第22話 査定

「うん、これは凄い。この馬車の荷台にあるものを全て買い取らせて欲しい。白金貨二枚でどうだ?」


 白金貨は大金貨の十倍だから……二百万円!?

 それだけあれば、いろいろ買えるっ!


「わかりました。では、それでお願いします」

「おぉっと。即決だな。どうする? 街の商人ギルドで査定を受けるかい?」

「いえ、ユスティーナさんの紹介ですし、何より商人ギルドのB級を掲げている訳ですから、信じますよ」

「そうか。じゃあ、こっちの馬車へ荷物を乗せ換えさせてもらうぜ?」

「えぇ、構いません。手伝います」


 そう言って、荷物の積み替えをし始めると、タチアナとテレーズも手伝ってくれて……うん。分かっていたけど、俺やキースよりも圧倒的に運べる量が多いね。

 あっという間に作業が終わってしまった。


「じゃあ、代金だ。普段はラゼロンの街を拠点にしているから、またワイバーンの素材が手に入ったら、高値で買い取るぜ」

「それなら、うちの村へ来てもらえれば、沢山あるんだけど」

「え? ど、どういう事だ?」

「いや、今回はどれくらいの需要があるのかって調査を兼ねていたから、ほんの一部しか持ってきていないので。村の倉庫には、買い取ってもらった十倍以上ありますよ?」

「え……えぇぇぇっ!?」


 これは本当。穴を塞ぐスキルで大量に増やしたけど、それによる値崩れを恐れたのもあるし、一気に沢山運ぼうとすれば重量が増えて、一頭しかいない馬が疲れちゃうしね。

 二頭立てとか四頭立ての大きな馬車を買えば、もっと一気に運べるけど、今は馬車よりも優先すべきものが沢山ある。


「い、今言った、ワイバーンの素材が十倍以上あるっていうのは……ほ、本当なのか!?」

「えぇ。あ、でも骨はいろいろと使ってしまったから、今残っているのは翼くらいだけど」

「いや、ワイバーンの素材で一番需要があるのが翼だからな。えっと、アデルたちはどこの村から来たんだっけ?」

「ハルキルク村ですよ」

「ハルキルク村か……って、ハルキルク村!? そうか……死の山が近いし、魔物が多いのか。これは盲点だったな」


 よし。キースが食いついた!

 商人だけあって、キースの馬車は大きな六頭立ての馬車だ。

 これは、様々な商品を積んで村へ来てもらった方が、いろいろと都合が良いな。


「キースさん。ハルキルク村は、食料や衣類、毛布の類に需要があります。もしも運んで来てくだされば、大半を購入しますよ。まぁ、だからと言って質が悪い物は困りますが」

「なるほど。街で仕入れてハルキルク村で売って、ワイバーンなどの素材を持ち帰る……か。距離的な問題もあって、今まで行った事がなかったけど、悪くないな」


 おっ! 良い感じだ。

 ここはダメ押しのもう一手だな。


「そうだ。ユスティーナさんに夕食を振舞うんですけど、キースさんもどうですか? 食材は多めに買ってあるので」

「おぉ、それは助かる。祭の間は商売が忙しいのと、観光客が多いのとで、村ではまともな食事にありつけなくてね」


 聞けば、宿は押さえているものの、祭の期間は食事が付かず、寝るだけの場所でしかないそうだ。

 尚更、ユスティーナさんに感謝しないとね。

 それから、キースさんも夕食に同席する事を伝え、ユスティーナさんの家のキッチンを借り、俺とクレア……と是非手伝いたいと言うタチアナとテレーズによる夕食作りが始まった。

 といっても、今回は俺がメインで作るので、二品しか作れないが。


「じゃあ、クレアはこの野菜を洗って千切りにして欲しい」

「わかりました……って、キャベツを千切りにするだけで良いのですか?」

「うん。俺の故郷……じゃなくて、友人から教えてもらった料理なんだけど、凄く簡単だからさ」


 クレアに作業をお願いすると、次は何かしたそうでウズウズしているテレーズとタチアナのところへ。


「テレーズはこのポテトを綺麗に洗って、タチアナは鍋でお湯を沸かして欲しいんだ。ポテトを茹でられるくらいのお湯を」

「わぁ! たくさーん! 頑張るねー!」

「この鍋が丁度良さそうですね」


 三人にそれぞれ作業をしてもらい、俺は村で買ってきた小麦粉を水で溶いて卵を混ぜ……うん。良い感じに出来た。

 クレアに切ってもらったキャベツと合わせ……そう、お好み焼きを作る。

 豚肉やソースが無いのは残念だけど、流石にこれは仕方がない。

 それから、テレーズが洗ったジャガイモをタチアナに茹でてもらい、同じく村で買ったバターを乗せて……じゃがバターが完成した。

 クレアやテレーズたちも、食べたことが無いという料理……大きなお好み焼きを皆で少しずつ切って食べるのが、吉と出るか凶と出るか。

 温かい内に食べてもらうため、早速食卓へ運ぶ事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る