第66話 アサシン・ギルド
コーロスに転ばぬ先の夢スキルを使用し、アサシンとしての活動を封じた上で村から追放した。
壁の上に作った見張りの櫓から、コーロスが街道をトボトボと歩いて行くのを見送り、ひとまず一人目の刺客の対応が終わったと思ったところで、シモンが話し掛けてくる。
「……アデル様。あの者を帰して本当に宜しかったのでしょうか。汚れ役なら……くすぐりのような戯れではなく、アデル様を狙う刺客を闇に葬りますが」
「いや、そこまでしなくても良いよ。俺やシモンの手を汚させる程の相手ではなかったしね」
「わかりました。ひとまず俺としては、アデル様のお考えに従います」
とりあえず、シモンも納得してくれたようで、二人で櫓を降りる。
コーロスが帰れば、先程俺たちが行った事がアサシン・ギルドに共有されるだろう。
暫くは、あの手この手を使った刺客が来るだろうが、転ばぬ先の夢スキルでアサシンとしての活動を封じ、この村へ来ると戦闘行為や暗殺行為などが出来なくなる……と分かれば、いずれアサシンが来なくなるはずだ。
なんてったって、ギルドメンバーが実質引退する訳だからな。
アポクエにおいてアサシンは、主人公側に一人も居ない敵専用の職業となるし、アサシン・ギルドで何かする事でイベントをクリアしたり、特殊なアイテムを入手したりという事はない。
なので、この方法を暫く続け、アサシン・ギルドが俺の暗殺という依頼を請けなくなるように仕向ける訳だ。
そんな考えを基に、日々の業務をこなしていると、
「……こほん。シモン、例の件だ……」
「わかりました。では、次の手続きを行いますので、こちらへ……」
数日後に早速二人目の刺客がやってきた。
だが、俺のスキルであっさりアサシン・ギルドからの刺客だと見抜かれ、前回のコーロスと同じく牢屋へ入れられる。
「おい! こんな所へ入れて、どういうつもりだ!」
「ん? 前の刺客の奴から聞いていないのか?」
「前の刺客? 何の話だ! 俺はここへ狩人の仕事をしに来ただけだ!」
そう。こいつは実際に弓矢を持って来ているし、ディテクト・マインドスキルでも、職業は狩人と表示されていた。
なので、嘘は吐いていない。
そういう意味では、コーロスにあえて教えた獣人族が嘘を見抜くスキルを持っているという情報について、アサシン・ギルドで対策を考えた上での人選なのだろう。
ただ、そもそもその情報が嘘なんだけどな。
実際は嘘を見抜く訳ではなく、俺への感情を見るスキルだ。
こいつは、ディテクト・マインドスキルを使った時に、「ヒャッハー! ガキが村を歩いているところを射貫くだけで、白金貨三枚だぜ!」と、表示されていたから、確実にアサシン・ギルドの刺客と言えるんだよ。
「狩人の仕事ね……それで白金貨三枚か」
「そうそう……って、どうしてそれをっ!? ぜ、前任者の奴が喋ったのか!」
「ふっ……語るに落ちたな。今ので、お前がアサシン・ギルドからの刺客だというのが確定したぞ」
「なっ!? クソッ! 鎌掛けやがったな!?」
刺客が叫ぶが、もちろん鎌を掛けるまでもなく俺のスキルで黒が確定していた。
だけど、この方が悔しがりそうだと考え……見事的中したようだ。
という訳で、コーロスと同じ様に転ばぬ先の夢スキルを使ってアサシンの活動を封じ、武器を没収して村から追い出した。
まぁあくまで暗殺稼業をしようとすると眠ってしまうが、魔物相手の真っ当な狩人としてなら活動出来るので、足を洗って新たな人生を歩んで欲しい。
そもそも、人を一人暗殺して、白金貨三枚……日本円で約三百万円って安くないか? 日本の感覚だから、そう感じるだけか?
「シモン。村の領主の暗殺の報酬が白金貨三枚って妥当なのだろうか?」
「すみません。流石に分かりかねますが……元より何処かの街や村に定住していないのでしょう。別の土地へ移って身を隠す事に何の抵抗も無いのかもしれません」
なるほど。
日本みたく犯人の写真が出回ったりせず、せいぜい似顔絵だから、他の土地へ行ってしまえば、他人の空似で押し通せたりするのだろう。
それから数日が経ったある日……
――ピーピピピー――
遂に移住を装った潜入を諦めたのだろう。夜中にアラート・キャットの草笛の音が鳴り響いた。
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