第27話 畑の改革
「よし。これで大丈夫かな」
修復して塗装した屋根から降り、少し離れた場所から確認して……うん。たぶん大丈夫だろう。
塗料が完璧に乾いたら、後で水魔法を使って各家で雨漏りしないか確認したい。
とはいえ、俺が使える水魔法は初級の攻撃魔法だけなので、そんなに大量の水は出せないが。
「アデル様、お疲れさまでした。屋根を修復すると聞いていたので、危ないと思っていたのですが、まさかあんな方法で屋根に上がるとは思っていませんでした」
「あはは。まぁこれくらいの高さなら、よじ登る事も出来るんだろうけど、変に登って崩れたら困るからね」
クレアからタオルを受け取り、汗を吹きながら、改めて土を凝縮するスキルが優秀だと思う。
今回のように土を階段状に固めれば、簡単に屋根で作業が出来たし、物凄く硬く土を凝縮して屋根の壊れている箇所を埋め、塗料でコーティングする。
普通の雨なら大丈夫だろう……という事で、最初に修復した家に行くと、空に向かって水魔法を放つ。
「≪ウォーター・ブレット≫」
極力威力を下げて発した水の弾丸が、重量によって屋根に落ち……うん。水の量が少な過ぎるけど、塗料が水を弾いているし、水漏れはしない……かな?
という訳で、ようやく村の各家の改善が完了した。
「次は……そうだ。あのポテトを村の特産品だって言ってしまったんだ。流石に、何か植えられていないと変に思われるよな」
以前に、この村は大豆を作っていたとシモンから聞いている。
とりあえず今植えて、キースさんが来る時までに目が出ていれば、一応の形にはなると思うけど……見る人が見れば、ポテトじゃないってわかるよな。
「……そうだ。≪クリエイト・ポテト≫」
ちょっと思い付いた事があって、芋生成スキルでサツマイモの種芋を出してみた。
これを植えたら、サツマイモの芽が出る……と思いたい。
ひとまず畝はあるので、シモンに許可を取り、幾つか植えてみようと思うんだけど……確か先に種芋を発芽させるんだっけ?
昔、家で親とサツマイモを植えた事があるんだけど、植える前から種芋から芽が出ていた気がする。
けど、芽が出るのって、買ってきた芋をかなり放置しないといけないよね?
いろいろと考えていると、クレアが心配そうに覗き込んできた。
「アデル様? どうされたのですか?」
「え? いや、この畑にポテトを植えようと思うんだけど、芽が出た状態で植えた気がしてさ」
「なるほど。ポテトを植えた事はありませんが、お屋敷では一週間以内にはポテトを使い切っていた気がします」
つまり、一週間以上放置しないと、芽が出ないって事で……どうしよう。
流石に早く発芽させたりするようなスキルは……いや、あるな!
「≪スキル合成≫使用。グロウ・ブランチと好感度UP(弱):植物」
――『グロウ・プラント』スキルを入手。植物を急成長させます――
狙った通りのスキルが出来たので、早速目の前のポテトに使ってみる。
「≪グロウ・プラント≫」
イメージは発芽して、ちょっと芽が伸びた状態だ。
暫く様子を見ていると、早送りで見ているかのようにニョキニョキ芽が伸びて……いや、そろそろストップ!
なんとなくだけど、良い感じに芽が出てきたように思えるので、畝に埋めて、少し水を与えると、再び成長魔法を使用する。
「わぁ……アデル様。これ、凄過ぎませんか?」
「そう……だね。自分でやっといて何だけど、見事に育ったね」
つい先程までは草すら生えていなかった畑に、一株だけとはいえ、青々としたツルが伸びている。
試しにそのツルを引っこ抜いて……いや、重い!
中々抜けずに頑張っていると、クレアが俺の後ろに立ち、俺を引っ張る……というか、密着し過ぎじゃないか?
逆に動き難いんだが。
そんな事を考えつつも、ツルを引っ張っていると、
「何々ー? 楽しそう! ソフィもやるー!」
斜め後ろからソフィも俺に抱きつき……って、ソフィの力で引っ張られるのはヤバいっ!
そう思った時には、ソフィ共々倒れ込み、柔らかい何かに頭が包み込まれる。
これは……
「領主様、凄ーい! 大っきいー! こんなに大きくなるんだー!」
「アデル様、大丈夫ですか? でも、本当に立派ですね。こんなに大きくなっているのは、初めてみました」
ソフィとクレアが揃って下の方に目を向けている。
何だと思って目を向け……確かに大きなサツマイモが、抜かれていた。
と、とりあえず成功なので、次は大豆かな。
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