥‥)


仕方なく〝召集〟される俺だった‥‥




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