第65話 アサシンギルドからの刺客
「おいおい。俺はこの村で働く為にやって来たんだ。それなのに、アサシン呼ばわりは酷くないか?」
「残念ながら、貴方の嘘は全て筒抜けです」
南側が扉で、西側が鉄格子。北側と東側が壁という部屋に閉じ込められたコーロスが何とか出ようとしているが、扉は勿論鍵を掛けているし、壁は土を固めただけでなく、鉄板を重ねて壊せないようにしている。
そして、もう黒だと確定しているが、こちらもバカ正直に手の内を晒す気はないので、俺のスキルの力だとは教えない。
「獣人族には、嘘を見抜く能力がを持つ者がいるんだが……知らないのか?」
「なっ……そんなスキル聞いた事がないぞ!? 嘘を吐くな!」
「まず、フーツーという名前は偽名ですよね? 本名はコーロス。商人として働きたいと言っていましたが、両手に二本の短剣を持った戦い方を得意とする双剣士ですね? 十八歳と言っていましたが、実際は十六歳……嘘ばっかりですね」
移住手続きの担当を行った獣人から聞いた……という体で、ディテクト・マインドのスキルで知った事を指摘すると、コーロスの顔が大きく歪む。
「チッ……そんな事まで分かるのか。だがな、俺の武器を奪わなかったのは失敗だったな! こんな鉄格子くらい、訳ねぇんだよっ! ≪ファング・クラッシュ≫!」
コーロスが何処からともなく取り出した二本の短剣を同時に振るい、左右から短剣で鉄格子を挟むように斬る!
二本の短剣で繰り出されたスキルによって、攻撃された鉄格子が……傷一つ付かず、何も起こっていない。
その一方で、コーロスが手にしていた二本の短剣の刃にヒビが入った。
「なっ!? この程度の鉄くらい簡単に斬れるはずなのに……な、何故だ!?」
「先日まで、この村には勇者様や聖騎士様に、賢者様が居たんですよ? そんな要人が滞在していた村です。普通の牢な訳がないでしょ」
実際は、鉄鍛造スキルを使って普通の鉄格子を作っただけで、外壁にも掛けているプロテクションスキルを使用しておいただけだったりするが、それも教える必要はないからね。
「ふっ……で、どうする気だ? 言っておくが、俺は何も喋らねぇ。近付けば、まだ隠し持っている武器でお前たちを殺してやるぜ」
「いや、近付く必要はないですよ。普通に魔法で攻撃出来ますし。≪フリーズ・アロー≫」
「なっ!? ただ運が良いだけの無能領主って話じゃなかったのかよ!」
あー、その言い方はランディが俺たちを襲って来た時と同じだな。
つまり父親が依頼者という訳だが……まぁこれも分かっていた事だから、もうコーロスから得られる事は無さそうだ。
という訳で、フリーズ・アローで足を凍らせて動けなくすると、土の床からニョキニョキと土を伸ばし、コーロスの両手を動かなくする。
「アデル様。では、後は俺が」
「じゃあ、申し訳ないけど、後は任せるよ」
俺がここにいる間、移住手続きが止まってしまっているので、コーロスの事はシモンに任せて牢屋を後にする。
「お、おい。待ってくれ。俺を殺したら、第二、第三の刺客が……」
「お前をどうしようと、どうせまたやって来るだろ。だから、領主様を狙おうとするバカな奴らが一人も現れないようにするまでだ」
「う、嘘だろ!? そ、そんな……うわぁぁぁっ!」
背後からコーロスの悲鳴が聞こえてくるが、そのまま外へ。
暫く通常業務に勤しんでいると、シモンがやってきた。
「アデル様。お待たせしました。奴はもう……」
「わかった。後始末は俺がするよ」
再び牢屋へ戻ると、ピクリとも動かないコーロスが床に倒れていた。
なので、早速後始末用のスキルを使用する。
「≪転ばぬ先の夢≫……アサシンとしての活動全般」
これは、『転ばぬ先の杖』スキルと『予知夢』スキルを組み合わせたもので、意識が無い相手にしか使えないが、指定した行為をしようとすると眠ってしまうというスキルだ。
村にいる鍛冶師にかなり無理を言って作ってもらった、くすぐりマシーンをシモンが使って、コーロスをくすぐり倒してくれたので使う事が出来た。
後は、持っている武器の類を没収したら、
「≪ファスト・ヒール≫」
『スロー・ヒール』と『ファスト・ポイズン』を組み合わせた治癒魔法で、コーロスを目覚めさせる。
「では、貴方を解放します。二度と村には入れないのでそのつもりで」
「え? 帰って良い……のか?」
「えぇ。一つだけ貴方に忠告しておくと、アサシンギルドから足を洗って、別の仕事に就く事をお勧めします」
コーロスは双剣士だからね。ランディみたく冒険者になれば、突然眠ったりする事はないと思うけど……さて、どうなる事やら。
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