第2話 ハズレスキル
剣聖や賢者といった、レアスキルを引く事が出来れば確実に無能呼ばわりされず、辺境へ追放される事もないはず!
頼むっ! せめて普通のスキルを……ハズレスキル以外のスキルを授けて欲しいと思っていると、ゲームでいうシステムメッセージの代わりなのか、何処からともなく知らない声が聞こえてきた。
――『ハズレスキルガチャ』を授かった――
「……え? ハズレスキルガチャ!? どういう……事だ!?」
ガチャって……あのガチャだよな?
でもハズレスキルガチャって……いや、まずは使ってみよう。
名前からすると攻撃系のスキルではなさそうだし、とにかく使えば分かるはずだ!
「≪ハズレスキルガチャ≫使用!」
早速得たばかりのハズレスキルガチャを使用すると、日本でよく目にしたあのガチャガチャが現れる。
硬貨を入れる場所も無さそうなので、そのまま回すと……水色の珠が落ちてきて、俺の手に触れると消滅した。
――『水切り』スキルを入手。平らではない石でも、水切りの成功率が上がります――
謎の声がそう言うと、目の前のガチャガチャが消えてなくなる。
いや待ってくれ。水切りの成功率が上がる……って、あの川とかに向かって石を投げる遊びの事なのか!?
「……何だよっ! マジでハズレスキルじゃないかっ!」
脱力し、思わずその場に座り込んでしまう。
こんなスキルは要らないし、あった所で無能と言われるのは間違いないだろう。
「待て待て。もしかしたら、ハズレ以外のスキルもあるのかも。≪ハズレスキルガチャ≫使用!」
何とか前向きに頑張ろうと思い、再びスキルを発動させたのだが……
――ガチャを回すポイントが足りません。尚、毎朝五時に一ポイント加算されます――
謎の声が聞こえただけで、ガチャガチャは出現しなかった。
このクソスキルめ! と、思わず暴れたくなったけど……一旦落ち着こう。
さっき、毎朝ポイントが加算されると言っていたから、毎日ガチャを回せるんだ。
初回は運が悪かっただけかもしれない。
明日起きたらすぐに回してみよう。
そう自分に言い聞かせ、何事も無かったかのように自室へ戻り、早々に就寝する。
そして翌朝……
――『攻撃力UP(弱):木の枝』スキルを入手。木の枝を装備している時、攻撃力が微増します――
誰が木の枝で戦うんだよっ! せめて剣とか槍とかにしてくれよっ! しかも微増って……ハズレスキルにも程があるだろっ!
起床と共にハズレスキルガチャを回し、絶望する。
だ、だけど、二連続でハズレなんて、ソシャゲでは普通にある事だ。
「そ、そうだ! 十日分貯めて十連ガチャにしたら、確定でレアスキルが出るかも! だいたいのソシャゲは、そういう仕様だもんな」
という訳で、十日間はハズレガチャスキルの事を忘れて、剣や魔法の勉強に集中する。
日本で勉強に慣れているからか、特に魔法は筋が良いと褒められ、基礎魔法は普通に使えるようになった。
「お坊ちゃま。剣の先生も以前とは別人のようだと褒めておりました。クレアもお坊ちゃまが頑張っている姿を見れて、嬉しいです。あ、あと、クレアも今のお坊ちゃまの方が、その……か、格好良いと思います」
剣の稽古の後、クレアにべた褒めされながら、着替えを受け取る。
まぁ以前のアデルは酷かったからな。
追放されないように頑張り続け……十日が過ぎた。
今度こそ……今度こそ、ハズレ以外のスキルが出るはずだっ!
――『穴掘り』スキルを入手。穴を掘る速度が上がります――
――『見切り:ヒレ』スキルを入手。ヒレによる攻撃を避ける確率が上がります――
――『移動力UP(弱):徒歩』スキルを入手。歩く速度が僅かに速くなります――
――『腹時計』スキルを入手。空腹具合でおおよその時間が分かります――
――『ブリーズ』スキルを入手。そよ風を起こせます――
――『防御力UP(弱):鞭』スキルを入手。鞭による攻撃に対して防御力が微増します――
――『クリエイト・サンド』スキルを入手。少量の砂を生み出せます――
――『器用さUP(弱):扇』スキルを入手。扇を装備している時、器用さが微増します――
――『熟睡時回復UP』スキルを入手。熟睡時の回復量が増加します――
――『識別:芋』スキルを入手。芋の種類の判定が出来ます――
――『耳かき』スキルを入手。耳かきが上手に出来ます――
マジか……十日分貯めて十連ガチャにしたけど、全部ハズレスキルだった。
一応、十連ガチャの特典なのか、一つ多い十一個のハズレスキルが……って嬉しくないっ!
とはいえ、スキルを授かるアイテムは超レアで、他に入手出来る場所は、何処も簡単に行ける様な所ではない。
結局、剣や魔法の基本的な勉強はしつつも、レアスキルが出る可能性に賭けて、十日毎に十連ガチャを回し続ける事にした。
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