第60話 再会
「おかえりなさい。ブレアさん。今日はどんな感じでしたか?」
「領主さん、ただいまー! えっとねー、途中で罠に引っかかっちゃってねー。やっぱりシーフ系の人が居ないと厳しいかも……っていう話をしていたんだー」
罠……あー、という事は地下二階のところか。
罠といえば罠だけど、一つ下の階層に落ちるだけだし、しかもご丁寧に地下二階へ戻る階段まで用意されている。
これは、アポクエがRPGだからね。
落とし穴に落ちたら、ブービートラップで全滅……なんて事になったら、間違いなくクソゲー認定されるだろう。
しれに、落とし穴に落ちる度にダンジョンから脱出する魔法を使わないといけないってなれば、その魔法を使えるメンバーが居なかったり、魔力切れ状態だったら完全に詰む。
もしも俺がそんなゲームのプレイヤーだったら、間違いなくメーカーにクレームのメールを投げ、SNSでブチ切れているだろうな。
「という訳で、近くの街にあるシーフギルドから腕利きのシーフさんを呼ぶらしいので、もう少しお世話になりますね」
そう言って、ブレアたち一行が宿へ向かって行った。
アポクエは基本的に四人パーティで、ゲストキャラが入っても五人が最大だったんだが……七人パーティになるのだろうか。
アポクエに準拠するなら、ブレア、聖騎士、賢者、盗賊の四人パーティが良いと思うんだけど……まぁ俺がどうこう言う事ではないだろう。
俺としては、早くブレアがこの村から離れてくれれば何でも良い。
そういう意味では、ダンジョンのボスとも言うべき魔物の弱点とかを教えたいところだけど、どうして知っているんだ? という話になるのが目に見えている。
まぁ聖騎士と賢者が居るなら、きっと勝てるだろう。
それから数日は、ブレアが言っていた通りシーフ待ちとなったようで、ブレアたちはのんびり過ごし、聖騎士と賢者は……
「第一隊は僕と森へ。第二隊は賢者殿の護衛を!」
「今回は少し特殊な魔法を使うので、術式を組んでいる間の護衛をよろしくお願い致します」
村の周辺の警戒だろうか。
村に居る兵士や傭兵などを連れて、死の山の方へと向かって行った。
……何というか、現時点では足手纏いと言えるブレアたちを置いて、そのメンバーで遺跡のダンジョンへ行けば余裕で勝てたりするのではないだろうか。
実際、どんな罠があるかわからないと思っているだろうから、そんな事はしないと思うけど、あの落とし穴の後に大した罠は無いんだよね。
そんな事を思いつつも、数日後にはキースさんの馬車がやってきた。
「おにーちゃーん! あれ、キースさんの馬車じゃないかなー?」
「……そうだな。いつもの定期便……とは少し日が違うきがするな」
タチアナに呼ばれて見に行くと、いつものキースさんの馬車が向かって来ているのだが、コートニーの店の在庫補充であれば、普段はまだ数日後のはずだ。
何かあったのだろうかと思って様子を見ていると、俺に挨拶した後、誰かを連れてブレアのところへ。
あぁ、なるほど。ブレアが言っていたシーフを連れて来たのか。
ブレアと少し話した後、すぐにキースさんとシーフらしき男性がこちらへ向かってきた。
「アデルさん。勇者様からの依頼で、シーフギルドの方をお連れしました」
「初めまして。シーフギルドから派遣されてきましたランディと申しま……」
ん? 挨拶しに来たランディが、途中で微妙な顔をして固まっ……って、おい!
「お前は……あの時のっ!」
「お、お待ちください! あの時は本当に申し訳ございませんでしたっ!」
ランディが俺の名前を聞き、顔を見たところで固まった理由が良く分かった。
だが、その一方で、訳が分からないと言った様子のキースさんが、土下座する勢いのランディを見て、とにかく困っている。
「あ、あの、アデルさん? こちらのランディ氏とは知り合い……なのでしょうか?」
「知り合いも何も、俺はこいつに殺されそうになったんですよ」
「え? ど、どういう事ですかっ!?」
キースさんが驚いているけど、どういう事なのかは俺が聞きたい。
実家を追い出されてハルキルク村へ向かっている時に、俺たちの馬車が襲われ、クレアが毒で死にかけた。
あの時の刺客が、このランディなんだよっ!
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