第4話 千載一遇(4)
祝日と言えど、当たり屋業界はこんな朝早くから仕事なのだ。
取材ができなかったので、脳内で当たり屋に転職してわたしはシミュレーションをしてみる。
いい感じの曲がり角を探し、計画を練る。
フェイクのスマホを用意して曲がり角でターゲットを待つ。
ターゲットとの距離はおそらくカーブミラーで確認。そしていざ、タイミングを見計らってぶつかる。これが多分醍醐味。
ぶつかる練習とかもやるのかもしれない。
家で。独りで。
あとは弱々しい演技で相手の良心を揺さぶる。
軟弱そうなターゲットには強気で脅すのもまた良し。ここは経験と感覚次第。名演技の見せ所だ。
そして家に帰り、ズルい顔で諭吉を数えたりする。
『今日のタックルは80点♪』とか言いながら。
ITリテラシーが叫ばれてから久しいが、令和が2桁に突入しても尚、不特定多数に送られる迷惑メールや詐欺に引っかかるお年寄りが存在する。
任侠映画の如く、札束やクスリが入った銀色のアタッシュケース(ジュラルミンケースというらしい)を港で取引する時代錯誤の輩もやはり未だに生き残っているらしい。
侍の時代もロボットの時代も
いつの世も悪は絶えない。
【公序良俗に反することで成立する仕事もある】
いずれにせよ、街中に監視カメラが這いつくばる現代、あえてダークサイドに忍ぶ業界も大変だろう。と少し同情する。
「三文芝居ってやつか…。」
ヒーローの決め台詞のようにわたしは呟く。
まあ、でも。
早起きは三文の徳、なんて。
どうやらほんの少し本当らしい。
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