第4話
光と影。それはまさしく今の世界と彼らを表すだろう。
数え切れないほどの小さな光。一つ一つは頼らなくとも、群れを成せば小さな魚が巨大な魚に見紛うのと同じように光の柱となる。
そして、その数が多ければ多いほど空で燦然と輝く太陽が没した夜であっても、暗闇を跳ね除ける烈光と化す。
その造られた光輝を高みから忌々しげに一望する人影があった。
「今の世は偽りばかりだ……いよいよだ。いよいよ真実を晒す時だ」
陰に潜み、人の陰に生きる者達。現代社会においてはファンタジーな存在とされ、存在を認知されることを許されない者達。
世界の歪みを正すために邪霊と戦う空海のような術者達とは違い、自身の存在を認めさせる為に彼らは今日に至るまで陰に生きて力をつけてきた。
その頭領こそ、大自然を切り崩してまで大都会を築き上げた赤き鋼の塔の頂上から見下ろす一人の男。闇に紛れるための黒装束に身を包んでおり、僅かな仕草や吐息までもが洗練されている。達人はほんの些細な動きでも凡人とは比べ物にならない。彼はまさにその典型だった。
夜空の端々と同じように地上で輝く無数の光。それは闇を生きる彼にとってはこの上なく目障りな者でしかなかった。
「……
胡座をかき、片膝を立てる常世の背後に姿を現すのは濡羽色の長髪を頭の後ろで結った美女。その容貌は息を吐くことすら忘れるほどのものであったが、能面のように表情は削ぎ落とされている。
彼女がそこに現れる前に気付いていた常世は一切驚くことはない。気配は完全に闇に溶け込んでいたが、常人離れした感覚を欺くことはできなかったのだ。常世は振り返ることさえせずに宣言した。
それは現代に生きる術者達への宣戦布告であり、彼らへの叛逆でもあった。
「そうか……なら始めるとしよう。我ら粛清部隊を筆頭に、この世界を陰で覆う。
「御意」
冷静、かつ冷淡に常世は告げた。世界を転覆する宣言を。
郭公はそんな彼の姿を見つめ、熱い吐息を漏らしながら返事を返す。その目は明らかに正気を逸しており、自身に向けられる感情の熱量は生半可なものではない。
だが、どうでも良かった。自身の身さえ捧げれば手を貸す年上の女は雑に扱いやすい。その程度の感想しかなかった。
(まずは手始めに我らを闇へ縛り付けてきた上役共を皆殺しにするとしよう)
常世は口角を上げ、くつくつと喉を鳴らした。
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