第31話 借金返済

Side:友達に騙されて借金した男


 ポイントカードが普通に暮らして行くだけで光る。

 僕って良い奴。

 お人好しなのかな。


 ファンファーレが鳴った。

 ベイスさんに報せないと。

 ギルドに伝言したら、ベイスさんはすぐにやって来た。


「でかした」

「それでどうしたら、魔道具百貨店の店長に会って望みを告げるだけだ。お前は友達に騙されまくってたな」

「ええ」

「なら、契約の魔道具を願え。その魔道具を使うと契約を裏切れないような奴だ。心配するな。借金とチャラでその魔道具は俺が貰うが、お前が必要になった時は貸してやる。僅かな使用料は取るが」

「借金がチャラになるだけで嬉しいです」


 シナグル魔道具百貨店に飛ぶ。


「ポイントが溜まりました」

「ではこちらにどうぞ」


 奥へ案内された。

 前掛けをした店長が出て来た。


「望みはなんだ?」

「もう騙されたくないから、契約の魔道具を下さい」

「本心のようだな」


 ペン型の魔道具を作ってもらった。


「ベイスさん、上手くいきました」

「おう、貸してみろ。よし、契約の魔道具は何時でもお前に銀貨1枚で貸す。これで良い」


 ベイスさんはなんて律義な人なんだ。

 善人金貸しと呼ばれているだけはあるな。

 今度からお金の話が友達から出たらベイスさんを頼ろう。


Side:医療費が嵩んで借金した女


 ベイスさんに借金を肩代わりしてもらって良かったわ。

 体を売る仕事をしろと言われたら自殺してたかも知れない。


 母の病気はまだよくならない。

 でも希望はある。

 ポイントカードよ。

 これのポイントを溜めると願いを叶えて貰える。

 善行は医者の手伝いをしたわ。


 母の治療費が払えないから仕方ない。

 医者の手伝いをしているとポイントがどんどん溜まる。


 この医者腕がそれほど良くない。

 でも普通の平民が掛かる医者として腕が良い方ね。

 母をもっと良い医者に診せてやりたいけど、お金がない。


 そしてファンファーレが鳴った。

 ベイスさんに報せる。

 裏切ったらたぶん借金を取り立てられる。

 奴隷落ちが怖い。


「ファンファーレ鳴りました」

「よし、望みはなんだ」

「母の病気が治ることです」

「なら、病気治療の魔道具を願うんだな。その魔道具は俺が貰うが、約束通り借金はチャラだ。心配は要らない。お前の母さんの病気は治す。銀貨1枚でな。貧乏人は銀貨1枚、金持ちは金貨10枚。宣伝してくれるとありがたい」

「医者の所で働いていたので患者と伝手があります」

「いいねぇ。紹介料は1割払う」

「はい」


 シナグル魔道具百貨店に来て、ファンファーレが鳴ったと店員に告げる。

 奥へ通された。


「望みは?」

「病気治療の魔道具です」

「それなら簡単だ」


 十字架型の魔道具を貰った。


「よし、まずは母親からだ」


 母はあっけなく治った。

 だけど、医者の手伝いはやめない。

 ベイスさんに紹介するって決めたから。

 それに金持ちを紹介したら金貨1枚が手に入る。

 もうやるしかないでしょう。


Side:ギャンブルで借金した男


 ついてないのが悪い。

 ギャンブルは悪くない。

 全てはツキのせいだ。

 人よりツキがあれば、ギャンブルするたびに金が貯まっていくはずだ。

 ツキさえあれば。

 借金が嵩んでもう、金はない。

 ブラックリストに載ってどこも金を俺には貸さない。


 大人しく善行を積むことにした。

 選んだ仕事は賭場帰りに自殺しそうな奴を説得すること。


 自殺を止めると大抵の奴は泣く。

 死にたくないと。

 ベイスさんを紹介すると、ベイスさんはそいつらにも金を貸した。


 賭場で大勝負する奴はギャンブル好きという訳でもない奴が多い。

 仕事で失敗して穴埋めにとか、薬代をねん出するためとか。

 俺みたいに救いようがないギャンブル好きは多くない。

 いたとしても自殺はしない。

 犯罪に走ってもギャンブルをやり続ける。


 自殺者を救うのは善行ポイントが高いのか。

 8人救っただけでファンファーレが鳴った。

 ツキが戻ってきたかな。

 ギャンブルしたくてうずうずする。


 俺が欲しい魔道具は決まっている。

 幸運の魔道具だ。


 シナグル魔道具百貨店で幸運の魔道具を貰う。


「もらってきたな。最初に一回だけ使っても良いぞ。その後は借金チャラで貰うが」

「たまには使わせてくれよ」

「気が向いたらな」


 手の平より大きいコイン型の魔道具を使うと、何だがどんな勝負にも勝てる気がしてきた。

 ベイスさんに金貨1枚を貰う。

 そして賭場で賭けまくった。

 どんどん増えていくお金。

 うひょうこれだよ。

 これだからギャンブルはやめられない。


 賭場からの帰り、俺は男達に囲まれた。


「金が目当てか?」

「勝ち過ぎたんだよ。面目を潰されたから命も取れとの仰せだ」

「くそっ」


「【恫喝】止まれ!」


 ベイスさんのスキルで男達の動きが止まる。


「ベイスさん」

「金貨の袋を寄越せ。収納魔道具に入れてやる」


 そして、ベイスさんと走った。


「ありがとうございます」

「感謝する必要はないぞ。お前の命はさっき貰った金貨の袋と、プラス金貨100枚でチャラだ」

「そんな」

「俺は悪党だからよ。すまんな」


 俺はそのあと義賊王の決死隊に入れられた。

 そして、もうギャンブルなんてどうでもよくなった。

 毎日が生きるか死ぬかのギャンブル。

 最高にたぎるぜ。

 掛け金は命。

 こんなギャンブルは最高だ。

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