第22話
地下室を出て、俺たちは再び中庭に戻ってきた。中庭はすっかりと集合場所になっている。一通り城を見終わったので、ここで解散をすることにする。
「今日はありがとうございます」
俺は全員の顔を見渡すとお礼を言った。
「こちらこそありがとうございます。今後は息子であるドルドが引き継ぎますのでよろしくお願いいたします」
「殿下。よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします」
ドルドさんが頭を下げてきたので、俺も言葉にして返した。そのままドルドさんは仕事場に戻っていった。ここから王都フェンネルまで距離があるので、お父さんが転移陣を使って、ナティスさんを王都フェンネルに送り届けてくれるみたいだ。魔法で厳重に施錠されている転移室に入る許可をもらっている人と同伴ならば王都フェンネルに繋がっている転移陣を使用することができるようになっている。お父さんとナティスさんは転移室に向かって歩いて行った。
「私もこれで失礼します」
「はいっ。ありがとうございます。また服の依頼を出しますね」
「ありがとうございます。今後もごひいきにしていただけると嬉しいです」
それだけ言い残すとゲドラさんは中庭を後にした。
「あまつくん。まだ時間あるけど何をするの?」
「俺たちの部屋をデザインしに行こうか」
「分かった」
俺とミズナはナティスさんが城案内の時に教えてもらった部屋になる場所に向かう。俺とミズナの部屋は二つの部屋に分かれている。分かれているが、障子を全開に開くことで一つの部屋になる構造になっている。部屋からは中庭と天守閣見ることができる。他にもお手洗いの場所も近くに設置されているため、過ごしやすい環境になっている。
「結構広いね」
「広いよね」
俺とミズナは部屋を一通り見渡すとそんな感想を漏らしてしまった。二つの部屋を一つの部屋にすると大体十六畳くらいある。一つ前の世界での自分の部屋の二倍くらいの広さだ。床には畳が使われており、気分が高揚している。
「寝室は一緒にするよね?」
「うん」
聞いてみたのは良いのだが、ほんのり顔を赤らめてしまう。何度も体を交えたとはいえ、気恥ずかしいことには変わりない。ミズナも俺と同様の表情をしている。
お互いの同意が取れたので、俺は寝具を作って設置した。和風建築のイメージはベッドではなく敷き布団という感じなので、敷き布団を作り出す。他にも部屋に合うような家具をミズナと相談しながら作り出し、部屋をデザインしていった。
「なかなか、いい感じじゃないか?」
「そうだね。部屋をデザインするのは楽しいね」
俺はこだわってデザインした部屋を見渡しながら言う。ミズナも満足そうな表情をしている。
体を動かしたことで、俺とミズナは汗をかいてしまっていた。
部屋のデザインも一段落ついたので、部屋に設置した机の前に横並びに座り休憩している。椅子はなく座布団の上に座っている感じだ。ミズナはアイテムボックスの中からティーセットを取り出してお茶を入れてくれた。
「ミズナってティーセット持ち歩いてるの?」
「ううん。こっちに持ってこようと思って」
「なるほどね」
俺とミズナは机に置かれたお茶を飲んだ。
「もうすぐ王城に戻らないとね」
「お風呂に入って戻ろうか」
この城の内郭部分に温泉が湧き出している場所がたまたまあり、そこを利用して温泉を作った。俺とミズナは机から立ち上がり、本丸御殿内にある温泉へと向かう。
ここの温泉は、更衣室は男女に分かれているものの、混浴になっている。お風呂の面積も広く、室内に作ってある。
「やっぱり温泉はいい」
「そうだよね。リラックスできるよね」
隣同士で温泉に浸かりながら、俺とミズナは目を瞑った。溜まっていた疲労が洗い流されていく。ミズナはタオルを巻いており、女性の大事な部分は隠れている。俺も腰あたりにタオルを巻いているので、妙な気は起こさないと思う。
「ミズナ。実はこの温泉、仕掛けがあるんだよね」
「え、え?そうなの?見てみたい」
「いいよ。ここを押すと……」
俺はボタンを押した。音を立てながら、壁が開いていく。攻め込まれる可能性がある異世界では露天風呂を作ることはリスクが大きいので、半露天風呂という形で落ち着いた。
浴槽の中に仕込まれているボタンを押すと壁全体ではなく一部分を開閉することが可能になっている。外側からは開くことはできない。壁を開くと外の景色を見ることができる。壁を開けている時、中が見えないように木が壁になっており、森の中の露天風呂みたいな雰囲気を味わうことができる。
「みんなが気づくまで、内緒にしとく?」
「内緒にしましょ」
俺とミズナはお互いに笑いあう。この仕掛けは二人だけの秘密にすることにした。この仕掛けに気付く人が現れることを楽しみにしている。
ゆっくりと温泉に浸かった後に俺とミズナは和風の服ではなく、洋風の服に着替える。これからフェンネル王国の夜会に参加するからだ。着替え終わると転移陣を使ってフェンネル王国の王城へと戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます