第59話 急激に発展したハルキルク村

 ブレアが沢山の大きな馬車を連れて来て、早一か月。

 既に街と言って差し支えないのではないかと思える程に、ハルキルク村が大きくなってしまった。

 村へと通じる街道が整備され、元々の村を第一居住地として、その隣に第二居住地が作られたかと思うと、あっという間に二つの居住地の間に大通りが出来ていく。

 ちなみに、第一居住地にあったコートニーの店は、職人さんたちによって元の位置から大通りに面するまで大きく広げてもらい、この村で一番大きな店となっている。

 後から来た商人たちは、一店舗だけズルいと言うが、この村を発展させた立役者の一人だというと、だいたい納得してくれた。


「すみません。領主様、移住の許可をいただきたいのですが。四人家族で、農業を営むそうです」

「じゃあ、第三居住地へ住んでもらおう」

「領主様ー! えっと、商売の許可が欲しいんだってー! 鍛冶屋さんらしいよー!」


 第一居住地は、俺の……領主の屋敷があるからか、市役所的な役割も担っているのだが、住人や住居希望者が様々な手続きをしにくるので、とにかく忙しい。

 ブレアが……勇者一行が遺跡をクリアするまでの一時的なものだとは思うが、人が多過ぎるので、最近は第三居住地が出来た程だ。

 ……もう俺じゃなくても、シモンやクレアが承認しても良いのではないだろうかとは思う。

 ただこの国の法律で、移住したり商売を新たに始めるには、必ず領主の許可を得ないといけないそうなので、どうしようもないが。


「アデル様。農場を広げるという話ですので、例のものをお願いできますでしょうか」

「わかった。用意しておくので、二時間……いえ、一時間後に来てくれ」

「すみませんが、よろしくお願いいたします」


 先程の農業を営む家族用の場所を割り当てると言って、シモンがやってきた。

 移住や商売については領主が対応しなければならないが、その反面土地の割り当ては何も定められていないので、こういう話はシモンに任せている。

 だけど、以前は畑を含めて俺がスキルで魔物対策をしていたが、その土壁や堀を作る時間がなかなか作れない。

 という訳で、この一か月……三十日間で得た約三十個のスキルを使って作った、新たな魔物対策をシモンに任せる事にしている。

 なので、以前は小さな村の為……住人が少ないので免除されていた国に提出しないといけない書類を作る合間で、スキルを使っていく。


「≪ライトニング・ネット≫」


 日本のテレビで見た電気柵をヒントに、電流……というか、触れると弱い雷魔法が流れる網を作り出す。

 魔力を流さなければただの網なので、入り口だけ木で作り、支柱を立てれば誰でも畑を囲う事が出来る。

 これを作るのは中々大変で、あやとりが上手に出来る『あやとり』スキルと、前にも取得していた事のある『グロウ・ビーンスプラウト』を合成させて、『ストレッチ・ストリング』という紐を伸ばすスキルを作成。

 更に、溜めた静電気を他の物質へ移せるという『静電気移し』スキルと、前に取得していた『シール・ソード』を合成して、何かに帯電させられる『シール・ライトニング』というスキルを作成。

 そして、この『ストレッチ・ストリング』と『シール・ライトニング』を合成して、ようやく出来たスキルとなる。

 もちろん必要最低限で作れた訳ではなく試行錯誤したので、雷雲を作り出す『サンダークラウド』や、投網を打ち出す『キャスティング・ネット』など、いろんなスキルも得てしまったが。


「あ! おにーちゃーん! ブレアさんたちが帰ってきたよー!」


 テレーズの声で目を向けると、ブレアたち四人……に二人加わった、六人が戻ってきた。

 この二人というのが、王国騎士団のエースとも言うべき聖騎士の青年と、宮廷魔術師のエースで若干二十歳で賢者と言われている女性……って、チート過ぎないか!?

 アポクエにそんなキャラ出てこないからな!?

 主人公たちがイベントを無視し、強キャラを連れて、順番無視の強行アイテム奪取を目指していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る