第21話
天守閣のてっぺんに到着する。てっぺんからの眺めは最高だった。城全体を一望することができる。外郭には本丸を囲むように二の丸。さらに外側に三の丸が存在しており、三の丸を囲むように城壁が作られている。三の丸にある城壁に繋がっている大門は東西南北に四つ存在しており、外側には堀が作られている。二の丸と三の丸の間にも堀があり、二つの堀には水が流してある。氷魔法を使って水を凍らせたとしても高低差があり、簡単には侵入できない。本丸と二の丸、三の丸は石垣の上に作られている。三の丸から二の丸に侵入できるのは対角線上に設置された二つの大門で本丸に続く大門と被らないように配置されている。仮に二の丸に侵入できたとしても本丸に入るまでの時間稼ぎをすることができる構造になっている。空地もまだたくさんあるが、今後いろいろ建築していく予定だ。
「皆さん。想像を超える出来栄えです。ありがとうございます」
俺は城を作ってくれた人たちに感謝する。ミズナも俺に続いた。想像以上の再現度で度肝を抜かれた。これで俺の夢が一つかなった。
「こんなに眺めがよいところに住めるのか~。我は大満足だぞ」
お父さんもご機嫌なようだ。
「天守閣内はお父さんの好きなようにデザインしてもらっていいよ」
天守閣の内装はまだ出来上がっていない。俺とミズナが住む部屋だってそうだ。せっかく立派な場所に住むので自分の部屋は自分好みにデザインしてほしいという俺の考えがあったからだ。
「本当か⁉」
「うん。今後の建築依頼はナティスさんの息子、ドルドさんが請け負ってくれるから気軽に相談するといいよ。もちろん自分で作ってもいいけどね」
「分かった」
俺はドルドさんをお父さんの前に突き出した。
「ドルドと申します。よろしくお願いいたします」
「期待しているぞ」
「精一杯、精進させていただきます」
ドルドさんはお父さんを目の前にして、緊張している様子だった。怒らせると国一つ破壊できるだけの力を持っているから当然だと思う。お父さんはドルドさんの肩をたたいて、笑顔だった。その後もナティスさんにいろいろな場所を案内してもらった。
一通り場内を回り終わって、再び中庭に戻ってくる。内郭と外郭を含めると城の敷地はかなり広かったため、移動の時は魔法を利用した。全員はさすがに無理だったので、人数を六人くらいに絞って回った。その他の人は各々の作業に戻ってもらっている。中庭に戻ってきたのは俺とミズナ、お父さん。他にナティスさんとドルドさん、ゲドラさんだ。
「殿下。最後にお見せしたいものがございます」
「もしかして、地下室?」
「さようでございます」
俺が地下室と言っているのはお父さんが寝床として使っていた洞窟のこと。城を建てるために一度埋めたが、地下室として改装してもらっていたのだ。魔力結晶が作られるくらい魔力濃度が高いので、城の燃料として利用できるのではないかと考えた。
「見に行きましょう」
「分かりました。すぐにご案内いたします」
俺たちはナティスさんの後についていく。地下室までつながっている入り口は天守閣一回の二回まで続く階段の後ろ側だ。城の建築中に特別な仕掛けを作った。
「お父さん。ここに手を当ててみて」
「何かあるのか?」
「見てのお楽しみ」
お父さんは俺の言ったとおりに壁に手を当てた。「ゴゴゴ」という音とともに壁が横にスライドする。そして入り口が出現した。この仕掛けも誰もが作動させることができるわけではない。この仕掛けを動かせるのは俺とミズナ、お父さんだけだ。三人の魔力を感知したときにだけ作動するようになっている。
「これはすごいな」
お父さんは驚いているようだ。ミズナも同様の反応をしている。俺はこういう仕掛けを作ることも大好きだ。これは忍屋敷の隠し扉からひらめいた仕掛けだ。俺たちが中に入ったことを確認すると扉は自動でしまった。
「すごく暗いね」
ミズナは一歩先も見えない真っ黒な空間の中でつぶやいた。
「確かに。これは危ないかもね」
俺はそういうと地下室によく使われるようなランプを創作魔法で創作して壁に設置していく。ランプは地下室に漂う魔力の影響を受けて光りだした。ランプは雰囲気を守るために明るすぎず、暗すぎずといった具合で光っている。俺たちは地下室へと続く階段を下りていく。
広がる薄暗い広い空間、真ん中には洞窟がある。お父さんの寝床だった時と見た目は変えずに地下に作った広い空間に設置しただけになっている。魔力結晶が魔力を吸収して光っており、ランプは必要なさそうだ。
「お父さんが竜の姿でも眠れるように作ったんだ」
「アマツよ。感謝する」
お父さんは泣きそうになっていた。サプライズで作ってみたのだが、効果てきめんだったようだ。お父さんのために作ったのはもちろん噓ではない。だがこの場所にはもう一つの役目を担ってもらおうと思っている。
「お父さん。城の防御結界をこの場所にある魔力を利用して構築しようと思っているんだけど、どう思う?」
「いい考えだと思うぞ。お礼に我がこの城の防御結界を管理しよう」
「お父さん。ありがとう」
「任せるがよいぞ。ついでにこの場所の魔力を地上でも使えるようにしておくぞ」
「そんなことできるの?」
「我にかかれば簡単だ」
「それなら、よろしく」
そうやってそんなことを可能にするのかは分からないが、お父さんが自信満々に胸を張っているので嘘はついていないと思う。俺はこの場所の管理をお父さんに一任することにした。お父さんがいない時も管理できる人は必要だと思うので、俺とミズナも時間をかけて習うことにした。
お父さんはさっそく竜の姿になって洞窟の中へと入っていった。数秒が経ち城全体に防御結界が張られた。魔力濃度が高い場所を利用したこともあって、今まで使った防御結界の中で一番強固なものだと感じ取ることができた。王都フェンネルの王城の数倍の強度はあると思う。これならば上級魔法にも数回は耐えられそうだ。
「これは……異常だな……」
俺は唖然としてっしまった。この場所が壊されない限り、どんな攻撃も通さないだろう。世界最強の防御力を誇るといわれても驚くことはないと思えた。桁外れ性能の城になってしまった。逆に言ってしまえばこれくらいしないとここでは生きていけないということになる。
「これで地上でもここの魔力を使えるようになったぞ」
「あ、ありがとう。この防御結界ってまだ拡張できたりするの?」
「全然可能だ。城下町も守りたいというのだろう?」
「何で分かったの?」
「お前という人間を親としてやっと理解できるようになったからな」
「ははは。言葉も出ないや」
俺は笑顔になった。血のつながりのないお父さんにここまで理解されて、俺は本当の家族になれたみたいでとても嬉しくなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます