第一章 10話 偶然と偶然
「すみません、これを2つと、これを1ください」
定員に注文を済ませる。
「魚貝パスタとが2、キノコとベーコンの森森ピザ1でございますね」
「はい、それで」
「畏まりました」
定員は注文を聞くと、厨房の方に行き、注文した内容をコックに伝えた。
僕らは料理が出来上がるまで、
しばらく話をした。
「仕事の方はどうだい?順調かい」
僕は席に座った時に、出された水を少し飲みながら、彼女へそんな質問をした。
出会った時の件もあり、
僕としては、少し心配しているとも言えなくもない。
「そうですね、
あ、そういえば!パソスさんに
言われた感じで話しかけたら、上手くいって!
今日もそのお客さんに観光案内頼まれてたんですよ!」
どうやら順調そうだ。
僕のアドバイスがというより、
もう彼女は、
十分な腕があったのだろう。
単純に選ぶ相手を間違えていた。
それだけ。
仕事の腕に関しては、
一日一緒にいただけで分かる。
観光案内としては十分、いや、それ以上の素質があった。
寧ろあんな簡単なアドバイスで、
成果がもう出たのだから、それが
良い証拠だ。
「いやいや、僕は大したことは
、良かったよ、うまくいってるようで」
「いえ、ほんとうです
それに、ほんとにあの時助かりました、
きっと何かの御縁だったのかもしれません」
縁か。
なかなか古風なことを言う。
しかし、最初の頃は、
少しオロオロした感じで喋ってた印象だったが、
はっきりと言う時は言うこともある。
まぁ流石にずっとあれじゃ生きていけないか。
「そうなのかもね、仕事はいつも何時ぐらいまであるんだい?」
「まちまちですかね、早く上がるときもありますけど」
「そうか、結構時間には縛られない仕事なのか」
「割と自由に使えますね、
でもお客さんを見つけたりとかするのは大変で、
お客さんさえ見つければ、
仕事できるので、その後は、いいんですが、
見つかるまでは、終わりが見えないみたいな感じで」
そんなことを何だかんだ話していると
「お待たせしました」
と定員がやってきて、
料理をテーブルに置いてくれた。
「さてと、じゃ
お仕事お疲れ様
食べようか」
というと彼女が
「はい!」っと言った。
僕らはピザを切って半分ずつに分け、
一人づつパスタを食べた。
うまい、コクがあって魚貝の味がよく出ている。
そしてピザも具がたくさん入っていて、
それぞれがいい味を出している。
「どうですか?、味に合いますか」
こちらを見て僕の味の感想を気にしている。
自分が美味しいと紹介したものだから、それが僕の好みに合うか気になるのだろうか。
僕は素直に自分の感想を述べた。
「ああ、とっても美味しいよ
久々にこんな美味しの食べた気がする」
「良かった!口にあって
美味しいですよね、ここ!」
「うん、あれだったら
言ってくれたら、全然追加で注文してくれていいからね」
「あの、」
「なんだい?」
「私、結構食いしん坊に見えますか?」
「いや、そういう意味じゃないよ、
折角だからね」
とか言う会話を交えつつ僕らは食事を終えた。
結局、追加でピザとパスタを一つづつ追加してシェアした。
「すみません、このブレンドティーを2つ」
と最後に食後の紅茶を頼むことにした。
「畏まりました」
定員は注文を聞くと、
また厨房へと向かっていった。
しばらくすると2人分のポットに入った紅茶を持ってやってきた。
僕らの目の前で、
カップに紅茶が注がれ。
僕らの前へそれぞれ置いてくれた。
「いや、しかし美味しかったね」
「そうですね、今日もとっても美味しかったです」
注がれた紅茶を飲みながら、
そんなことを話していた。
「あ、君たち」
と急に男性が立ち止まって、こちらに向かって話しかけている。
その男性の方を見ると、
それは以前、彼女がお揃いのキーホルダーを買った店の前でぶつかった男性であった。
「まさかこんなところで、また出会うとは偶然だね」
「あ、こんばんは」
「君たちもこの店に来てたんだ、
ここのお店美味しいよね」
偶然でいいんだよな?
「この前はすみませんでした、
私の不注意で」
「いいんだよ、気にしなくて
しかし君たちはどういう関係?
観光案内人と客の関係には見えないけど」
「まぁ色々ありまして、
知り合い?お友達?みたいな」
少し説明しずらい。
「そうか、どうりで、
客と観光客とは少し雰囲気が違うなと思ったよ」
なんか感じ取るものがあったのだろうか。
「そんな風に見えましたか」
「まぁね、ところで、ということは君は観光客じゃないわけだ
アルベルクには、
一体何しに来たんだ?
と聞くのは野暮だったかな」
「いえ、まぁ僕はこの街には研究で」
「そうかじゃ君は頭がいいんだね、
エリートって訳か、
まぁここのエリートぶってる連中は、頭がいいと言えるかは分からないが」
ここのというのはアルベルクのことだろう。
エリートぶってるというのは、
となると、観光案内人などの仕事を下に見下してることだろうか。
「そんなことはないですよ」
「あなたはアルベルクでなにをしているんですか?」
「まぁ僕は人探しって感じかな」
「人探し?」
「まぁまぁ気にしなくてていいよ」
わざわざ人探し、警察官とかなのかな?
「そういえば、彼女のことはその」
「観光案内人の彼女のことを、
まぁ僕もここの人間じゃない
それに、なんとなく彼女の立場が分かるんだ」
「そうでしたか」
「君も僕と同じなんじゃないかな
彼女をちゃんと見て彼女の人間性をしっかり判断して接してるんだろ」
「まぁそうかも」
「お嬢ちゃんもどうやら
人間性はしっかりしていそうだしね」
「え、わたし
そうですかね?
いつもわたしダメダメで」
「いやいや、それは周りの評価が
正しく機能していないだけだよ
それに、
まぁ出会いはどうであれ、大切だからね、今後も大切にね
そういえば、、
僕トイレに行くところだったんだ
じゃあね」
と言って彼は去っていった。
そういえば、折角だから名前でも聞けば良かったかな。
「まさか、こんなところでも会うなんて思わなかったですね」
そう言う彼女。
「ああ、偶然ってあるんだね」
偶然、偶然はいつから必然になるのか。
そんなことを、どこかの本で読んだ気がする。
確かその本には偶然は何回起こっても必然にはならないと書いてあった。
僕もそう思う。
「流石にもう会うことはないですよね」
「いやいや、この街は広いようで狭いから意外と、また会うかもしれない」
そんなことを会話して、
しばらくして僕らは紅茶を飲み終え。
店を出た。
最初に出会った駅の方へと向かい。
その日はそれで解散することにした。
「それじゃ今日はこれで」
「あの、ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとう
食事美味しかったよ」
「また
また行きましょう
わたし誘いますから!また」
「ああ、是非
また美味しい食事を楽しみにしてる」
「はい!」
「じゃまた」
「じゃまた」
そう言うとお互いに軽く手を振り
別れた。
そして、
その時まで僕は知らなかった。
なにも知らなかった。
寧ろ始まってもなかったのだと。
それから1週間程日々は過ぎていった。
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