第2話

 クマだった。黒い身体に、首の辺りに白い筋がある……ツキノワグマという種類だと、私の拙い知識が告げていた。

 

「おねえさん、ぼくのうしろにかくれて!」

 

 森でクマに遭遇したことは、何度かある。けれど、これほどの至近距離にいたことはかつてない。これまでは、占いでできるだけ回避してきた。しくじった。ルゥがついているからと、最近占いをサボり過ぎていた。

 

 今にもこちらに手を出してきそうなクマに、命の危険を感じていると、そばにいたルゥは、サッと変身して、オオカミの姿になった。


「グルルルル……!!」

 

 オオカミの姿のルゥが歯をむき出しにして吠えると、ツキノワグマはその姿に恐れをなして逃げて行った。

 突然のことに驚いていると、オオカミの姿のまま、ルゥが私にすり寄ってきた。

 

「え……? オオカミって、クマより強いの?」


 素朴な疑問を口にすると、ルゥは鼻先を私の胸に押し当ててきて、その姿のまま言った。

 

「しぜんのことはよくわかんない。でも、たぶんぼくがおおかみだからだとおもうよ」

 

 ルゥはオオカミの姿でもあるけれど、大神なのだ。神様の一人だけれど、なぜか私を気に入って、ずっとそばにいる。自然界でオオカミ対クマの戦いは見たことがないけれど、さすがに神様と動物なら、神様が勝つということだろうか。

 

「さ、かえろうよ、おねえさん」

 

 いつの間にか人間の少年の姿に戻ったルゥは、私の手を握って、腰を抜かしていた私を立たせた。

 ルゥに導かれるまま、私は家路についた。

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