第51話 村で過ごすブレアたち

 ブレアとオリヴィアが村の外れに作った土の家に住み始めて、早数日。

 最初は申し訳なさそうに、食事も断ってタチアナの家の片付けていた程なのだが、流石に飲まず食わずで身体を動かし続けられる訳もなく、今ではクレアが作った料理を一緒に食べる程となった。

 そして、家の片づけが済んだ今、タチアナとトマを加えた四人で、森の中から薬草やキノコ、木の実に魔物の素材を集める担当になっている。


「アデルさん。ただいま戻りましたー!」

「おー、おかえりー! どうだった?」

「うんっ! タチアナさんの指示通りに行ったら、沢山採れましたー!」

「そっか。タチアナ、ありがとう」


 ちなみに、タチアナたちは家を失ってしまったので、ブレアたちが泊まっていた宿で寝泊りする事になった。

 テレーズの寝相が悪く、夜中にベッドから落ちているとタチアナから聞いたので、今は二つのベッドをくっつけて使ってもらっている。

 この数日は、村の環境改善に取り組み、村の回りの堀に湖から水を引き込んで守りをより強固にしたり、倉庫を増築したり、クレアによるお料理教室が定期的に開かれるようにした。

 あと、俺的に大事な事として、


「うー……領主様ー! ここ、わかんないよー!」

「あぁ、これはね……」

「おにーちゃん! テレーズも教えてー!」


 住人で手の空いている者に、俺が読み書きと算術を教える事にした。

 本当はちゃんとした日本の小学校みたく、地理や歴史に、理科や図工に音楽……と、いろいろやりたい事はあったんだけど、地理と歴史は俺がアポクエに登場する範囲しか知らない。

 理科は、ソフィたちだけでなく、クレアにすら理解されなかったのと、図工と音楽は俺が得意じゃないくて、体育に至っては圧倒的にソフィたちの方が優れている為、結果的に算数と国語だけになってしまったが。

 とはいえ、読み書きと四則演算は最低限出来るべきだと思うし、いきなり沢山詰め込むのもどうかと思うので、案外丁度良いのかもしれない。

 あと、ポイントが貯まったので、十連ガチャも引いている。

 得られたスキルは、こんな感じだ。


『スロウ・ヒール……遅効性の治癒魔法で、一年かけて怪我を治す』

『浄化:塩……塩を用いて、不浄の相手にダメージを与える』

『薬嚥下……薬が上手に飲める』

『転ばぬ先の杖……杖装備時に転びにくくなる』

『攻撃力UP:スカート……スカート装備時に攻撃力が向上する』

『組立手順アレンジ……手順に沿って何かを組み立てると、何故か部品が余るが、ちゃんと出来上がる』

『ダメージUP:光魔法……光魔法で攻撃した際に、与えるダメージが増える』

『目分量……ざっくり入れた量が、丁度良くなる事がある』

『スロー・ハンマー……金槌を遠くまで投げられる』

『シール・ソード……1度だけ、対象の剣が鞘から抜けなくなる』

『器用さUP(弱):扇……扇を装備している時、器用さが微増する』


 何というか……光魔法のダメージが向上するというのは、一見凄く良さそうに見えるんだけど、アポクエの光魔法は殆ど治癒系と支援系しかないんだが。

 一つか二つくらいはあった気もするけど、光魔法の相当は熟練者しか使えないんだよ。

 俺は努力で一通りの攻撃魔法が使えるようにはなっているけど、当然光魔法での攻撃魔法は使えない。

 あとは、『シール・ソード』と『器用さUP(弱):扇』が、スキル合成で使ったものを再び授かった訳だけど……また何かに使えるだろうか。


「あ、私はヴィンスとベンの食事に行ってきますね」

「俺も一緒に行くよ」

「ありがとうございます」


 オリヴィアが、未だに魅了の解けない二人に食事を持って行く。

 だが、拘束を解く訳にもいかず、猿ぐつわを少しだけずらして、食べさせてあげる……というのをここ数日行っている。

 ヴィンスは魔法が使えないので問題ないのだが、ベンは魔法を使うので慎重に行う。

 そして、


「では、魅了が解けたかどうかの確認をしますね」

「こっちも……あぁ、丁度クレアが来てくれたよ」

「で、では……えいっ!」


 オリヴィアが恥ずかしそうにしながら、少しだけスカートを捲り上げると、ヴィンスが穴でも開くんじゃないかってくらいに凝視する。

 その一方で、メイド服姿のクレアがくるりとターンすると、スカートがふわりと広がり……うん。ベンもガン見だな。


「残念ながら魅了はまだ解けていなさそうですね」

「こちらもです」

「二人共、魅力的だからこの方法だと凝視してしまうのは仕方がない気もするんだが……」


 果たして魅了状態の確認方法がこれで良いのか少し疑問に思っていると、


「アデルさんも、私の脚……気になりますか? その、少しくらいなら……」

「アデル様! 私が大人の女性の良さを教えてさしあげます!」

「違っ! ちょ、待った! そういうつもりで言ったんじゃないんだっ!」


 失言のせいで、大変な事になりかけてしまった。

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