第23話 親切の連鎖
Side:クラリッサ
シナグル先生は不可能を可能にする人。
どうやったら先生みたいにポンポンと新しい歌が作れるんですかと聞いたら、一度死んだからかなと言っていた。
だけど、お前達は真似するなよとも言っていた。
死ぬような目に遭って覚醒したのね。
そういう話はよく聞く。
それで強力なスキルに目覚めるのよ。
小説みたいだけど、そういう事例がいくつもある。
私もポイントカードを貰った。
秘密だけどなと言って先生は善行を積むとポイントが早く溜まるぞと教えてくれた。
ポイントを溜めると先生が好きな魔道具を作ってくれるらしい。
私は覚醒の魔道具をお願いしよう。
善行を積むってどうやるのか考えたことがないのに気づく。
もちろん老人や子供が困っていたら手を差し伸べるぐらいのことは普通にやってきた。
でも意識してみんなのためにと行動したことはない。
それにポイントが欲しいから親切をするというのは間違っている。
そんな気がした。
でも、ポイントのためじゃなく何かやるのは良い事かも。
長く続けられるものが良い。
できれば親切の連鎖が起こるような活動。
「お小遣いあげる」
子供にそう言ってみた。
「本当?」
「ただ、お小遣いが嬉しかったら、3人の誰かに親切にするのよ。でその人に言うのよ。お礼は要らない。3人の誰かに親切にしてと」
これは先生に聞いた話だ。
こうやって世界規模の親切の輪ができたらしい。
この国では聞いたことがないから、他所の国の話よね。
でも良い知恵だわ。
やさしさの輪が広がる。
それから、私のポイントカードは何回も光り。
その光の間隔は短くなっていった。
僅かな光だけど。
シナグル魔道具百貨店の建設は進んでる。
今日はあいにくの空模様。
急に雨が降り出した。
駆け出して雨宿り。
見知らぬ女性からタオルを差し出された。
「使って、礼は要らないわ。その代わり3人の人に親切を返して」
「ええ、絶対に返すわ」
私の運動が思いもかけない所で巡り巡ってきた。
雨がやみ、空同様、私の心は晴れ渡っている。
その時にファンファーレが鳴った。
「先生、ポイントが溜まりました」
「おめでとう。で何をしてほしい」
「スキル覚醒の魔道具が欲しいです」
「作るのは良いが、ひとりで何度も使える物じゃないぞ。スキルの枠は増やせられないからな」
「いいんです。モニュメントを作って、その魔道具を埋め込みます。誰にでも使えるようにして、スキル覚醒が嬉しかったらお礼として誰が3人に親切にしてあげること。その時に礼は要らない、その代わり3人の人に親切を返してと伝えることと刻もうと思います」
「あの話、覚えていたのか」
「ええ、それを実践したらポイントが溜まったんです」
「親切は巡るって話だったな」
「はい、親切が巡って私の下へ戻ってきました。それでさらに親切の循環をしようかなと」
「ラララ♪ラーララー♪ララ♪ララーララ♪ララーララ♪、ララー♪ララーラー♪ララー♪ラーララー♪ラ♪ラーラ♪ララ♪ラーラ♪ラーラーラ♪。ほらできたぞ」
「設置場所はどうしましょう」
「シナグル魔道具百貨店の前は辞めてくれ。ただでさえ、ポイントカードで転移してきて混みそうだ」
「では魔道具神の祠を作ってそこに設置します」
祠はシナグル魔道具百貨店から歩いて10分の所に建てられた。
シナグル先生が祠を見に来て、神像を2体に増やした。
魔道具神は男神で、核石を右手に、左手に溜石を手に持っていて、それが導線で結ばれている。
もう1体は、右足で蛇を踏みつけにしていた。
スキル神なら手に杯を持っているはず。
増えた神様は誰?
先生は笑って答えてくれなかった。
訳ありの神様かな。
もう正体不明のもう一体の神像を設置したら、ポイントカードが眩く光った。
えっと、ポイントカードの神様。
きっとそうね。
この女神様は、ポイントカードの神だと思っておきましょう。
魔道具神と恋人なのかな。
きっとそうね。
私も先生と結ばれたい。
ポイントカードの神に祈りを捧げた。
でもライバルは手ごわい。
ソルさんとマギナさんは凄腕だし、スイータリアちゃんは可愛い。
ピュアンナさんは大人の色気だし、マニーマインさんは幼馴染と聞いている。
師弟愛ってどうなのですかとシナグル先生には恐ろしくて聞けない。
グレタも先生のことが好きだと言っていた。
店を立派に切り盛りしてできる女を目指すらしい。
私はどうするべきか。
幸い、スキル覚醒のモニュメントを設置してからポイントカードのファンファーレが3回鳴った。
3つ魔道具を作ってくれるのよね。
どうしましょうか。
ライバルに食い込む一手。
3つの親切運動でポイント稼ぎは好調。
この運動で親切している人はポイントカードを持ってない。
普及させるにはどうしたら。
看板を設置しましょうか。
魔道具を埋め込んで、それを起動させると音楽が鳴るみたいな。
「先生、3回分溜まりました。看板を3つ作って下さい。音と光が出る奴が良いですね」
「そんなことで良いのか」
「ええ、3つの親切運動は反則ですから。これからもポイントが溜まったら看板を立てる予定です」
3つの親切は先生の知恵私がその恩恵に与るのはきっとよくない。
軽蔑されたりはしないでしょうけど、私利私欲に使っては駄目。
好感度が下がる。
これで少しはアピールできたかな。
できていたら嬉しい。
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