第5話

 その数日後から、私の体調が変化した。吐き気でほとんどの物が食べられなくなり、動けなくなった。畑の仕事もしたいし、薪拾いにも行きたいのに、何もできなかった。

 そんな私の代わりにルゥは私のしていた仕事すべてをこなしていた。


「おねえさん、むりしちゃだめだよ。おねえさんのおなかのなかにはあたらしいいのちがあるんだからね」

 

 仕事が何もできなくて、泣きながら謝る私に、ルゥは言った。私のお腹を優しく撫でて、頬にキスしてくれた。

 

「おねえさんのかわりにおしごとをするのはぼくにもできるけど、おねえさんのかわりにあかちゃんをうむのはぼくにはできないからね」

 

「ごめんね、私、何も役に立てなくて」

 

「そんなこと、きにしなくていいよ。おねえさんはぼくのこどもをうんでくれるんだから、ぼくがそのぶんがんばらなくちゃ」

 

「でも、ルゥ、私、寝てばっかりで……」

 

「そうだね。あかちゃんをうむのにたいりょくはひつようだから、ちょっとうんどうはしようか。ぼくといっしょにまいにちさんぽにいこう」

 

 そうして、私は毎日ルゥと一緒に出掛けて行った。ルゥが作ってくれるご飯を食べ、私の代わりに仕事をしてくれるルゥに感謝しながら、日々は過ぎて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る