第13話 勇者襲来

マーシャリアン歴

元年の7月4日 

新国家・タラーナ・パメラン魔導連合王国、

王都・マーシャリナ(旧中央難民避難所)

午前9時頃


僕はサンノモト列島皇国の使節団が後1時間、本国へ向けて、出発する予定だった。

国交樹立と条約で多忙だった3日間があっという間に過ぎてしまい、少し寂しくなった。

一番驚いたのは帰国した後でも、弥生さんとギモラ・カイラ隊長が個人的に僕と定期的に連絡取りたかったことだった。

昨日の夕方、僕は携帯電話をヒントにローハンに頼んで、魔法を使う通信端末の作成を依頼した。

彼女は2時間で試作品を持ってきてくれた。


「マーシャリ様、どうぞ、試してみてくださいませ。」


「ありがとう、ローハン。」


小さい長方形の洋白とガラスの端末を見て、僕は満足し、原動力となる通信魔法を込めた。

この通信魔法の方式がとっても簡単だった。念話の概念を元に作ったので、すぐ出現可能だった。


いずれにしても弥生さんと念話で話せるようになると思っていたが、種族や人種によって念話を受け付けない者がいる可能性のため、この手の通話装置が必要になると思い、作成依頼に至った。


もう一台の試作がサマリナが持っていた。僕は魔法を込めた後、端末を耳にあて、ゆっくりつぶやいた。


「サマリナへ連絡。」


最初はノイズのような音がなったが、元居た世界の発信音みたいになり、

鳴っている音が聞こえた。


「サマリナです。」


「マーシャリだ、聞こえるか。」


「はい、マーシャリ様、はっきり聞こえます。」


ローハンのテント工房の外に立っていたサマリナが返事してくれた。


「実験成功だ。」


「はい、マーシャリ様。」


それから僕はガラス面に表示されていた【回切】のようなボタンを押して、通信魔法を切った。


「ありがとう、ローハン、君がすごく頼りになる。」


「私にこんな大役を任せていただき、感謝いたします、マーシャリ様。」


日焼けした肌、茶髪で筋肉質の背がちょっと低めの美女であるローハンは誇らしげに微笑んでいた。


今朝になって、飛行戦艦【ヤマト】に乗船する前の使節団に端末及び通信魔法の方式が書かれていた用紙も併せて渡した。

端末は計6台、使節団のてに渡った、1台は天皇、もう1台は宰相、それから使節団全員分もあった。

仕組みも簡単だった。相手が魔法を込めた端末を持っていれば、尚且つお互い連絡する意思がありの場合、自動的に通信魔法の連絡先リストに追加される。

相手が念話を使えるようになった場合、自動抹消になる。

片方が連絡する意思がない場合、例え端末を持っていても登録できないことになるので、必ず使用者の承諾が必要になった。但しリクエスト送ることが可能だった。

念のため通信追加リクエストのブロックを通信魔法に組み込んだ。


「承諾しました。」


弥生さんが僕に話してくれた。

僕は自分の端末を見た、通信魔法リストに【黒岩弥生】が登録されていた。

それからギモラ隊長、エイーサノ大使、クシヤメン艦長も追加された。

サンノモト天皇と宰相が承諾すれば、使えるようになると思った。


使節団が新都の中央に集まった。


「それでは本国へ戻ります。近々またお目にかかれば幸いです、魔王マーシャリ殿下。」


エイーサノ大使が話した後、全員が会釈し、近距離転移魔法で飛行戦艦の中に転送された。


飛行戦艦がゆっくりとサンノモト皇国へ進路を取り、帰郷し始めた。

その時だった、突然ワイバーンの大群れが飛行戦艦と新都の真上に転移魔法で現れた。


「何だ、これは?!!」


僕は思わず、叫んだ。


ただのワイバーンの群れではなかった、兵隊が乗っていた。


「チューウェン労働者連邦の人民騎兵団です、マーシャリ様。」


インムンとキュリーがほぼ同時、私に念話で教えてくれた。


300騎以上が同時に転送されていた。

飛行戦艦【ヤマト】が即座に魔法結界を発動した。

僕も同時に旧難民避難所だった新都に結界を張った。


騎兵団の大半結界の外になったものの、5騎だけが新都の結界内に残った。

外に残った騎兵団が飛行戦艦と新都の結界を攻撃していた、ワイバーンは火を噴き、

乗っていた人民騎兵は小型砲で攻撃魔法を放っていた。

強硬な結界だったので問題がなかったものの、騎兵団の攻撃が激しかった。


新都の結界内に残った5騎が中央に降りてきた。

正直、テントで出来ていた新都・マーシャリナがすぐに攻撃されると思っていた。

念話でキュリーに住民の避難を指示した。彼女がすぐに近距離転移魔法で数十人単位で僕は新たに張った防御結界の中に連れて行った。


僕の隣にインムン、ミラ、サマリナとラームネンが立っていた。


一番大きく、赤い色のワイバーンに乗っていた全身赤と黄色の鎧を着た小柄な騎兵が近距離転移魔法で僕たちの前に立った。


「どうも、はじめまして魔王さん、ぼくはアオキ・シェル、チューウェン労働者連邦の勇者だよ。」


「魔王マーシャリだ、勇者がいつも奇襲するものなのか?」


「違う、違う、いつも宣戦布告するよ。。でも今回は醜い魔族が相手じゃ、宣戦布告必要ないよ。」


「流石神に選ばれた勇者だな。」


「唯一の神、エリアス様を馬鹿にしないで、ぼくは君を殺すよ、魔王さん。」


「やれるものならばやってみたらいいと思うよ、神の勇者さん。」


「ぼくを怒らせないで、せっかく無痛で殺そうと思ったのに。」


「神の勇者にして、随分と優しいね。」


「決めた、最後に君を殺すよ、魔王さん。」


「ほう、最初は何をするのか?」


「君の醜い魔族、亜人と腐れ超(ハイパー)人間(ヒューマン)の部下はぼくの騎兵団の四天王が君の目の前に殺すよ。」


「そうか、なめられたものな。」


「弱いカンク公国の勇者に勝ったぐらい、いい気にならないで魔王さん。」


「シマ君が確かに弱かったな、アオキ君は強いのか?」


「ぼくが転移された偉大なるチューウェン労働者連邦共和国の事実上属国の分際で先に攻撃かけたのは許さない。後でシマ君を含む国ごと、お仕置きするよ。」


「怖い、怖い。でもシマ君も大口叩いてたよ、アオキ君。」


「だから、ぼくをあんな者と一緒にすると言っているよ。即死の勇者、笑わせるな、一番弱い勇者で一番弱い国に転移したくせ、名前だけが大きく出した。弱い犬ほどよく吠えるよ。」


「凄い評価だな、シマ君がきっとくしゃみが止まらない。」


「同じ日本人として恥じだよ。どこかの平行日本かわからないけど。」


勇者が両手を頭の位置に持っていき、兜を取ろうとした。


「全員、目をつぶれ!!」


僕は叫んだ。


勇者、アオキ・シェルが兜を取った、一気に周りが光に包まれた、勇者の目が白く光っていた。

その光を直視していたら、僕以外の全員確実に死んでいた。


「ぼくの目(アイズ)の光(ライト)をよく見抜いた、面白いな、魔王さん。」


「危機回避の力が備わっているので、アオキ君。それにしても君が女性だったとは驚いた。気配探知では男女かどうかの区別ができなかった。」


「ぼくは女性?違うよ、バカ、ぼくは男の娘(こ)だよ。」


「はい?どういこと?」


「理解のないバカな魔王君が死ぬべきだよ。四天王君たち、こいつの部下を殺して。」


4人の騎兵がワイバーンから降りてきた。

兜を取った全員は人間のようだったが、どこか機械的な感じもしていた。


「人間じゃないな。」


「ピンポーン、その通り、魔王君。ぼくの四天王はチューウェン労働者連邦共和国の得意分野である魔法科学の応用で作った自動人形(オートマトン)たちだよ。」


「結界の外にいるのは?」


「他の騎兵は一応、全員人間だよ、但し脳だけはね。」


勇者の妖艶な顔が歪み、どこかの物語の魔女の笑い声が響いた。



次回:妖艶な勇者と人形たち

日本語未修正。

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