第26話 家の修繕
「わぁ! アデル様……これは、凄いです! お一人でここまでされたのですか!?」
「うん。とは言っても、まだ壁しか終わってないけど」
「いえ、十分ですよ! 昨日戻る時に泊まった、隣の村の宿に勝っている気がします」
クレアに見てもらうと、べた褒めされてしまった。
まぁ元がボロボロの倉……というか、倉庫代わりに使われていた小屋だったからね。
壁の板を綺麗に修復し、塗料を塗っただけでも見違えたと思う。
「しかし、小屋は綺麗になったけど……ベッドもテーブルも無いんだよな」
「そもそもベッド自体がこの村にありませんからね。テーブルや椅子も余っていたりしないでしょうし」
穴を塞ぐスキルと塗装スキルを使って壁を綺麗に出来る事はわかった。
そこそこの大きさの板であれば、幾らでも手に入れる事が出来る。
祭があった村で工具も購入しているし、テーブルや椅子を作れば良さそうなんだけど……何かを作るようなスキルはあったかな?
そんな事を考えていると、一緒に見ていたタチアナが口を開く。
「領主様。キースさんは、長期滞在する訳ではありませんよね? でしたら、泊っている間だけ、うちのテーブルと椅子を使ってください」
「えっ!? 良いのか?」
「はい。うちは兄のトマと妹のテレーズの三人家族です。しかし、元より椅子が二脚しかありませんので、普段からトマは椅子を使っていませんから」
それはそれでどうかと思うので、次はキースに家具を依頼しようと思いつつ、今回はタチアナの案に甘えさせてもらう事にした。
もちろん壁を直したのと同様に、テーブルの穴を塞いで、塗料を塗っている。
とはいえ、椅子はまだしもテーブルを土で直すのはどうかと思ったので、穴状ではない所は修復出来ていないが。
「よし。じゃあ、せっかくだし村の家の壁と木製の家具は全てなおしていこうか」
「えぇっ!? 本当ですかっ!? じゃあ、せっかくなのでお願いします。実は結構隙間風があって、夜寒いんですよ」
「わかった。では、パパッとやってしまおう!」
という訳で、タチアナの家を皮切りに、家の壁と家具を順番に修復し、塗装する。
元倉庫を含め、十件近くの家の壁と家具を全てなおしたので、流石に疲れた。
塗装スキルがあると言っても、あくまで上手に塗料が塗れるだけであって、一瞬で塗り終わったりするようなスキルではないしね。
「アデル様、お疲れ様です。お茶を淹れましたので、どうぞ」
「ありがとう」
シモンの家で休ませてもらっていると、クレアが隣の村で買ったお茶を淹れてくれる。
あのお祭り村では、キースから食料を買うし……と、食材関係を殆ど買わなかった。
だけど即日来てくれる訳ではないからと、帰る途中で一泊した隣の村で、クレアがいろいろと買ってくれて良かったな。
そんな事を考えながら、淹れてもらったお茶を飲み、一息ついていると、何処からともなく風が吹いてきた。
……壁はしっかり修復したし、ドアは閉まっている。
あとは……窓か。
だが、そもそもガラスも無い、ただの小さな穴なので、これは風が吹いても仕方が無いか……と思って何となく上を見ると、屋根に拳大の穴があった。
「あ……屋根の事をすっかり忘れてた」
「しかし、屋根は危ないので、そこまでしなくとも……」
「いや、雨が降ったら雨漏りするだろ? もしも夜中に大雨が降ったりしたら最悪じゃないか」
という訳で、再び全ての家の屋根を修復し、塗装しようとしたのだが、クレアが頑として譲らない。
「ダメです! 今はお疲れなのに、無理をして屋根から落ちたらどうするんですか! この村には病院もありませんし、薬もユスティーナさんのところで買った分しかありません! あれは村の住人の為に買った薬ですよね? それなのに、最初に使うのがアデル様……なんて事になって良いのですか!?」
うーん。二階建てや三階建てならともかく、普通の一階建ての屋根をなおすだけなので、仮に落ちたとしても大した事はないんだけど……ダメなのか。
「いや、確かに疲れてはいるけど、動きが鈍くなるような程では……」
「ダメったらダメです! ……あ、でしたら、今から私と一緒にお昼寝をしましょう。ゆっくり休んで、しっかり回復してからでしたら、良いですよ」
「まぁそこまで言うなら……」
クレアに押し切られ、寝室を借りて仮眠を取る事にしたのだが……いや、どうしてクレアが同じ布団に入ってくるんだ?
「クレア?」
「何でしょう? 一緒にお昼寝するんですよね?」
「いや、そうだけど、同じ布団で寝るとは……」
「タチアナさんやテレーズちゃんとは、同じベッドで寝ていましたよね? 何か問題が?」
何故だ? どういう訳かはわからないが、クレアの圧が凄くて……一緒に眠る事になってしまった。
タチアナやテレーズとクレアでは、年齢が違……あ、はい。何でもありません。
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