第29話 善人金貸し
Side:ベイス
シナグルが魔道具百貨店を開店したので駆け付けた。
店のサービスは隅々まで把握した。
投資した身としてはこれぐらいやらないと。
俺は間抜けじゃない。
ポイントカードは流行ると確信。
俺の商売の勘がそう言っている。
それに他で真似しようにもできないだろうな。
せいぜい、紙にスタンプを押すぐらいが関の山。
そんなんじゃ勝負にはならない。
シナグルのひとり勝ちだな。
シナグルの腕なら放って置いても、投資した額の何倍にもなるんだろうがな。
だが、悪党である俺は骨の髄までしゃぶる。
この店を利用して儲けてやる。
くっくっくっ、さてね。
「おい、お前、金がないと言ったな」
借金で首が回らなくなった奴を訪ねた。
もう、ブラックリストに載っていて金を貸す奴はいない。
俺以外にはな。
「はい。よそからも借金してもう奴隷落ち寸前です」
「俺はよ、善人金貸しのベイスだ」
「知ってます」
「他から借りた額を全部俺が肩代わりしてやろう。ただし条件がある」
「何でもやります」
「じゃあ、祈れ。借金を返せる魔道具が欲しいってな」
「借金が返せる魔道具が欲しい! ほへっ、扉が現れました」
「合格だ。扉を潜って先に行ってろ」
俺はカモの肩を叩いた。
シナグル魔道具百貨店で合流した。
「ポイントカードは貰ったか」
「もらいました」
「お前、ここの魔道具を転売しろ。儲けを出すんだぞ。失敗したら奴隷落ちだ。貧乏人には安く売ってやるといい。損しないほどにな。とにかく良い事をしろ」
「はい」
「感謝されたら、ポイントカードが光る。ファンファーレが鳴ったら報せろ。そこで俺が知恵を貸してやる。上手く行けば借金がチャラだ」
「チャラ? 本当に?」
「善人金貸しの名前に懸けて誓うよ。転売は一気にやるなよ。コツコツとやれ。なに利息は待ってやる。焦ることはない」
「利息を待ってくれるなんて本当に善人だ」
俺のポイントカードが光った。
くくく、カモを手の平で転がして、感謝を得る。
それに転売させればこの店の売り上げが上がる。
まあ、魔道具を売り歩くのは大変だろうな。
店が無いんだから、行商しかない。
行商は信用がない。
だから、かなり厳しいはずだ。
次のカモを見つけよう。
みんな必死に祈るのか扉の発現率は高い。
大体8割か。
ポイントカードの防御機能は凄い。
カモが街の行商は駄目だって村におっかなびっくり行ったら、盗賊もモンスターもみんな気絶だ。
賞金を貰えるし、村から感謝されたりして、行商が上手く行く奴が多数でた。
嬉しい誤算だ。
ふはは、カモ達が稼いでくれるおかげで金がジャンジャン入って来る。
カモ達よ、早くポイントを稼いで、シナグルに魔道具を作ってもらって俺に貢げ。
さて次のカモは。
「よう、借金で首が回らないんだって」
「ええ」
「奴隷落ち寸前なんだろう」
「聞いて下さい。友達に保証人になって欲しいと言われて謝礼に目が眩んでサインしたら、借金を背負うことになりました」
「その友達は酷い奴だな。俺は酷くないぞ。善人金貸しのベイスだ」
祈らせていつものコース。
「ありがとうございました」
「友達が何か話を持って来たら報せろ」
「はい、必ず」
そして、しばらくして、そいつが別の友達に投資を勧められたと言って来た。
話し合いの場に俺も同席する。
「絶対に儲かるんだよ。特別に今だけ。今申し込まないと、締めきっちゃう」
「おう、ならお前がやれよ。そうだな俺が金を貸してやるから、借用書を書け」
「めんどくさいけど、それで良いよ」
詐欺師のカモに借用書を書かせた。
たぶん踏み倒すつもりなんだろうがな。
案の定、利息を貰いに行ったら消えていた。
「よう、ブルータ。詐欺師が逃げた」
森で野営中のブルータに会いに行った。
ブルータは義賊王。
悪人を捕まえて、決死隊に仕立て上げるのを生きがいにしている男だ。
ブルータから逃げられる悪人はいない。
「ほう。これは善人にしてやらないとな」
「くっくっくっ、金は借りたら返さないとな」
ブルータはポイントを溜めて、シナグルに召喚の魔道具を貰った。
召喚の魔道具で何をするかと言えば逃げた悪人を捕まるためだ。
盗賊を狩っていると逃げるのは良くあること。
何人か生きて捕まえたら、そいつらを善人にして、逃げた仲間を召喚する。
上手い手だ。
召喚の魔道具は絨毯型だ。
核石に手を置いて魔道具を起動する。
来い詐欺師。
「へっ、ここは」
状況が把握できない詐欺師。
「返済日だ」
「俺を拉致したのか?」
詐欺師が逃げ出すが、ブルータが簡単に取り押さえた。
ブルータはSランク冒険者の実力があるらしい。
彼から逃げられる悪人は本当にいない。
「借金を返したら帰って貰っても構わない」
「くっ、金はない」
「ブルータ」
「おう、善人になっちまえ」
ブルータが十字架型の魔道具を使う。
「はぅ、俺は今までなんてことを」
「ブルータの所でモンスター狩りをさせてやってくれ。借金は返せよ。そうそう、詐欺仲間がいるだろう。全員の名前と居所を吐け。情報料として金貨1枚払ってやる」
「くっ、喋りたくない。でも胸の痛みが」
詐欺師仲間のリストができた。
さあ、金庫番を捕まえて、被害者にいくらか返してやろう。
俺は取り戻しの依頼料と感謝の気持ちを貰う。
召喚の魔道具を使う条件は本人に会ったことがあるかどうかだ。
これから詐欺師仲間に会いに行くぞ。
そして、召喚して捕まえてやる。
くっくっくっ、待ってろよ。
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