第50話 魅了の解除
「えっと、ひとまず私が状態異常を解除出来ないかやってみます」
地面に仰向けに倒れ、土を固めるスキルで身動きを取れなくしたヴィンスに僧侶の少女が近寄り、集中する為に目を閉じる。
それを良い事に……というか、むしろそんな事お構いなしといった感じでヴィンスが僧侶の太ももをガン見しているが、無事に魔法が発動した。
「≪キュア・カース≫」
これは、アポクエの呪いを解く神聖魔法だ。
だがこれではなくて、魅了を解くキュア・チャームか、全ての状態異常を治すリフレッシュの魔法ではないと治せないはずだ。
「……」
「うわ……まだヴィンスがオリヴィアの脚を見てる」
「す、すみません。私の力不足で、解除出来ないようです」
オリヴィアと呼ばれた僧侶の少女が、悲しそうにペタンと座り込むと……更にヴィンスの視線が露骨になった。
というか、もうオリヴィアのスカートの隙間しか見てないよな。
「オリヴィアさん。キュア・チャームという魔法は使えませんか?」
「すみません。そういう魔法がある事は知っているのですが、まだ使うには至らず……」
まぁキュア・チャームが使えないのに、その上位であるリフレッシュが使えるとは思えないので、別の方法を試す必要があるな。
ひとまず、村の端でロープでグルグル巻きにされ、魔法を使うので猿ぐつわを噛まされているベンも、ヴィンスの近くへ連れて来てもらった。
ちなみに、ヴィンスがフレイム・アローの魔法を使ったのは、俺が火魔法を付与した剣のおかげだという事が判明したので、剣を持たせていないので、魔法を使われる事はない。
だが、念には念を……という事で、ヴィンスにも猿ぐつわを噛ませ、ついでに目隠しもしておいた。
「そういえば、ベンはオリヴィアの事を見たりしないね」
「多分……メイドさん好きか、年上好きなんじゃないかな? ずっとクレアさんの事を見ているし」
「……あ、アデル様。こちらの方にも目隠しをお願い出来ますか?」
クレアが物凄く疲れた様子で俺の背中に隠れると、シモンがベンにも目隠しをする。
これでこの二人が暴れる事はないが……放置で治るのだろうか。
アポクエだと、魅了は術者を倒すか、時間経過で回復する。
だけど、後半に現れるサキュバスと、序盤の能力しかないヴィンスたちに実力差があり過ぎるからだろうか。
朝に魅了されたという話で、もう昼なのだが、一向に治った感じがしない。
「……そうだ! あれだっ!」
「アデル様。何か、良いスキルがあるのでしょうか」
「いや、少し時間はかかるけど、高確率で治せそうな方法を思い付いたからさ」
スキルを試してみても良いのだけど、キュア系のスキルは現状キュア・ポイズンとキュア・ホールしかない。
これが命に係わる話だったり、村人が掛かっているのであれば、どちらかのスキルを合成に使って、魅了を解こうと思う。
だけど、今回は俺の忠告を無視した上に、被害まで受けているからな。
キュア・ポイズンは何かあった時の為に残しておきたいし、キュア・ホールは村の為に必要なスキルだ。
なので、放置する訳でもないし、時間が掛かる方の対応が出来るまで、このままで居てもらおう。
という訳で、その対応をすべく、村の倉庫へ。
「あっ! なるほど。こちらですか」
「あぁ。ついでに、今回の事でいろいろと必要になるから、それも依頼しておこうと思って」
「そうですね。ブレアさんたちも、この村で勤労奉仕されると仰っていましたし、住む場所が必要ですもんね」
あー……それな。
俺としては、勤労奉仕もやらなくて良いから、即刻村から出て行ってもらって、勇者のコネで王族とか貴族とかから金銭で対価を支払ってくれれば良いのだが……クレアが完全に村の住人が増えると思い込んでいる。
い、言い難いな。
ひとまず、クレアと共に、これから必要となるものを依頼し終えたので、シモンの所へ。
「シモン。あのブレアさんたちの事なんだが……」
「私はアデル様のお考えに反対は致しません。ですので、村のはずれに住んでもらうとかであれば構わないかと」
いや、違うんだ! 俺はシモンに反対してもらいたかったんだ!
ひとまず、ヴィンスとベンの魅了が解除されるまではブレアたちが村に居るのは仕方がないと考え……数日後に依頼したものが到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます