第7話 神の使徒
日本、横浜西区某所
平成4年12月24日(木)
クリスマス・イブ 23時頃
某大手企業の平社員、島・純吉がアパートに帰ってきた。
北関東地方の大学を卒業して、都内で就職し、横浜に引っ越して、3年経っていた。
彼女はずっといなかった。童貞を初ボーナスで川崎、堀之内のソープランドで捨てた。
1年ほど前にそのソープランドは出禁になっていた。初体験の相手への度重なる付きまといと嫌がらせ、
用心棒のヤクザに殴られ、その上、女性への慰謝料も取られた。
それから毎日、その女性に対する復讐を考えていた。
近所のレンタルビデオ店で数本のAVビデオを借りて、過ごす予定だったが、疲れが溜まりすぎて、まっすぐ部屋に帰った。
風呂に入った後、パジャマに着替え、布団に座り、テレビを付けた。
その時だった。突然畳が光りだして、魔法陣みたいなものが現れた。部屋全体が強烈な白い光に覆われ、何も見えなくなった。
難民避難所
北の方角500メートル地点
異世界歴 不明
午後13時45分頃
この世界の人間歴
グランド・エリアス歴5年6月21日
午後13時45分頃
僕が張った結界に勇者が放った光の衝撃波と鎧兵が放った魔法ビームがぶつかった。
爆発と爆風がすごかったものの、結界が無傷だった。
「貴様!!」
勇者が叫んだ。
僕は彼をただ見つめた。
考えてみたら、この世界に転生して、まだ数時間しか経ってない、
魔王になったと言われても、好きな能力(スキル)が作り出せると言われても、正直、自分の力の威力及び限界がわからなった。
そもそもおかしな話だと思った。
通り魔の男に腹部が刺され、魔族の神、女神パメラ様の力によりここへ転生し、
名前も与えられ、人間の迫害から逃げている魔族と魔物と出会い、彼の避難所に来た。
僕は空を見上げた。
「何故?」
独り言をつぶやいた。青空が綺麗に見えただけだった。
「貴様、何をつぶやいている!!」
勇者が怒鳴った。
僕は再び、彼を見た。
「お前には関係ない。」
勇者の顔が怒りで歪んだ。
「全員、魔法ビームを打ちまくれ!!!」
鎧兵に命令した。
僕は彼らの攻撃は時間も労力の無駄だと思った。
「結界、解除。」
元ナビゲーション能力(スキル)だったキュリーから念話で様々な能力(スキル)の概要を
送ってもらった。すぐに理解し、使えると思った。
「俺は神の使徒、勇者だ!!!」
勇者、シマ・ジュンキチが更に怒鳴りだした。
「近距離転送魔法。」
僕はつぶやき、彼の前に転送した。
勇者が驚いて、何か言おうとしたが、何か言う前に、僕は彼の顔を殴った。
森の木、数本を倒しながら、勇者は後ろへ約100メートルへ飛んだ。
僕は鎧兵を見た。
本当に一昔のアニメのロボットのようだった。動きが鈍かった。
300人の鎧兵の右肩にあった、小型ビーム砲が再び僕を狙った。
「長距離転送魔法。」
僕は一瞬、一人の鎧兵の頭を覗いた。記憶を探った。
サンノモト海沿いの貧しい漁師村出身だったのでそこへ全員転送した。
但し、村へではなく、村の前に広がる荒いサンノモト海の上空50メートルへ。
鎧兵が全員、森から消えた。
後で聞いたが、その時転送された鎧兵の大半、サンノモト海に落ちて、溺死した。
それについて、何も感じなかった。
「貴様、俺の殲滅部隊に何をした?!!」
森へ飛ばされた勇者が立ち上がり、僕を睨んだ。勇者はダメージほとんど受けておらず、人間離れした速さで僕の前に戻ってきた。驚きと怒りの表情を浮かべて。
「ごみを掃除しただけだ。」
「神の敵め!!」
勇者が大剣を振ろうとしたが、遅かった。
「長距離転送魔法。」
神の使徒、カンク公国の勇者、シマ・ジュンキチを鎧兵と同じサンノモト海の上空へ転送した。
鎧兵と違い、彼は現れたのは地上から2キロの高さだった。
カンク公国歴
大ムン公歴3年1月20日
大(グランド)粛清(パージ)より1か月前。
純吉が公国の宮殿に転移した。
周りで魔導士、約30名が円を組んでいた。
前に短い髪の美しい女性と小太りで眼鏡をかけた意地悪そうな中年男性が立っていた。
「エリアスの祝福を受けた、勇者様!!!」
中年男が嬉しそうに叫んだ。
純吉が驚いていた、こちらの世界の言葉を即座に理解した。
その後のことをよく覚えていなかった。
そしてここに現れる少し前、エリアスと呼ばれる神と会ったことを思い出して、振り替えた。
「お前は私の勇者。私の敵である魔族、魔物、亜人を滅ぼす存在だ。」
純吉は白く輝くドームの真ん中に立っていた。
彼の前に女性とも男性とも見える人物が立っていた。
「私はエリアス、この世界の唯一の神。」
純吉は本能的に跪き、頭を下げた。
「お前は私の使徒、私の戦士、私の奴隷だ。」
エリアスは恐ろしい笑い声を上げた。
「はい。」
純吉はただそれだけ答えた。
「私の祝福を受けるがよい。」
エリアスの口が裂けて長い複数の舌を出した。
純吉が恐怖で凍り付いたが、すぐに諦めた。
自分ではない、何かになったと思った。そして力を感じた。
そして神の恐ろしい祝福を受けた。
この世界の人間歴
グランド・エリアス歴5年6月21日
午後13時55分頃
カンク公国・サンノモト海沿い
シマ・ジュンキチが猛スピードで海へ落ちてきた。
衝突する直前に落下が止まり、中に浮いた。
「私の祝福と加護を受けたお前は死なない。」
ジュンキチの頭の中にエリアスの声が聞こえた。
「神よ、感謝する。」
海岸へ向けて、ジュンキチが飛んでいった。
次回:新たな勇者たち
日本語未修正。
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