第15話 最強であるために

「へくちっ……風邪か?」


 突然くしゃみが出て、俺はそう呟く。


「まあいっか……さて、行くかダンジョン」


 夕方、俺はダンジョンの前に立っていた。

 長い髪をポニーテールにして、服装は動きやすいパーカーショートパンツ装備。

 あと靴はスニーカーを履いている。


 大太刀を背負っているというそのただ一点を除けば、見た目だけならラフな格好をした中学生女子……みたいな感じだろう。たぶん。


「……今日は配信は休みでいいか」


 そう言って俺はSNSに今日はお休みと書き込んで、ダンジョンへと入って行く。


 今日やることはただの修練だ。


「……別に配信しても面白くない、嫌、通常の配信とそう変わらないか」


 そう思いながらダンジョンを潜っていくと、最初の関門である第一層のボス部屋が見えて来た。


「さて、やり合いますかね」


そう言って俺は第一層の主を一撃で切り殺した。


「……弱い」


 そう言いながら潜る。


「……邪魔だな」


 ダンジョン内で襲い来る魔物たち。

 それを俺は一撃で仕留める。


「これじゃ、まったく修練にならないよ」


 全てを一撃のもとに仕留めていると、目の前にモンスターの群れが現れた。

 ★2の魔物、ゴブリンの群れだ。


「……はぁっ!」


 無論★2の魔物が束になろうが、俺にとっては問題ない。


 俺の剣術は多数の魔物との闘いには不向きだ。

 理由は単純、刀を上段から1の字を描くように縦に振り下ろすからだ。


 これは単純に攻撃力上げる為であり、無論そんな剣線であるため単体特化の剣術となっている。


 そう、そんな単体特化の剣術だからこそ、俺は多対一の戦いが苦手だと思われがちだが……


「……はぁっ」


 複数のゴブリンをまとめて叩き切った、その一秒後、俺の剣線から逃れたゴブリンが殴り潰されたかのようにしてミンチになり、肉片となってそして、塵と化した。


 衝撃派。


 一撃の重さを重視することで、俺の剣術は周りに対しての衝撃を伴うようになった。


 この衝撃波は、深層の魔物であっても大ダメージを負わせることができるほど強力だ。


 無論、そんなバカげた威力の衝撃派だから、下層の★2程度の魔物であるゴブリンはミンチになり……そして、肉片として吹っ飛んでいくのは当然なのだ。


「次」


 俺は刀を仕舞うと、次の魔物を探して深く深く潜っていく。


「……もっとだ、もっと強い敵が欲しい」


 別に俺は戦闘狂ではない……はずだ。

 平和主義の、目立ちたがり屋。


 それが俺だ。


「目立つために、強くあるため」


 もっと強い敵と戦って、俺の糧としなければならない。


 俺にはレベルが無い。

 スキルも無い。


 あるのはこの身一つだけ。


 それも既にこの身体はおそらく生物としての成長はしない。

 衰えることはあろうと、いくら筋トレをしたって、いくら走ったって、これ以上成長することはないのだ。


『だから、こそ人間として……野生の中で人間が得た技』


 知識、技術。

 

『人間が失った、野性の能力』


 直感、本能。


 これは、強いものと戦ってより洗練される。

 

 だからこそ求めるのだ、強気者を。

 全ては俺が、最強であるために……

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