第14話 花坂モモ

 私、如月 琴葉は病室へと駆け込んだ。


「恵⁉」

「あ、お姉ちゃんおはよ」


 駆け込んだ私を、病室の主は笑顔で迎え入れた。

 桃髪の彼女は、体中に包帯を巻き、手首には管が繋がれている。


「ッ……まったくっ、この馬鹿!みんなどれだけ心配したと思ってるの!」


 思わずそう叫び、私は妹……如月 恵、ダンチューバ―花坂モモを抱きしめた。


「お姉ちゃん、痛いって」

「ふんっ、お仕置き」


 そう言ってもっと強めに抱きしめる。

 

 あの日、恵が配信中に行方不明になったと連絡が来たのは突然だった。

 なんでも、配信中にダンジョンで★10魔物に襲われてしまい、仲間を逃がすために一人残ったのだと。

 

 探索者じゃない私でもいや、探索者じゃないからこそわかる。

 生存は絶望的だと。


 けど、まだ恵が生きてるって信じて居たかった。生きているはずだと……そう思っていた。


 私も、両親も……おじいちゃんおばあちゃんも、皆がみんな自分も恵みを探しに行きたかった。

 祈ることしかできない自分が力ないとどれだけ惨めになったか。


 あの日、”白髪の探索者の少女”に助けられ病院に恵が運び込まれたと聞いた時どれだけホッとした事か……

 まあその後、意識戻らないってなってまた一悶着あったけどそれでも、ダンジョンで生死不明だった時よりもずっとましだった。


「本当に良かった……」

「お姉ちゃん……」


 命が助かってまた会えた。

 死んだだろうと思ってた妹に会うことができた。


「うわーん!いぎででよがだよぉ˝ーー!」

「お姉ちゃん⁉」


 思わず子供みたいに泣いてしまう。


 本当、妹を助けてくれた探索者の”白髪の探索者の少女”には感謝してもしきれない。


 まあ、その子は恵を送り届けた後、そのまますぐにいなくなっちゃって助けた人には私たち家族はまだ会えてないけど……

 

 何時かあってお礼を言いたい。

 だから……


 ……さっき会った子、白髪で探索者してるって言ってた。

 

 さっき、私は常人ならざる動きをする少女を見かけた。

 最初はぎょっとしたけど、よくよく見たら恵みを助けた探索者の特徴と一致していた。


 白髪で、まだ幼い少女。


 だからさっき私は思わず声をかけて聞いてしまったのだ




 ”探索者なのか?”と。





 ……そして彼女は「はい」と肯定した。

 白髪で冒険者をしている少女というのは少ない……と思う。

 しかも恵が助けられたのはここから近い場所のダンジョン。


 いろいろと特徴が当てはまってる。 


 だからきっと……と思ってしまうのだ。


「ねえ、お姉ちゃん……」

「な˝ーに˝ー?」

「私、もう一回ダンジョンに行こうと思うんだ」


 そう恵がいい、私は少しの間呆気にとられた。


「何言ってるの⁉死にかけたんだよ⁉」

「流石にダンジョンには潜らないよ、だって怖いもん……」


 そう言って恵は肩を震わせていた。

 死にかけたんだから当然だろう。

 というか流石に潜ろうとしたら私も親も止める。

 だけど、ダンジョンに潜らないのなら……


「じゃあなんで……」

「だって、気になるの」


 そう言って恵は壁にかけられた羽織を見た。


「いったいどんな子なんだろう……って」

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