中学校時代
中学に上がる頃、俺の内情はまだそこまで地獄ではなかった。理由は単純に俺が馬鹿すぎたからだ。今みたいに色んなことを考えて行動はしてなくて、毎日を適当に過ごしてた。
中学生にもなると、皆スマホを持ち出すが、俺は中学1年生の頃はまだスマホを持っていなかった。
そこで自分の中で、人と疎遠になる感覚を初めて覚えた。もう昔から仲の良かった友達とはそこまで話さなくなっていたし、これからも話さないのかなと思っていた。
間もなくして、俺にもスマホが手に入った。
それを友達に言うと、皆直ぐに俺とLINEを交換してくれた。
それに昔から仲の良かった友達は
「お前がスマホを買うまでLINEのグル作らんかってん。
なんかお前だけ仲間外れにしてるような気になるし。」
と言ってくれた。
嬉しかった。
だけどそれと同時に、今まで経験したことの無い変な感覚を覚えた。
気分が高揚して、心が落ち着く。けど直ぐに心の安らぎは薄れていく。
この時の俺はこの感情の名前を知らなかった。
今だから言える。あの時の俺は初めて「承認欲求」が満たされる感覚がした。
そこからだろう。地獄が少しずつ自分の心を侵食し始めたのは。
中学2年生になる頃には俺はこの承認欲求を満たす術を知っていた。
「他者から自分を必要とされる」
これが当時の自分の承認欲求を満たす唯一の方法だった。
それは簡単に満たせた。
誰かからLINEを貰うだけでも自分の承認欲求は満たされた。
ただ、そこから俺の承認欲求は過度なものになった。
「他者にとっての特別になる」
間もなくして、これでしか自分の承認欲求を満たせなくなった。
簡単に言ったら
「友達なんて一人いればいいと言う感情が湧き出てきた時に、最後の一人に他でもない俺を選んで欲しい」
ということだ。
この感情は厄介で、俺が友達だと思っている人達全員に働いてしまう。
友達が他の友達と遊んでいると聞くと、あいつにとって俺は、特別な存在ではないんだろうな、と感じた。
そしてそれは、最悪な程に自分の上辺の面とは相性が悪かった。
「上辺だけを判断して付き合っている友達って、友達って言えるの?」
「取り繕ってる姿しか見せないやつが、誰かにとっての特別になんてなれる訳ないだろ。」
「あいつにとっての特別は俺じゃない他の友達の間で存在してるんだろうな。」
そんなことを毎晩考えているうちに、俺は軽く病んだ。
病んだ、と友達には言えなかった。自分の弱みを見せたくはなかったから。
だから俺は、毎日を楽しく過ごしているように演じることにした。不思議なことだが、笑っていたら内情がどれだけグチャグチャでも、気持ちがだいぶ楽になった。
全部が全部、楽しく過ごしているように演じていた訳では無い。本当に楽しかったことも良くあった。だけどその根底には、誰かの特別になりたいという気持ちが眠っていた。
俺はそのグチャグチャな内情を「毎日を楽しく過ごす」というお面で蓋をして、目を背けた。
そして、人の言葉が信用出来なくなった。
自分がお面を被っているから、相手もお面を被っていて、本当は思ってもいないことを簡単に口に出してしまっているだけなんだろうと思ってしまうようになった。
ここまで俺がどれだけの悲痛を感じていたのかを書いたが、正直な話、最近に比べたらマシだった。
「俺の友達はほとんど皆が幼稚園より前か幼稚園からの付き合いで、付き合いが長いから、それだけでほとんどの友達にとって俺は特別だろう。」と思っていたからだ。
まだ心の全てが地獄ではなかった。多くても1、20%程度だったと思う。
本当の地獄が始まったのは高校に入ってからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます