エピローグ
第37話
今日は朝から寝覚めがいい。それもそのはず、今日はミズナとの結婚式が行われるからだ。この異世界に来て色々あり、幼い頃にミズナと約束した事をやっと叶えることができる。俺とミズナの結婚式の日取りはゲノゼクト竜王国とフェンネル王国中に広まっており、王都はお祭り騒ぎになっている。多くの屋台が出ており、商人の数も多い。警備も王都の騎士団が総動員で行っており、厳重なものになっている。
俺はフェンネル王国の王城の一室で着替えをしていた。残念なことにミズナは別の部屋で準備を行なっていた。
「アマツ様。いよいよだね」
「あぁ。昨日は楽しみすぎて眠れなかったよ」
俺の髪型を整えてくれているのはセトで、トトとウルドは部屋の外で部屋の見張りをしてくれている。昨日は楽しみすぎて熟睡することができなかったので、少しだけ眠い。
「アマツ様。王様と王妃様が来られました」
部屋の外から聞こえるトトの声。俺はすぐに通すように指示をした。
扉が開かれる。王様も王妃様もいつも以上に上品な格好をしており、相当気合が入っていることが伺える。
「似合っているな」
「お義父さんこそ」
俺の黒色のタキシード姿を見て、王様は褒めてくれた。
「本当に立派です」
「ありがとう。お義母さん」
王妃様も同様に褒めてくれた。
「アマツ。ミズナに会いに行くか?」
「もちろん」
支度はあらかた終わっていたので、俺は王様と王妃様に連れられてミズナの元に向かった。もちろんセトたちも一緒についてくる。結婚式の準備期間中にミズナはサイズ合わせやデザインの打ち合わせに参加していたが、俺は参加していなかったので見るのは初めてだ。俺はワクワクしていた。
「ミズナ。綺麗だ」
「お兄様。ありがとう」
「ミズナをアマツにやりたくないな」
「そんなこと言わないで」
ミズナと王子の話し声が聞こえてきた。相変わらず王子はミズナのことが好きみたいだ。聞きづてならない声も聞こえてきたが、それに対しては触れないでおこう。
「ミズナ。アマツを連れてきたぞ」
「入っていいよ」
ミズナの許可が出たので、俺は扉を開けて中に入っていく。全身ピンク色のウエディングドレスを着用し、思い出のピンク色の翡翠石を使った首飾りが目立っている。裾は他人に持ってもらわないと歩きにくいと思えるほど長い。そして頭にはめている花飾りが一層可愛さを引き立てている。俺はミズナの美しさに見惚れてしまった。
「あまつくん。どう?」
「綺麗だ……」
思わず俺は声を漏らしてしまった。今も十分に好きだが、改めて惚れ直したかもしれない。それくらい心を奪われてしまった。王様と王妃様は俺のところに来る前にミズナに会っていたらしく、満足気な表情になっていた。
「時間になったな。移動しようか」
俺は王様の言葉に返事をした後にミズナに手を差し出した。ミズナは俺が差し出した手にそっと手を当てる。俺はミズナの手を優しく握り、ゆっくりと歩き出した。ミズナの裾はリーネとラーファが持っている。
「来たか。アマツ。かっこ良いぞ」
「ありがとう。お父さん」
「ミズナも綺麗だ」
「ありがとう。お義父様」
王城の扉の手前で竜王であるお父さんが待っていた。俺とミズナは笑顔でお父さんに返事を返した。
「全員揃ったな。では行くぞ」
王様が声を出すと王城の使用人たちが扉を開けた。扉の手前にはニ台の馬車が用意されていた。普段とは違い屋根がなく誰が乗っているのか分かる作りになっている。先頭の馬車には俺とミズナが乗り込んだ。後方の馬車には王様と王妃様、お父さんが乗り込んだ。セトたちは二台の馬車の横に着き、警護をしてくれている。
馬車がゆっくりと動き出す。城門から外に出ると王都の領民がディズニーランドのパレードのときみたいにずらりと並んでいた。道の真ん中は馬車が通るのでしっかりと空けてある。領民の歓声が聞こえてくるので、俺たちは手を振って対応した。
「すごい人だね」
「そうだな。これだけの人に見られていると緊張するな」
「うん」
人に見られることには慣れたはずなのに心臓の鼓動が早い。俺たちは今、結婚式が行われる教会に向かっている。
長い道を走り教会に到着した。厳重な警備体制を敷いているおかげか、何事もなく到着することができた。俺はミズナに手を差し伸べて、馬車から降ろした。王様たちが先に教会内へと入っていく。
王様たちの姿が見えなくなってしばらくして、俺とミズナは教会内に入場した。教会内にはフェンネル王国の貴族たちが座っていた。盛大な拍手と共に俺とミズナは神父の元とに近づいていく。そして俺とミズナは向かい合った。
「結婚指輪の交換と誓いのキスを」
神父の形式的なあいさつに対応した後に俺はミズナの口にキスをする。そしてお互いの指につけていた指輪を交換した。協会に入場したときと同じように盛大な拍手が教会中を包み込んでいた。
結婚式を終えて数日が経っていた。俺はいつも通りに仕事をしている。ゲノゼクト竜王国を開国したてなので、やることが多いのだ。今はお父さんが長年貯めていた宝物をお金に換金して国を運営しているが、いつかはそれが尽きることは分かりきっている。何かお金を稼ぐ方法を考えなければならないのだ。
「あ・ま・つ・く〜ん」
「ミズナ」
「お茶にしましょう」
「分かった。すぐに行く」
俺は考える事をやめて、休憩を取ることにした。仕事よりも奥さんになったミズナを優先したい。人が増えたことで、ミズナにも余裕ができたらしい。
「どうぞ」
「ありがとう」
俺が座るのと同時にお茶が俺の目の前に置かれた。ミズナは俺の隣に座り、くつろいでいる。
「昔の約束を果たせたね」
「そうだな。離れた分、これからたくさんの事をしていこうな」
「うん」
ミズナは俺の肩に頭を乗せて、腕を組んできた。俺とミズナの薬指には輝く指輪がつけられていた。これが心を満たされていると言う状況なのだろう。
「隠れていないで出てきなよ」
俺は近くにいる四人の魔力を感知した。認識阻害魔法と隠蔽魔法を使っていると思うが、微量な魔力を感知することができた。
「バレましたか〜」
セトが観念して部屋の中に入ってくる。
「さすがです」
トトも次いで入ってきた。障子の隙間から俺たちの様子をうかがっていたのだろう。そしてそんなに時間を空けずにセトとトト以外の二人も部屋の中に入ってきた。
「二人の時間を邪魔してはいけないと思ったので、隠れていました」
「それでも隠れるのはどうかと思うけどね」
「すいません」
リーネが真剣な表情で誤ってきたので、逆に困ってしまう。
「みんな座って、お茶を出すから」
「私がやりましょうか?」
「大丈夫。ラーファも座ってて」
ラーファがミズナと手伝いをしようと近寄るが、ミズナは笑顔で座るように促した。ラーファはおとなしく座った。ミズナが全員の前にお茶を出した。部屋は暖かい雰囲気に包まれる。これからも大変なこともあるだろうが、このメンバーなら色々なことを乗り越えられると思った。ミズナの夫として、それからゲノゼクト竜王国の王子としてこれからも生きぬこう。
ディスティニースレッド 時雨トキ @rikkuri777
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