第5話 新たなスキル
十年前はただただ自分が助かりたい一心でレアスキルを願った。
だが今は違う。
俺はどうでも良いから、クレアを助けたいんだっ!
本来ならば、屋敷で平穏に暮らしていたであろうクレアが、俺について来たが為に死んでしまうなんて、絶対に嫌だ!
お願いです! 何か治癒系のスキルを授けてください!
――『スキル合成』を授かった――
不意に、あのシステムメッセージ代わりの声が聞こえてた。
俺が授かったのは……スキル合成?
やっぱり治癒系のスキルではない……いや、待て!
スキル合成というスキルであって、合成スキルではないんだよな!?
これは、俺が持っているスキルを合成するという事で良いのだろうか。
いや、そうであってくれ! クレアを……クレアを助けたいんだっ!
「クレア、もう少しだけ待っていてくれ!」
苦しそうに顔を歪めるクレアの手を握り、必死に考える。
俺の約四千個もあるハズレスキル……これらを合成して、治癒系のスキルに出来れば、クレアは助かるんだっ!
だが手元に俺のノートがなく、どんなスキルがあるのか全ては思い出せないが……そうだ!
「≪スキル合成≫使用! キュア・レッグクランプスとファスト・ポイズン!」
つった足限定だが、一応治癒魔法であるキュア・レッグクランプスと、毒状態でのみ発動するパッシブスキル、ファスト・ポイズンを指定してスキル合成を使ってみた。
頼む……
――『キュア・ポイズン』スキルを入手。毒を治療出来ます――
「来たっ! ≪キュア・ポイズン≫」
狙った通りのスキルが作り出されたので、すぐさまクレアに使用すると、紫色に変色していた腕が白い肌に戻っていく。
それと共に、苦しそうな表情を浮かべていたクレアの顔が穏やかになり、ゆっくりと目が開いた。
「あれ? アデル……様!?」
「良かった! 本当に良かった!」
「あ、アデル様っ!? どうしてクレアを抱きしめて……」
「クレアが無事で本当に良かった。すまない……暫く、クレアの温もりを確認させて欲しい」
「ふぇっ!? ど、どうぞ……え、えっと、どうしましょう」
クレアが困っているので、無事である事も確認出来たし、一旦離れると、着替えの入った大きなカバンへ。
中から清潔なハンカチを取り出し、斬られたクレアの腕に巻いておく。
「あ、アデル様!? それはシルクのハンカチ……」
「毒は治療したけど、化膿したりしたら大変だからね。今は薬も無いし、消毒するまではそのままにしておこう」
クレアが小声でハンカチが勿体ない……と呟いているけど、いくら貴族のものとはいえ、ハンカチはハンカチだ。
これからの暮らしには余り役立ちそうにないし、気にする事も無いのに。
それから、遠目に街が見えたので、一旦進路を変えてクレアの治療をしてもらう。
薬局で傷薬を買い、先程の戦闘で投げてしまった諸々の物を買い足しておく。
少し道が逸れてしまったけれど、ここから更に数日馬車を走らせ、ついに死の山の目の前にやってきた。
「アデル様! あの村でしょうか!?」
クレアが声を上げたので、目世の先を追っていくと、小さな村があった。
おそらく、この村全体でも、スタンリー家の屋敷より少し広いくらいしかないだろう。
とはいえ、無事に到着した事を安堵する。
馬車を村の入口に停めると、腰の剣を外し、まずは俺一人で村の中へ。
「……って、誰も居ないんだが」
村に来た馬車を不審に思っているのか、誰も姿を見せない。
どうしたものかと思っていると、少しして痩せこけた獣人……頭から大きな猫の耳が生えた青年が姿を見せる。
「何者だ! 見ての通り、ここは貧しい小さな村。盗れるようなものはないぞ!」
「待ってくれ。俺はこのハルキルク村で領主代行の任を請けた、アデル・スタンリーという者だ。父から事前に連絡が……来ていないのか?」
「……そんな話は聞いていない」
まぁ俺を殺す刺客を送ってきたくらいだからな。
そもそもここまで辿り着かない想定だったのだろう。
「ひとまず見ての通り丸腰だ。馬車にもう一人居るのだが、代表者と話をさせてもらえないだろうか」
「この村の代表は俺だ。とりあえず話は聞こう」
まだ二十代前半といった感じの獣人男性がシモンと名乗り、クレアと共に三人で話をする事になった。
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