海よりの

@yukihanabun6776

第1話

夏はなぜいつも記憶の引き出しの一番上にあるのだらうか

砂時計砂をこぼしてゆくごとく時間を灰にしてゆく蚊遣かやり

八月の夜のプールのつめたさよ水の中にはもう夏はなく

戦争の昭和今ではレトロとて固きプリンをおみなごの

点と線ゼロの焦点鉛もて沈みゆくやうな重き時代の

山鳩はいつの時代も暗く鳴く暗く愚直に土のいろして

月まではあんなに遠い風船は誰もとどかず球場に堕つ

額縁の平成 額縁のやうなメガネ あまたの脳に眠れる今も

何者で使命は何とあらかじめ知らされてよりれたきものを

つばめつばめはやく南へお帰りよ「王子とツバメ」は悲しすぎるよ

雪明りハンメルンの笛ののやうに外へでよと白く誘へり

空へ空へ どうすることもできぬことがあると知った日 風船 空へ

ぶらんこに体がふはり浮くときのこぶしの鎖のみが頼りで

しらさぎの首のするどく動くときしき青田のはつかざはめく

コンビニの駐車場を駆くるセキレイの土よりアスファルトの似合ふその足

洗車場真夏も真冬も愛すべき愛車バカたちが愛車を磨く

改札をづれば独り独りなり今日をねぎらふ大き夕焼け

目覚むればまだ夜でありいくたびも眠りて覚めて人はれしか

平成が進化し昭和を取り入れてカオスの令和おもしろきかな

夏を惜しみ海を惜しみて人はく海よりれしわれらであれば

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