第一章 11話 出会い爆発
「もう、こんな時間か」
そろそろ、帰るかと考えている。
僕は分かると思うが、
ダイメルク図書館にいた。
しかし、最近は学生のレポートチェックとか、リモート会議やらとかで、
意外とコッチの調査が進んでいない。
どうしたものかと、少しフラストレーションを貯めているが、かと言っても仕方ないかと、自分を落ち着かせてる。
そんなこんな、時刻は20時を少し回っていた。
「パソスさん、まだ居たんですか、
そろそろ、閉館の時間ですよ」
そう言う彼女はダイメルク図書館の職員のメルティアさんだ。
彼女は僕のいる3号棟と2号棟の管理を良くしていて、
閉館作業とかもしている。
「あ、すみません、もう帰りますから」
と辺りを見渡すと、もう殆どの明かりが消えていた。
もう僕らがいる辺り以外の、消灯は終えたのだろう。
「最近良く遅くまでいますね」
「他の作業が色々あって、こっちに割く時間が割と取れなくて」
「お疲れ様です、じゃ私と一緒に外に出ましょうか、もう館も閉めますから」
いつもだったら、少し前に出るだが、
この日は集中し過ぎていたのか。
閉館ギリギリの時間になっていた。
いや、寧ろ少し過ぎている。
「分かりました」
そう言う彼女の後をついていく。
僕らは今、3号棟の三階部分にいた。
一階までに降りるまで、通った道の電気を消し、消灯を行ってゆく。
階段を降りる間、こんな会話をした。
「メルティアさんは昔、科学者だったんですよね」
「ええそうですよ、ヘイストさんと同じところに居ました」
「確か植物系の研究をなされていたとか?」
「そうですよ、
10年ほど前の話ですけどね、
研究費とか色々でチームが解体されたんです、
その時ヘイストさんに言われて誘われたのが、
今のこの仕事、ヘイストさんの思想に共感したんです、
だからこの仕事をお受けした」
色々と話してくれるメルティアさん。
こいうことを普段話すことがない分、誰かに話したいとかあるのだろうか。
「今でも戻りたいとか思ったりするんですか?」
「正直そう思うこともありますよ、
でも今の仕事だって充分やりがいはありますかね、
人によっては大した仕事には見えないかもしれませんが」
「そんなことは」
「いえ、私たちは家を作ったり人に食事を与えたりはしていない、
あなたも思ったことあるんじゃありませんか?」
そうなのだが、急にどうしたのだろうか
「それは」
「それでも、必要なことってあるんですよ、
些細な分かりにくいことだとしても、直接人に必要なものでなくても、
直接生死に関わらなくても、
やっぱり人間には無くしちゃいけないものはあるんですよ、
文化とか歴史とか、
それを守るのが私たちの仕事、
少なくとも私はそう思うようにしてます」
「僕も、僕もそう思いますよ
でなきゃこの仕事はしてない」
たまにはこいう話も必要か。
「そうね、あなたは歴史を作る側かしら、少し羨ましいわ」
「そんなことはできませんよ、僕に」
「それじゃ、私自転車を取りに行くから」
会話をしながら僕らは一階まで降り、
一階の出口を出て、
メルティアさんが出口を施錠した、
後でお互いの帰宅の方向へ別れた。
珍しく深い話をした気がした。
「分かりました
お疲れ様でした
遅くまで、それじゃ」
僕はホテルへ帰宅するべく、
近くの駅まで歩いていた。
薄暗い路地の中、
前に、一人の女性が歩いていた。
見覚えてのある後ろ姿。
それはルリスだった。
後ろ姿だけでは、確証を持てないが、
それは見たことある後ろ姿だった。
こんな時間に、何をしているんだろうか。
彼女の生活からして、この時間に、
この辺に現れることはないと思えた。
僕は何となく後を追いかけた。
単純に、何をしているんだい?
と興味本位的に、声をかけるぐらいのつもりでいた。
薄暗い路地を進んで行く彼女。
その後を追う僕。
もしかしたら人違いの可能性もなくはない。
それでも僕は、その後を追いかけた。
普段こんなことをするだろうか。
少し違う場所で暮らしていて、
羽目が外れているのかもしれない。
そんなこんなを考えてると、
前の彼女は右の道へと入った。
僕もその後を追いかけて、右の道へと
数分後に追いかける。
道を曲がった後、僕は彼女の姿を確認した。
彼女は確かにそこにいて、
まだ先を歩いている。
この辺の道は普段あまり車が通らない。
フラフラと道路を歩く人もいるぐらいだ。
彼女を追いかけて、声をかけて
迷惑にならないだろうかとか、
少し思って僕は立ち止まった。
彼女は前を歩いていて、
丁度、道路と道路交わる、
十字路になってる辺りを歩いていた。
歩いていた。
歩いていた。
はずだった。
歩いてる彼女を見ていた。
そこに、急に、
白い光が急速やってきて、
包まれた。
ドン、ガラガラ、ドン。
と鈍い音が響いた。
あ?
?
僕はそれが、
何か、何秒か分からなかった。
いや、気づきたくなかった。
少し、頭が真っ白になった。
僕は目の前を、直視する。
目の前に、彼女はいなかった。
少しづつ理解する。
いや、自分を納得させてゆく。
彼女は車に轢かれた。
僕は歩き始める。
そしてだんだん少し早足になってゆく。
人が目の前で轢かれた。
それは初めての経験で、
そして恐らく轢かれたのは、知り合いの女性。
「はぁっはぁっはぁっ」
僕は少し呼吸が荒くなっていた。
早足から小走り、その運動故に呼吸が
荒くなる。
しかし、息があがり、呼吸が荒いのはそれだけではないかもしれない。
焦る気持故。
僕は十字路につき、
そのまま彼女が消えた方向へ曲がった。
そこには確かに女の人が倒れており、
僕は近づいた。
近づけば近づく程、それはルリスそのものだった。
因みに車は彼女にあたった後、
壁に激突したようだ。
運転手はちらっと、遠目で見えた感じ
は、ぐったりしている。
「だ、大丈夫か!!」
と僕は少し大きな声をあげて、彼女にかけよった。
彼女にかけよるのは、何回目だろうか。
「うう、う
あたた、全く」
そう言う彼女の声は、ルリスそのものだった。
「おい!大丈夫か?」
「おい?、わしに言っているのか」
とこっちを見るルリス。
確実に振り向いた姿は、
やはりルリスだった。
しかし何となく、
いつもの目つきじゃない気がした。
「ああそうだ、
大丈夫なのか!?車が」
「貴様、いい度胸じゃな
、まぁこんな鉄屑があたったぐらい、わしが」
「無理するな、どこか怪我をして」
「無理などしておらん!こんなことで
どうこうなるわしじゃない」
「いいから、安静にして置いたほうがいい」
「だから、わしに指図するな!」
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