高校1、2、3年生

高校1年生


皆も知っていると思うが、俺には友達がいなかった。

いや、いなかったと言ったら少し語弊がある。

俺の事を友達と思ってくれている人も一定数居たのかもしれない。ただ俺は、そいつらのことを友達とは思えなかった。

その頃の俺にとっての友達は、地元の友達、つまり少なくとも7年間は同じ学校にいた人しか居なくて、長年付き添って築いてきたその関係が当たり前のものだと思っていた。

だから俺は高校1年生で話せた友達は会ったら普通に話せるだけの赤の他人のように思っていた。

話していても楽しくなかった。

だから俺は地元の友達に固執した。だけど高校が違うこともあって遊ぶ機会は次第に減っていき、俺が付けていた「毎日を楽しく過ごす」というお面が地面に落ちた。

それを拾い上げる間もなく、お面で自分でも気づかないように蓋をしていたグチャグチャな内情が一気に放出された。

そこから本当に死にたくなった。親に相談して、高校2年生も同じとは限らないから頑張って。と言われた。

だが幸いにも高校1年生は仲のいい友達がいなかったから、気持ちを抑え込んで、2年生に上がる頃には再度お面をつけることが出来た。


高校2年生


俺が初めてお前らと出会った時、正直最初は「やっぱり高校1年生と同じじゃないか」と落胆した。

お前らと話していてもちっとも楽しくなかったし、多分こいつらとも俺の思うような友達にはなれないんだろうと思った。

でも俺は、友達が欲しかった。だからお前らと積極的に関わりにいった。

そうしたら、お前らは面白かった。演じなくてもたまに笑えてきて、次第に演じなくても殆どは笑えるようにはなった。

その時、お前らと友達になれて良かったと心底思った。

俺が欲しかったのはこーゆー友達なんだって。そう思った。

クラスにも馴染むことが出来た。俺はクラスの皆のことも友達として見ていた。

次第に俺はお面を被っていることを忘れていった。それほどまでにお前らと過ごす時間は楽しかった。

ここが、今までの人生の最高到達点だったように思う。


高校3年生


お前らとは多少離れてしまったけど、それでも晴路や蒼馬、がわや、伊織がいて、クラスはゴミみたいに居心地が悪くて嫌いだったけど、最初の方はお前らのお陰でまだ楽しくやれてた。

怜、佳正、立川も同じクラスでワイワイやってて楽しそうだなと思っていた。

ある日、隣のクラスで楽しくしているお前らを見て、俺は嫉妬した。


「別に俺が居なくても、あいつらだけで楽しくやれるんだな」


本当にエゴイストなことだと思う。でも自分の中でその感情だけが爆発した。

2年生の頃に忘れていたお面が急に実体を帯び始め、重力に従って少しづつズレていく感覚を覚えた。


晴路が蒼馬と2人で楽しそうに話している時、怜と立川がクラスで遊んでいる時、佳正と拓海が飯食いにいったと聞いた時、がわやがクラスのやつと話してる時、俺を抜いて遊んでいた時。


その度に俺はお面を掛け直した。掛け直す度、お面の質量が増えていくように感じた。

最近まではお面を掛け直して耐えていた。でも限界が来た。

文化祭、体育祭。

俺はこの2つの行事で完全にお面が外れてしまった。

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