第15話 妖艶な勇者と人形たち(後編)
マーシャリアン歴
元年の7月4日
新国家・タラーナ・パメラン魔導連合王国、
王都・マーシャリナ(旧中央難民避難所)
午前9時55分頃
僕は前に出た2体の自動人形(オートマトン)を見た。
優男風の自動人形(オートマタ)が大きな槍と盾を持っていた。
黒髪の女性の自動人形が短剣と小型の魔法砲を持っていた。
勇者、アオキ・シェルの顔がヒステリックを起こした後の歪んだ表情をしていた。
それでもその姿が妖艶であり、普通の人間なら彼女(彼?)の魅力の虜になると僕は思った。
「魔王君、君の部下を皆殺しにするよ。ぼくは本当に怒っているよ。許さないよ。」
勇者の目は怒りで光っているように見えた。
「シュー、あのハーフオーガの出来損ないを殺せ。リン、あの淫乱で裏切り者のカン・インムンを殺せ!!」
勇者は再び赤い兜をかぶり、宙に浮き始めた。
結界の外、この元避難所の上で行われている飛行戦艦とチューウェン労働者連邦の人民騎兵団の戦いも気になっていたが、まずはこの情緒不安定な勇者ご一行を片付けないといけないと思った。
「マーシャリ様、私たちあの人形どもを片付ける許可をいただきたい。」
ミラが許可を求めてきた。
「はい、但し、インムン、あの女性型には本来ないはずのものがあるように思える。」
インムンとミラは僕を見た。
「あの女性型人形には感情がある。」
「わかりました、破壊しないように戦います。」
インムンが僕に言ってくれた。
「頼む、インムン。」
「はい、承りました、マーシャリ様。」
「男性型の人形は壊せ、ミラ。」
「承知いたしました、マーシャリ様。」
二人は前に歩き出して、人形2体の前に立った。
「魔王君、ぼくの機嫌を損ねた罪が大きいよ。」
宙に浮いた状態のままの勇者が僕を見下ろしながら言った。
「一方的に攻撃しておいて、よく言うわ、アオキ君、それともアオキちゃん?」
「魔王君、君の部下の始末が終わったら、君を殺すよ。ぼくこそこの世界の唯一神の寵愛を受けた勇者だよ。」
「エリアスの勇者が皆、同じことを言うよ。」
兜していると顔の表情が見えないが、おそらく勇者の妖艶な顔が更に酷く歪んでいたはずと思った。
「シュー、やれ!!」
優男の人形の足に小型のゴム製のタイヤが表れて、猛スピードで動いたと思ったら、ミラを槍で突いた。ミラは持っている大剣で槍の刃を止めた。
優男が片手で槍を振り回し、ミラの頭目掛けで振り下ろした。
ミラは大剣を持ち上げて、また槍の刃を止めた。
優男が機動力を活かし、一瞬のうちにミラの後ろへ回った。背中から串刺しにするように見えた。
ミラが後ろへ振り返らず、片手で剣を回し、また槍を止めた。
「わたしはそう簡単にやられないよ、人形め。」
優男が如何にも嘘の笑顔を浮かべて、盾を投げて、両手で槍を持った。
「なるほど、防御を捨て、攻撃へ特化するのね。」
ミラがほほ笑んだ。
「これで一機にわたしを刺し殺すのね。」
ミラは人形を見た。優男が頷いたように見えた。
優男が目では追えない早い動きでミラへ突撃した。
ミラの両腕がみるみるうちに大きくなり、オーガ特有の薄いみ緑色になった。
彼女が大剣を上段に構えて、猛スピードで刺しにくる人形の体目掛けに思い切り振り下ろした。
人形の槍が折れて、体が左の肩から右の腰辺りまで切断された。
更に優男の頭も首から切断された。
優男風の人形が嘘の笑顔を浮かべたままに停止した。
ミラが転がっている頭を剣で刺して、壊した。
「あまりオーガの力を出したくなったな、薄い緑色は好きじゃないので。」
「色は綺麗だったよ、ミラ。」
僕はミラを褒めた。
ハーフオーガである彼女が一瞬顔を赤らめたが、すぐに普通に戻った。
「ありがとうございます、マーシャリ様。」
僕はインムンが女性型人形と戦っているところへ再び意識を戻した。
インムンは軽い防御魔法で人形の小型魔法砲の攻撃を防いでいた。
「マーシャリ様、そろそろ本気を出して、女性人形を捕獲していいでしょうか?」
インムンが念話で話かけてきた。
「はい、この女性型人形の感情が気になる。」
「承知いたしました。マーシャリ様。」
インムンは呪文を唱え始めた。
彼女の周りに五つの火の玉が現れ、その火の玉から火炎放射器並みの火柱が放射された。
女性人形が放射された火を魔法弾で止めようとしたが、火の勢いが魔法弾より強力だったため、
急いで後ろへ飛んで、火の放射をかわした。
「リン、この役立たず人形め!!」
勇者がヒステリックな怒りを爆発させていた。
「あの淫乱をさっさと殺せ!!ぼくの命令だ!!」
この勇者やシマ・ジュンキチを見て、神の勇者が何故か皆、モラル的、人間的、精神的に何かの欠陥があると僕は思った。
インムンは更に呪文を唱えた。
氷の刃、10本ほど彼女の周りに生成され、人形を目掛けて発射された。
「この淫乱女、シマ・ジュンキチを裏切った女め、報いを受けるがいいよ。」
勇者がヒステリックに叫びながらがリモコンのような装置をベルトから取り出した。
「リン、役立たず、全員を道連れにしろ!!」
勇者、アオキ・シェルがリモコンのボタンを押した。
リンと呼ばれた女性型自動人形(オートマタ)の足からロケットのようなものが生えて、
インムンのいるところまでまっすぐ飛んで、突撃してきた。
「マーシャリ様!!」
「心配するな、インムン。僕はこれを待っていた。」
僕はその時、初めて人形の心の声を聞こえた。
「誰か。。誰か、私を助けて。。。お願い、助けて。」
僕は最近近距離転移魔法の女性型人形の前に現れ、彼女の腹部に手を突っ込み、赤く光っている
魔法爆弾装置を取り出して、外の結界を魔法攻撃し、群がっている一部のチューウェン労働者連邦の人民騎兵団のところへ素早く転送した。
結界の外に大きな爆発が起きて、ワイバーン騎兵約30騎が一瞬のうちに消えた。
「僕は君を助けるよ、リン。」
女性自動人形(オートマタ)にそう告げた後、抱きしめた。
人形が気絶したかのように一時的に機能停止をした。
「インムン、彼女を頼む。」
僕は念話でインムンへ指示を出した。
「承知しました。マーシャリ様。」
インムンが女性型人形を抱きかかえた。
「後でローハンに見てもらう。」
「はい、簡単な時間停止魔法をかけてみます、マーシャリ様。」
「ありがとう、インムン。」
リンの名前が付いている自動人形(オートマタ)をインムンに渡した後、ヒステリックに喚き散らしている勇者のいるところへ赴いた。
「それでは、勇者、アオキ・シェル。危険な君を葬るよ。」
「腐れ魔王め、ぼくは無敵だ!!!」
勇者の後ろに立っていた4頭のワイバーンが地面に倒れ、みるみるうちにミイラ化し始めた。
勇者の力が大幅に増していくのはわかった。
「これがぼくの力だよ、腐れ魔王。」
「どんな力だ?」
「エリアス様から授かった能力(スキル)、腐れ魔王め、【生贄(ウバウモノ)】だよ。」
僕は神エリアスの勇者の方がよほど悪の魔王に見えると思った。
次回:勇者の本性
日本語未修正。
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