和風のお城
第20話
陽の光がカーテンの隙間から差し込んできた。俺は眩しくて目を開けた。隣ではミズナが気持ちよさそうに寝ている。ここは王城の一室だ。
ミズナと再開して、王城に挨拶に来てからすでに三ヶ月が経過している。城の建設や王妃様に礼儀作法を習っていたので、多忙だったと自負している。そのせいもあってか、時の流れを早く感じた。
ミズナとはずっと同じ部屋で共に生活していたので、もちろん何もない訳はない。ミズナは俺に初めてを捧げてくれて、生娘では無くなっている。俺もミズナで童貞を卒業している。昨日も十分に楽しんだので、少しだけ寝不足だ。布団で隠れているが、ミズナは一糸纏わぬ姿のはずだ。俺も下着だけを履いている状態だった。さすがに全裸の状態では大事なところが冷えてぐっすりと眠ることはできない。
「あまつくん。おはよう」
「ミズナ、起きたのか。おはよう」
目をこすりながら状態を起こすミズナ。朝からミズナの裸体が見えてしまいそうになっている。朝からは流石にまずいので、俺はできる限り見ないようにして服を着用した。ミズナも俺が服を着ている間に着替えをしている。この三ヶ月間は朝に侍女が来て、準備をしてくれることはなかった。これはミズナの希望によるものだ。侍女たちも俺とミズナの邪魔をしないように気を遣ってくれている。
今日は俺たちがこれから住む城の完成予定日だ。朝一から完成した城の出来具合を確認しにいく。さらに夜にはフェンネル王国の貴族たちが集まる結婚披露宴が開催される予定だ。
扉のたたかれる音が聞こえてくる。俺が返事を返すと部屋の扉が開き、ラーファが中に入ってきた。部屋に来るタイミングも中をのぞいているのではないかと思えるほど完璧だ。
「食事をお持ちしました」
今日は食堂でご飯を食べている時間はないので、事前に部屋に持ってくるように昨日のうちに頼んでいた。部屋の中にあるテーブルの上に食事が並べられる。俺とミズナは席に着くと食べ始めた。俺たちが食べている間はラーファが部屋の中で待機しており、飲み物がなくなった際にはすぐに対応できるようにしてくれている。
食事を終えて、ラーファが食事を片付けてくれた。俺たちはゲオルク大森林に建てている城を見にいくために王城の転移門が設置してある部屋に移動した。俺たちの住む城が完成したことで、誰でも使用できないようにこの部屋は普段は魔法によって施錠されている。カードをスリットするときに使う機械みたいな見た目の魔道具に手をかざすことで開けることができるようにした。体内に持っている魔力は個人個人で微妙に違うため、顔認証みたいに認証された人以外は開けれない仕組みになっている。創作魔法というのはやっぱり便利だ。
部屋を開くことができるのは王家の人間と俺とお父さん、その他には俺の従者のセトとトトとミズナの侍女のリーネとラーファだけは行き来することがあると思うので、特別に開くことができるようになっている。この部屋にはもう一つの仕掛けが施されており、その魔法は【認識阻害魔法】。ここに入る為の魔道具を視認する為にはネックレスを着用していなければならない。ネックレスには【認識阻害無効魔法】が付与されてるからだ。俺とミズナは元々身につけていたネックレスに付与してある。その他の人にはプレゼントという形でネックレスを渡してある。
ネックレスは普段から身につけることのある装飾品なので、魔法が付与させていると気づくものは少ないと思う。これまで厳重にする理由はこの転移陣を使えば、城内に容易に潜入できてしまうからだ。信頼できるもの以外には知られてはいけない。
「楽しみだね」
「そうだね」
俺とミズナはお互いの顔を見ながら笑い合う。そして部屋に設置してある転移門の上に乗る。転移を発動させるには特に詠唱をする必要はなく、踏むだけでいい。転移陣が白色に光るのと同時に俺たちの姿はフェンネル王国から消えた。
新しくできた城の一室。内部も外部と同じで魔道具に手をかざさないと入れないようになっている。仮に転移陣で城の中に侵入できたとしても扉を開けることができない。これを知っているのも出入りを許可されたものだけなので、セキュリティは万全だと思う。中に閉じ込められて三十分以上経過した人はゲオルグ大森林のS級魔獣がウロウロしている領域に強制転移して魔獣の餌食になってしまう仕掛けも用意してある。
俺は魔道具に手をかざす。手をかざしたことで扉のノックが解除されて、開閉が可能になった。俺は扉をゆっくりと開ける。広々とした空間が目の前に広がっており、今は全開状態になっているが、障子のついている扉が敷居になっている。ドラゴンの領域でもあるので、ドラゴンが描かれた扉も複数箇所存在している。部屋だと思われる場所には畳が敷いてあり、部屋と廊下がはっきりと分かる。
「すごい……」
「広いね」
俺は胸を高鳴らせていた。ミズナも何度も何度も見返していた。住みたいと思っていた理想の空間が再現されている。目の先には大きな中庭が広がっており、剣の鍛錬とかに使えそうだ。中庭から一際目立つ巨大な五層の天守閣。太陽に照らされて、てっぺんの部分だけお父さんと同じ白銀色に輝いている。中庭を中心に天守閣と本丸と呼ばれている場所は廊下で繋がっている。連立式と呼ばれる城の構造だ。本丸の周りは巨大な城壁で囲まれており、大門が一つだけ存在している。俺とミズナは本丸にある本丸御殿に住む予定だ。
「待っておりました」
「お疲れ様です。ナティスさん」
俺は中庭の中央部分に立っていたナティスさんに挨拶をした。中央部分には多くの人が集まっており、中にはお父さんの姿もある。お父さんは初めて見た建物に感心しているようだ。お父さんは三か月間、城には近づかなかったらしい。ミズナの魔法指導も王城でしていたくらいだ。それくらい和風の城の完成を楽しみにしていたみたいだ。俺とミズナはその集団に近づいていく。
「アマツよ。我はどこに住むんだ?」
「お父さんは目の前にある天守閣に住んで」
「天守閣?」
「うん。そこの建物だよ」
俺は本丸にあるでかい建物を指さして、お父さんに言った。
「あそこに住んでよいのか⁉」
「もともとそのつもりだったよ」
竜王であるお父さんは城の象徴として天守閣に住むというのは相応しいといえる。
「殿下。服が完成しました。お召しになさいますか?」
「もちろんです」
ゲドラさんは俺が着る袴とミズナが着る浴衣を手に持っている。俺とミズナは「ありがとう」とお礼を言って袴と浴衣を受け取った。ナティスさんに着替えのできる部屋に案内されて、それぞれ貰った服を着用した。
「似合うかな?」
「……かわいい」
「うれしい」
俺はミズナの姿に見惚れてしまい反応が遅くなってしまった。
「俺の格好はどう?」
「かっこいいよ」
「あ、ありがとう」
周りの人たちは俺とミズナのやり取りを温かい目で見守っている。
「我もアマツが着ている服、欲しいぞ」
「承知しました竜王様。今度作ってきます」
「うむ。頼んだぞ」
お父さんにお願い事をされて、ゲドラさんは頭を下げた。
「殿下。天守閣に登られますか?」
「はいっ。登ってみたいです」
ナティスさんの質問に俺はうなずいた。お父さんの居住地になる天守閣は高い建物なので、城の全体を見渡せる。内郭部分の構造はなんとなくわかったので、外郭部分を見てみたいと思った。
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