第11話 会談
タラーナの森
難民避難所(後の首都)
勇者との闘いより11日後
午前8時30分頃
僕は自己紹介した後、サンノモト皇国の使者団の3人は頭を下げて、会釈した。
それから順番にキュリー、ミラ、サマリナ、インムンとラームネンが自己紹介をした。
「魔王マーシャリ殿下、お話がたくさんあるのですが、お許しいただけるのなら、
もう一人をここにお呼びしたい。」
難民避難所の面々の自己紹介が終わってすぐ、大使、エイーサノ・ノブタダが僕に話した。
「かまわない。」
僕は答えた。
大使は右手を上げた。
上空に止まっていた飛行船、戦艦ヤマトのゴンドラの下の扉が開き、一人はそこから地面目掛けて落ちてきた。3人の使節団の後ろへ落ちて、凄まじい音と共に地面が割った。
衝撃でほこりが舞い上がった後、一人の女性の姿が見えてきた。
細身の体、茶色い髪の毛、繊細で上品な顔と日本の甲冑のような恰好で両手に日本刀に似た刀を握っていた。
「これはどういうことですか、エイーサノ大使?」
僕は大使に質問をした。
「彼女はわが護衛官で従妹のギモラ・カイラ隊長です、魔王マーシャリ殿下。」
「なるほど。呼び出した理由は教えていただいてもいいですか?」
「この世界の絶対的な掟の”弱肉強食”は既にご存知でしょうか?」
「はい、知っている。」
「失礼は承知ですが、不本意ながら会談を始める前にあなたは真の強者か否かを試させていただきたい。」
「なるほどね。」
その時、キュリーの念話が頭の中で響いた。
「この世界の常識です、マーシャリ様。」
「わかった、キュリー、相手にすればいいのか?」
「殺さない程度に叩きのめしていいただきたい、マーシャリ様。」
「そこまでしなきゃならないのか?」
「時と場合によります、マーシャリ様。」
「何で護衛官で勇者じゃないのか?」
「あなたの力を試したい。即死の勇者に勝った、マーシャリ様の力を。あなたをまだ警戒している、あなたが悪と判断されれば、勇者である黒岩弥生が動く。」
「わかった。ありがとう、キュリー。」
念話でのやり取りはとっても早かったため、時間にして2秒ほどしか経ってなかった。
「受けていただけるのでしょうか?」
エイーサノ大使が僕に聞いた。
ミラ、インムン、ラームネンが前に出た、僕はそれを止めた。
「マーシャリ様、私が出ます。」
同時にミラ、インムン、ラームネンが言い出した。
「僕は出る、心配することはない。」
家臣たちは僕を見て、引き下がった。
「では、エイーサノ大使、あなたの護衛官と対峙します。」
大使は微笑みを浮かべ、勇者である弥生と戦艦の艦長と横へ下がった。
「ルールは簡単、魔王殿下が我が護衛官のすべての攻撃をかわせば、勝利となる。」
大使は笑顔で宣言した。
「わかった。」
僕は答えた、目の前に立っていた女性武芸者を見た。
「戦場スライムとサンノモト人武士が祖先、サンノモト皇国護衛隊、隊長のギモラ・カイラである。」
華奢な体で茶髪の女性武芸者が二刀を構えながら名乗った。
「魔王マーシャリだ。」
僕は言い終えた時に、彼女が僕の前から消えた。そして僕は反射的に後ろを見ずに前へ飛んだ。
僕は立っていた位置に彼女が二刀流を振り下ろしていた。
「危なかったな。」
「流石魔王殿下。」
彼女は人懐こい笑顔で僕に言った。そしてまた僕の視界から消えた。
僕は反射的に後ろへ飛んだ。
僕のいた位置には下から彼女が二刀流を突き刺すようにしていた。
「一つ聞きたいのだが、いいですか?」
また二刀を構えている護衛官の彼女に声をかけた。
「いいですよ、どうぞ、魔王殿下。」
「戦場スライムは何ですか?」
ギモラ隊長がそう名乗った時に僕の好奇心はその一言で刺激された。
「500年ほど前、統一する前のサンノモト列島皇国はサンノモト人同士が国の覇権を握って争ってた時に独自に進化したサンノモト産スライムです。」
「独自に進化?」
「争いが絶えなかったサンノモト列島が巨大な戦場になり、どこも人間、亜人の死体だらけだった。」
「なるほど。」
「サンノモト産スライムは元々知能があり、個体によって人語が話せる者もいた。」
「終わることのない戦いで死体を食らい、人間や亜人を擬態できる者も現れた。スライムの知性も大幅に向上し、社会性も生まれ、擬態は日常化し、やがてはその擬態が本当の姿となり、死体食いを止める者が大半になり、普通の食事を取り、戦乱の時代を終わった後、サンノモト人と一緒に暮らし、中には人間や亜人と婚姻関係を結ぶ者も現れた。」
「それは君の祖先と言うわけかな?」
「はい、私だけではなく、そこに立っている大使も戦場スライムと武士の子孫。母親同士が姉妹なので。」
「そうか、なるほど。」
「私たちの場合、祖父が戦場スライムから大名にまで上り詰めた男です。祖母は超(ハイパー)人間(ヒューマン)の武士の娘で女武芸者。そこからハーフスライムの8人の男女が生まれました。」
こんな話をしていたが、その間に僕は彼女の確実に急所を狙う攻撃をかわしていた。
「スライムって性別がなかったかな?」
「進化する前まではですね。今は男女がいますし、両性ものいるし、無性を貫く者も。」
「サンノモト皇国は面白そうな国だな。」
「大(グランド)粛清(パージ)前までは平和でしたが、今ここの大陸から逃げた難民で溢れかえている。幸い国力、魔法力、魔法科学力、技術力が我が国にはある。」
「そんなこと僕に話していいのかな?」
「私ではなくても、大使や勇者様も話すと思う。」
ギモラ隊長が突然距離を取り、構えた。
「サンノモト剣術、北南流奥義、斬速真!!!」
ギモラ隊長が数段早くなり、首と胴体を同時に切る大技を仕掛けてきた。
彼女には悪いなと思いながら僕の方が早かったので、大技をかわした。
隊長の背中から空色と透明感のある2本の触手が出てきた、その先端は固い刃に変わった。
「戦場スライム形態!!」
笑顔で彼女が声を上げた。
僕は拳を構えた。
「それまで!!魔王マーシャリ殿下の勝利!!」
大使は大きな声で言った。
ギモラ隊長は触手を背中に戻し、二刀を鞘に納めた。
エイーサノ大使、勇者、艦長とギモラ隊長が改めて、僕の前に立ち、跪き、頭を下げた。
「数々な無礼をお許しください、魔王マーシャリ殿下。」
「気にするな。この世界の常識であると聞いている。」
「はい。魔王殿下、申し訳ございません。」
4人は同時に答えた。
「では、中で話しましょう。」
僕は4人を大急ぎでローハンに頼んで作った会議用の大きなテントへと招き入れた。
その時、勇者、黒岩弥生は日本刀を抜き、難民の後ろに立っていた3人のオーガ目掛けに素早く投げた。
身長の高い男のオーガの胸に刺さり、両隣に立っていた女性オーガが玉を地面に投げた。そこから小さな爆発と共に白い煙が立ち、彼女たちが消えた。
胸が刺された男のオーガが地面に倒れた。幻影で作られた変装が消えた、普通の人間の男だった。
「おそらくペイルネ王国の隠密だ。」
弥生が僕に言ってきた。
「何故気づいた、黒岩さん?」
僕は彼女に質問した。
「変装魔法技術は完璧だったが、彼は我々に対する軽蔑と増悪からくる一瞬の殺気で気づいた。」
「僕はまったく気づきませんでした。」
「魔王殿下ならすぐに適応し、変装も破られる能力(スキル)も身にづくと思います。」
「マーシャリと呼んでください、黒岩さん。」
「ではマーシャリ様と呼びます。私を弥生と呼び捨てで呼んでください。」
「では弥生さんと呼びます。」
僕は思った。黒岩弥生が来た異世界の日本はどんな国だったのだろう。
僕が来た日本とは違う時間軸、平行世界だったのだろうかと思った。
吸血鬼である彼女を美しいと思った。
インムンと黒岩弥生、僕は転生してから初めて異性が好きになったのを感じた。
ミラとキュリーが死体のところまで急いで走ったが、死体から煙が出て、数秒後に悪臭する汚水に代わった。
キュリーはその後警備を強化し、夜間警備担当も含めて、総動員し、警戒レベルを上げた。
結果的に会議が始まったのは午前11時頃になった。
次回:同盟条約と建国
日本語未修正。
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