たぶん生きてる

散篠浦昌

1

夜にまた「生きてる?」と問う友人に「たぶん」と返してそのまま眠る


まだあると思っていたんだ充電も人生全部の残り時間も


もう嫌だ死にたい死にたい死にたくない うるさい何も言うなよ幻聴


手足とかに血流が行ってないだけ あたたまったらきっと大丈夫


泣きそうでインスタントな救いを再生 Bluetoothが囁く「だいすき」


お前が悪いお前がお前がお前が 反響する棘だいなしの夢


死にそうな思いもしたことないひとは死にたいとすら言っちゃだめなの?


朝が来る 眠れないまま朝が来る 五時になったら殺してください


C4の虫歯にティッシュを詰めている 生きていくとはそういうことです


いつだって僕だけ死んでて空はきれい 群青色を横切る鳶


端の席ちぢまり揺られる仮想感 せめて小柄でうまれたかった


進行中事故防止のため急ブレーキされたらそのまま側転したい


教科書は教えてくれないあんなこと もう捨てたから確かめられない


主語ばかり大きくなってく悩みたち 観察日記は忘れてました


可能とはきっと叶うと思うことドブに捨ててた自己効力感


電車道敷かれたレールを歩く旅 理想が僕らを轢き殺す街


ハッカ味だけが詰まったカンカンの世界はドロップアウトを知らない


未来って左右対称でムカつくし叩き壊して海に捨てよう


へばりつく床の汚れや虫の死骸 車内お忘れ物ご注意下さい


僕があの電車に乗るための一欠片希望と死とは同義語だから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たぶん生きてる 散篠浦昌 @Chirasino_urms

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画