第68話 アサシンたちの更生
「ポゼス……ぐぅ」
何かのスキルを使おうとして、男が突然眠りに落ちた。
どうやら、アサシンの活動に関するスキルを使おうとしたようだ。
ただ、昨晩の時点で転ばぬ先の夢スキルを使用しているので、俺が定めたNG行動を行おうとして眠ってしまったが。
「シモン、大丈夫か?」
「えぇ。何も起こっておりませんから」
「そうか。聞きたい事もあるし、とりあえず起こすか。≪ファスト・ヒール≫」
治癒魔法で男を目覚めさせると、キョロキョロと周囲を見渡し、俺を見つけるとニヤニヤと笑みを浮かべる。
「はっはっはー! さぁ、領主さんよ。俺はその気になれば、お前の側近の身体で自害も出来るんだぜぇ! こいつは人質だ。さぁどうするんだ?」
「いや、自害したければ好きにすれば良いが……シモンの事を言っているなら、ここに居るんだが」
「だから、その隣に居る獣人に俺のポゼス・マインドスキルで憑依して……って、おい! どうして、俺の視界にその獣人が映っているんだ!? 俺の奥の手は至近距離でしか使えない代わりに、発動すれば回避出来ないんだぞ!?」
「……発動していないからじゃないか? 俺のスキルで、お前はもうアサシンに関する行動は取れない。スキルも発動出来ないし、人を殺したり、危害を加えようとする事も出来ないぞ」
「はぁっ!? そ、そんなバカな! ポゼス……ぐぅ」
いやそれ、さっきもやったから。
また起こさないといけないのか……と思った時には、シモンが思いっきりビンタしていた。
「――っ!?」
「目が覚めたか? 領主様の手を何度も煩わせるな」
「そんな……今まで、ギルドの仕事しかした事がないのに、俺はこれからどうすれば良いんだ」
「知るか! お前は領主様を殺そうとしたんだぞ!? 本来ならば打ち首が妥当なのだ! 領主様の寛大なお心に感謝しながら真面目に働け!」
シモンが怒りを露わにしながらも、これまでの刺客たちと同じ様に、武器や金銭などを没収の上で、村から追放する。
その後も、二、三回……一度は、複数人の刺客が同時に来たが、いずれもアラート・キャットが発見し、住人たちの協力もあって、全て返り討ちにした。
その結果……
「お兄ちゃん。最近、夜に猫ちゃんが鳴かなくなったねー!」
「そうだね。前に鳴いたのはいつだったかな?」
「ソフィは静かな方がぐっすり眠れるから、鳴かない方が嬉しいなー!」
夜の襲撃も、移住に見せかけた刺客も一切来なくなった。
このおかげでテレーズとソフィが再び規則正しく起きられるようになり、クレアの作った朝食を皆でいただく。
まぁその……一時期のソフィはアラート・キャットの草笛に慣れてしまったのか、鳴っても朝まで起きなかったけどな。
とはいえ、平和で何よりだ。
ちなみに、俺は転ばぬ先の夢スキルについては、刺客に暗殺業を辞めさせ、更生させる事が出来る良いスキルだと思っていた。
だがアサシン・ギルド側からすると、暗殺に関する事が出来ず、かつそれ以外の生き方を見いだせない者たちを何人も抱える事になって大変な事になっている……と、最後に来た刺客から文句を言われた。
だからだろうか。まだ暫く続くだろうと思っていた刺客が来なくなり、遂に本命というか本番というか……最後の大勝負がやってきた。
「アデル様! キース様から至急の伝言です! 王都から、ご主人様……いえ、スタンリー家の領主、メイナード卿が私兵を連れてこちらへ向かって出発されたそうです!」
「来たか……父上」
「アデル様……だ、大丈夫でしょうか」
「あぁ、大丈夫だ。いつかこうなるだろうと思って、準備は進めていたからな」
刺客の対策に、城壁のような壁とアラート・キャットを配置していたが、もちろんこれで大軍は止められない。
この数日もガチャを回して大量のハズレスキルを得ると共に、新たなスキルを作り出している。
アポクエの世界で平和に暮らす為……勝負だ!
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