第一章 6話 感情は刹那的に揺れ動く
「かしこまりました」
というと店員は奥の方へ向かった。
店内はそこそこ賑わっており、
客層はどちらかというと、若めだ。
年配の人も何人かいるが。
「結構賑わってるんだね」
「ここの雰囲気いいんで、
好きな人は好きだと思います
私もその一人です!」
と言って微笑む彼女
「しかし結構お腹すいたな、城の中もめちゃくちゃ広かった
まだ回れてない場所もあったしな」
「ですね、このやつ美味しいんで!
しっかり栄養補給しましょう!」
とそんなことを話していたら、
品を持った店員がやってきて、
頼んだ商品をテーブルへ並べてゆく。
僕はテーブルにきれいに並べられた料理を眺めた。
「そうだな」
「是非!美味しいうちにいただきましょう」
「ああ、そうしよう」
う、うまい。
思ってたよりかなり美味しい。
というか久々にこんなとこで、食事をしたかもしれない。
普段さほど食に興味がある方ではないからな。
なんだかんだいい一日になってるのかもな。
最初あったときは、なんでこんなことにとか思ってたが、
今はそれがなければこんな風なことも、
なかったかと思う。
不思議なものだ人生というのは。
「結構うまいな」
「はい!そうなんです!」
という彼女は何故か今日一番の笑顔だった。
その後、僕たちは食事を終え。
雑貨屋の中を少し見て回った。
お互い思い思いに店の中を見る。
数分ぐらい色々見ていると、いつの間にか彼女がいなくなっていた。
辺りを見渡すと、
隅の方で、彼女がなにやら夢中になって見ていた。
根を生やして動かないんじゃと思わせる程に。
何を見ているのかと、僕も遠目から見る。
それはキラキラと装飾された手のひらサイズのキーホルダーだ。
この街の装飾品加工の名物品。
お店によって、色々な装飾品が存在する。
なんと声を掛けようとも少し悩んだが。
「おい」
「あ、ごめんなさい
そろそろ行きますか?」
流石にここで言わない訳にはいかないだろ。
そんな目で見ていて、
そこそこ世話にもなった気もしなくもないし。
「買ってやるよ」
「え、あ、いや、あ、そんなん悪いですしっ」
「いいんだよ、ほしいんだろ」
「え、ん、じゃ二人で同じの買いません?」
咄嗟の気遣い?だろうか。
正直そこまで高い物でもないが、
そこまで欲しい物でもない。
「いや、僕は別に、、、」
いやまぁ、たまには思い出に名産品を買うのもいいか。
「分かった僕も同じの買おうかな」
「是非!これとってもきれいですから!
パソスさんにも持っててもらいたいです!」
その装飾は幾何学的な文様をしていて、
縦長な盾のような形をしていた。
真ん中にはビー玉のような青色の物がはめ込められていた。
それをレジに持っていき、
お会計をした。
その時店員さんから話しかけられた。
「お客さん、いい買い物をしましたね、これはお守りの役目もあるんですよ、きっと何かあったら守ってくれるはずです。私も因みに持ってます!」
「あ、そうなんですね、
彼女が選んだんですけど、
じゃ大事にして持ってますね、ありがとうございます」
僕はその場の流れでそんな返しをした。
「それはナイスチョイスです!
こちらありがとうございました。
またのお越しを!」
そう言って手を振る店員さん、
そして店を後にした。
店を出て僕は、彼女に買った品を渡した。
「はい、これ」
「ありがとうございます!大事にします!」
と言ってルンルンな彼女は陽気に歩き出す。
「あっ!」
と目の前の男性と彼女はぶつかってしまった。
僕は咄嗟に駆け寄った。
前を見ずに歩くから。
まだこいうところは子供ぽいなこの子は。
「大丈夫か!?」
「ぅう、うぅ、大丈夫です、、、」
ぶつかった男性が、こちらを見ていた。
僕は彼女へ謝るように言葉をかけた。
「よそ見してるからだ、ほら、誤って」
彼女はよく転ぶな、
二度も彼女に駆け寄り、
今日の僕はどんな状況を過ごしているのかと俯瞰的に感じなくもない。
そんなことを思いつつ彼女に、僕は手を差し出した。
「ごめんなさい、ぶつかって」
と彼女言いながら、
僕の差し出した手を掴みながら、立ち上がった。
ぶつかった男性は、
少し雰囲気のある男性だ。
少し怒るのではないかと、実は僕は不安に思った。
「大丈夫大丈夫、ごめんね、私も気づかなかった、しかし怪我はないかい?お嬢さん?」
僕の予想に反して、とても優しい人だった。
それに、
この街じゃ若干、
観光案内人を下に見るときもあるが、
そんなこともない人ぽかった。
「大丈夫です、、私がよそ見をしていて、、ごめんなさい」
「いや、ほんとに大丈夫大丈夫
観光かな、まぁ楽しんで、それじゃ」
彼女と彼は二人とも会釈をした。
その後、彼がでは
と手を振って去って行った。
僕の変な感は特に、何か嫌なことに繋がることはなかった。
もしかして、さっき買ったあれが、効果を?
いやまさかな。
「さてと、ほんとに大丈夫か?
あれならこの辺で観光は」
「大丈夫です、少しお尻をついただけで、まだ時間大丈夫ですよね?
もう少し観光しませんか?」
と彼女はお尻についたホコリを、手で叩いて落とした。
「あぁ、まだあと2箇所ぐらいなら
チェックインまでは全然大丈夫だけど」
「じゃいきましょう、次のところに
さぁ」
と僕の手を引き、前を歩き出した彼女であった。
「あ、まぁそんな急がなくても
次はどこに行くんだ?」
「ええ〜っと、アムセリアム通りなんてどうですか?道の作りがとっても綺麗なんです」
「分かったじゃそこにいこう」
と彼女はあまりに自然に手をとったものだから、
会話して落ち着いて、急にそのことに意識したのか、
いきなり顔を少し赤らめて手を離した。
「あ、ごめんなさい、急に手を掴んだりして」
「あ、いや、大丈夫
気にしてないよ」
顔を赤らめられながら急に言われるとこっちもなんだか、少し恥ずかしくなるのだが。
少々時間が経つ。
「ふふふ、いきましょうか」
少し笑い、そういう彼女。
「ああ、行こうか」
笑ったり、泣いたり、落ち込んだり、恥ずかしがったり、忙しい子だ。
少しだけ、ほんの少しだけ、羨ましくなった。
こんなにも彼女は今を生きているのだろうと、一つ一つに感じて。
正直に言ってしまえば、彼女は社会的はきっと地位が低い。
でもそんなことは関係なく。
どんな尺度でも測れない、彼女の世界が存在している。
と僕が、そう感じたからだ。
僕は、そんな大人になれていない気がしていた。
僕の今の暮らしの中では、そんな人もいない気がした。
先生と、少し重なるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます