第38話 千載二遇(3)
「とりあえず、近くの交番に行こう。」
というジェットの提案もそっちのけで
「私は先に現場に行く。音季、住所を教えて。手がかりがあるはず。二人はあすみと合流して警察に行って。」
と空港に着くと同時に、お京は走り出してしまった。
そんなに都合よく、今日、あの曲がり角に居るとも
限らないし。何より危険な気がする。
わたしとジェットは顔を見合わせた。
彼女の意図することはわかる。
わたしの大切な人の命を奪った男の事が、
許せないんだろう。
お京は昔からそう。
わたしに恩を返そう返そうと必死になる。
いつもわたしに害をなす人から守ってくれた。
悪を許さない強い人なんだ。
子猫のギンを病院に連れていってくれていたあすみちゃんに連絡を取ると、駅近くのイートインで待っているらしい。
事情はともかく、事故現場へ向かうお京の元へ行ってもらって合流することにした。
サウナのような8月の暑熱が大地に染み込む。
「お京、大丈夫かな」
「まぁ気持ちはわかるけどね。京坂氏、特に君のこととなると人が変わっちゃうから。」
火にかけたフライパンのようなアスファルトの上を、わたしたちは急いだ。
駅直結の交番に到着。
扉を開けると、冷房の涼しい風が服の隙間から入り込む。
前髪から汗のしずくが一粒落ちる。
息を整えて、おまわりさんに声をかけようとしたそのとき。
見覚えのある金髪のチャラチャラした若い男と目があった。
「あれあれぇ?誰かと思えば鮫川さんじゃないすか!ヤダな〜!汗だくじゃないっすかぁ(笑)!
もしかしてこっちでも取材?ほんと、勘弁してくださいよ〜!」
一瞬で冷凍庫に入ったみたいに背筋が凍った。
先日の取材の記憶がフラッシュバックする。
紛れもなく、あの占い師が
何故か警官の服を着て、机に頬杖をついていた。
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