み空
野酸実
雲に伸ばした腕はクロール。
地べたから見る空さえも海でした。雲に伸ばした腕はクロール。
陽射しまで水に焦がれるかの如き暑さに喘ぎボタンを外す。
炎昼のコンクリートは焼けついて素足の僕ら跳躍選手。
深い青湛えた夏の天井は見上げた僕をミニチュアにする。
窓を開け呼び込む風は陽射し受け燦きながらカーテンと踊る。
反射する黒板が眩しすぎるから横目に窓際の君を見る。
濡れた髪気だるさと心地よい疲れ柑橘系が香る昼前。
天窓に照らされながら頬張るパン雑踏の中ひとつの絵画。
外靴に履き替えながら聞く蝉は眩む熱気を先取り寄越す。
踏切に惜しくも間に合わず電車の通り過ぎるの待つ汗のシャツ。
祭とか行こうと言えば「海がいい」応える顔はまだ生焼けで。
待ち合わせ日陰に立って壁に背を預ける姿やけに涼しげ。
並び立つ道の途中の自販機で桃の香りの水をくれる手。
海見えてきたねと言えばカモメ飛び色彩に見惚れ止む風の音。
波音に誘われ白い砂へ足跡。振り向いた姿と目が合う。
砂粒へ沈みこむ足サンダルと洗われながら潮水涼し。
曇りだす予報外れに次は泳ぎに来るつもりでふたり。
足音をなんとはなしに合わせたら小さく笑う風が愛しい。
海の青瞳に汲んで持ち帰り燦めき一滴零せば眩し。
堂々とした、み空なら、快晴でなくとも間違いなんかじゃなくて。
み空 野酸実 @nodzumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。み空の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます